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大学・研究所にある論文を検索できる 「身体像の歪みの原因となる神経基盤の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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身体像の歪みの原因となる神経基盤の解明

濱本 裕美 東北大学

2022.03.25

概要

身体像の歪みとは,自分自身の身体への認識(サイズ・位置・感情など)に困難が見られる状態をさすが,摂食障害の中核的精神病理であり,さらに健常者においても,特に若年女性で広く観察されている特徴である.この身体像の歪みには,自身の身体サイズを過剰に見積もるという現象に関わる身体サイズ知覚の歪みと,自己身体像不満に関わる身体評価の歪みの2種類が存在すると考えられている.先行行動研究では様々な手法によりそれぞれの身体像の歪みの程度を数値化することで,注意・情動処理が視覚処理に与える影響がそれぞれの歪みに関わっているという仮説を提示してきた.しかし,先行fMRI(functional magnetic resonance imaging;磁気共鳴機能画像法)研究では,歪みの程度に関わる脳指標ではなく,摂食障害患者と健常者の脳指標の違いに注目してきたため,この仮説を支持する神経科学的な根拠は存在しなかった.

そこで本研究ではこの仮説に基づき,それぞれの歪みの程度の背景にある神経メカニズムの解明を目指した.提示刺激として各被験者の写真からシルエットを作成し,その横幅のみを変更した.この提示刺激を用いた課題をMRIスキャナーの中で実施し,被験者が自身の実際の体の大きさを推定している時(身体像推定課題)と理想的な体の大きさを推定している時(理想像推定課題)の脳活動を計測した.それぞれの課題において歪みの程度に関わる脳指標を領域レベル(どの脳領域の活動がそれぞれの歪みの程度と相関するか)・ネットワークレベル(身体像処理をおこなう領域である両側extra striate body area並びに右紡錘状回との機能的結合性を調べた時,それぞれの歪みの程度に応じて結合性が変化する領域はどこか)で検討した.どちらのレベルにおいても,身体サイズ知覚の歪みは,自発的な注意に関わる背側注意ネットワークあるいは注意の誘発に関わる顕著性ネットワークに属する脳領域と関連し,身体評価の歪みは情動処理領域と関連すると予想した.

結果,領域レベルの解析において身体サイズ知覚の歪みの程度は身体像推定課題中の右前島皮質・左前帯状回と有意に正相関しており,さらにネットワークレベルの解析では,左extra striate body areaと左前島皮質との機能的結合性が,身体サイズ知覚の歪みの程度と正相関していた.一方で,身体評価の歪みの程度は理想像推定課題において右側頭頭頂接合部と有意に正相関しており,ネットワークレベルの解析では,左extra striate body areaと右楔前部との機能的結合性が,身体評価の歪みと有意に負相関していた.

前島皮質・前帯状回は共に顕著性ネットワークに所属していることから,身体サイズ知覚の歪みに関する領域レベル・ネットワークレベルでの解析はいずれも,身体サイズ知覚の歪みが身体への顕著性検知に関わることを示している.この知見は,身体サイズ知覚の歪みが高い人は注意バイアスを持つという先行研究と整合性がある.また,身体評価の歪みに関しては,右側頭頭頂接合部・右楔前部が他者の考えを推定している際に賦活する領域であり,特に右楔前部は他者が自分の体型をどう思っているか考えている際に活動が見られた脳部位であることから,身体評価の歪みが高い被験者ほど,理想的な体型について考えている最中に他者からどう見えるかという視点を意識している可能性を示した.これは,家族や友達・メディアなどによる体型への評価が,身体評価の歪みと深く関連すると考えられている身体像不満を引き起こすという先行研究と整合性がある.

以上より本研究では,身体サイズ知覚の歪みが注意処理に関わるという従来の仮説を支持し,また身体評価の歪みが社会認知処理に関わるという関係性が示唆され,身体像の歪み発生のメカニズム解明に新たな知見を加えたものと期待できる.

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