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大学・研究所にある論文を検索できる 「ADSSL1 myopathy is the most common nemaline myopathy in Japan with variable clinical features」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ADSSL1 myopathy is the most common nemaline myopathy in Japan with variable clinical features

斎藤 良彦 山梨大学 DOI:info:doi/10.34429/00004837

2020.09.28

概要

(研究の目的)
ADSSL1 ミオパチーは、ADSSL1 遺伝子異常を原因とする常染色体劣性遺伝形式の遺伝性筋疾患である。ADSSL1 遺伝子は骨格筋特異的なアデニロコハク酸合成酵素をコードし、ATP de novo 合成経路の中でイノシン一リン酸からアデニロコハク酸への転換を触媒している。同疾患は 2016 年以降これまでに、韓国より 9 症例 7 家系で 4 報の報告がなされた。彼らの初報では、幼少期に極端に足が遅く疲れ易い事が共通し、遠位筋優位の筋力低下を伴う遠位型ミオパチーとされた。しかし続報では、そのうち 2症例で全般性の筋力低下をきたし、臨床的に多様性があることが示唆された。さらに、筋病理所見では縁取り空胞を伴う筋線維が本疾患に代表的な所見と報告されたが、その出現頻度は稀であった。そのため臨床医や筋病理医が本疾患を疑う有力な所見が無いまま、韓国以外から新規症例報告がなく経過していた。そこで本研究では、日本人 ADSSL1 ミオパチー患者を同定し、その臨床病理学的特徴を検討した。

(方法)
1978 年 1 月から2019 年 3 月までに当施設の神経・筋疾患研究資源レポジトリーに保存されている 20000検体から ADSSL1 遺伝子にバリアントを有する症例を検索した。遺伝性筋疾患が疑われるも未診断例において、全エクソーム解析をされた 2131 例の他に、臨床的に本疾患が疑われた 30 例において ADSSL1遺伝子の全エクソン領域を Sanger 法で解析した。ADSSL1 遺伝子にバリアントを有する症例において、臨床的特徴、骨格筋画像による特徴、筋病理学的特徴を後方視的に解析した。また、Western blotting にて検出された各バリアントのADSSL1 蛋白の発現について評価した。

(結果)
今回、日本人ADSSL1ミオパチー患者63症例59家系を同定した。検出された7個のバリアントのうち、c.781G>Aとc.919delAはそれぞれ全アレルのうち53.2%と40.5%で認め、韓国からの報告でも認めた創始者変異に矛盾しなかった。一方で、残りの5個は新規のバリアントで、 Western blottingではADSSL1タンパクの発現は低下していた。臨床的には、全例において幼少期に極端に足が遅く疲れ易いが日常生活は問題なく過ごせる経過が共通した。しかし、成人期(平均24.6±11.4歳)になると下肢筋力低下が顕在化し、33/63例で近位、遠位筋ともに障害されるが、進行は緩徐で老年期まで歩行は保たれた。29例の骨格筋画像では、10代前半の2例で腓腹筋のみ障害され、18歳以降の27例で下腿に加え大腿の筋障害も伴った。上肢は40例全例で握力が低下( 平均 7.4±5.0kg) し、上肢近位筋力低下は 3 例のみで認めた。血清CK 値は 20-2006IU/L、平均303.0±304.0IU/Lで逆相関を示した(p<0.05)。また、26/34例で拘束性換気障害、24/63例で咀嚼嚥下障害、12/48例で肥大型心筋症を呈し、10代以降から老年期まで同程度の比率で推移した。頸胸部画像では、16例で横隔膜が著明に萎縮、21例で舌や咬筋が脂肪置換し、大半の例で咀嚼嚥下障害の自覚がない段階でも変化を認めた。同疾患63症例の臨床症状を検証することで、臨床的にはある程度共通した経過をたどることを見出した。筋病理では、全例においてネマリン小体を有する筋線維と脂肪滴が軽度蓄積した筋繊維が散見され、病理学的にはネマリンミオパチーとして分類された。当施設では日本における筋生検検体の 7-8割が集まっていると言われているが、これまでネマリンミオパチーで遺伝学的に既知の原因遺伝子が特定されている200例の中で、本遺伝子は最も頻度が高く、ADSSL1遺伝子が日本人で最も頻度の高いネマリンミオパチーの原因遺伝子であることを見出した。

(考察)
c.781G>Aとc.919delAは公共データベースでも東アジアで頻度が高く、各バリアントを有するアレルで認めたSNPsが共通していることより創始者変異として矛盾しないと考える。それ以外の新規のバリアントは、いずれも基質結合部の近傍に位置するアミノ酸をコードしており、バリアントにより構造維持は困難で、病的意義があるものと考えた。筋病理ではネマリンミオパチーに分類されるが、これまでの既知のネマリンミオパチー原因遺伝子は、Z 線周囲の構成要素に関連していたが、本遺伝子ではその因果関係は不明であり、今後の実験動物等での検討を要する。

(結論)
我々は、日本人ADSSL1ミオパチー患者63症例を同定し、緩徐進行性の下肢筋障害と、10代以降で拘束性換気障害、咀嚼嚥下障害、肥大型心筋症を認めた。また、筋病理では、全例においてネマリン小体を有する筋線維が散見され、ADSSL1遺伝子が日本人で最も頻度の高いネマリンミオパチーの原因遺伝子であることを見出した。