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大学・研究所にある論文を検索できる 「炎症性早産モデルマウスを用いた母体血清中の早産予測マーカーの探索」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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炎症性早産モデルマウスを用いた母体血清中の早産予測マーカーの探索

富田 芙弥 東北大学

2021.03.25

概要

世界における全出生数の約 11%が早産であると言われており、早産は周産期医療が発展した現在においても頻度が高い疾患であると言わざるを得ない。早産およびそれに関連する合併症は5歳以下の小児の最大死因であり、また生存し得た場合の後遺症も大きな問題となっている。近年の研究より、腟から子宮に至る上行性の細菌感染と、それに起因する子宮内炎症が早産の主な原因だと考えられている。しかし、この上行性感染に対する診断や治療は全く確立されていないと言わざるを得ない。母体の血清中で上行性感染や早産を予測できるマーカーを探索する研究は今まで数多くなされているが、臨床において有用なマーカーは現在存在しない。ヒト対象の研究では頻回の採血が困難であるのでバイオマーカーの継時的変化が把握できないという問題点があり、一方動物モデルはヒト早産の臨床的病態と異なる機構で早産を誘導しているという問題点がある。よって、早産予測に有用なバイオマーカーが見過ごされている可能性がある。我々は上行性感染による早産を引き起こすモデルマウスを自ら作成し、早産をより早期にかつ比較的非侵襲的に予測できる母体血清マーカーを探索することを目的として研究を行った。

まず、上行性感染から早産を引き起こすモデルマウスの作成を行った。強力な炎症性サイトカイン誘導物質である Lipopolysaccharide (LPS)を腟内に投与し、早産に至るか検討した。妊娠 14.5 日に 100 μl の溶解液で希釈した 500 μg の LPS を腟内に投与することで、47%が早産に至った。早産に至った母獣マウス(以下早産群とする)では胎盤と子宮体部の脱落膜に局所的な好中球とマクロファージの浸潤を認め、ヒトの早産で観察される絨毛膜羊膜炎によく似た組織像を呈していた。また LPS を投与したが早産に至らなかった母獣マウス(以下非早産群とする)では、胎盤と脱落膜における好中球とマクロファージの数は、早産群より有意に少なかった。LPS 投与後 3 時間後の母獣血清中の炎症性サイトカイン IL-1β、 IL-6、TNF-αを測定したところ、 TNF-αの上昇が認められず既存の早産モデルマウスとは異なる結果となった。また IL-6 の上昇は既存の早産モデルマウスより低く抑えられていた。

次に、上記モデルマウスの母獣血清中におけるサイトカインを継時的、網羅的に解析した。早産群の母獣血 清中では、LPS 投与後 2 時間後から炎症性サイトカインであるG-CSF、IL-12 (p40)と、ケモカインである MCP-1、MIP-1α、 MIP-1β、 RANTES、 KC が非早産群およびコントロール群と比較して有意に上昇していた。

ヒトの早産の臨床的病態と組織学的に類似し、腟から子宮内へ上行性感染を引き起こして早産するモデルマウスの作成に成功した。この早産モデルは既存の炎症性早産モデルより侵襲性が低く、臨床的病態に極めて近いモデルであると考えられ、今後の炎症性早産の機序の解明および治療法の開発などにおいて非常に有用である。このモデルマウスを用いた解析により、母体血清中の 2 種類の炎症性サイトカイン(IL-12(p40)、G-CSF)と 5 種類のケモカイン(MCP-1、 MIP-1α、MIP-1β、RANTES、 KC)が早産予測マーカーとして有用である可能性が示唆された。今後これらのサイトカインをターゲットとした診断法・治療法の開発が期待される。

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