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大学・研究所にある論文を検索できる 「全エクソーム解析による成人発症遺伝性ミオパチーの新規遺伝子変異同定」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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全エクソーム解析による成人発症遺伝性ミオパチーの新規遺伝子変異同定

井上 彩 東北大学

2020.09.25

概要

【背景】縁取り空胞性ミオパチー (rimmed vacuolar myopathies, RVM) は、筋病理学的に、縁取り空胞と呼ばれる自己貪食空胞の集塊から成る封入体を特徴とする遺伝性ミオパチーの総称である。Heat shock protein family B member 8 (HSPB8) は RVM の原因遺伝子の 1 つである。そのコードする HSPB8 は、シャペロン介在性選択的オートファジー機構により、障害された筋原線維や異常凝集したタンパクを除くことで骨格筋の品質管理を担う低分子熱ショックタンパクである。HSPB8 遺伝子異常によるミオパチーの既報全 5 報のうち 4 報が最終エクソンのフレームシフト変異であり、C 末端領域が伸長すると予測されている。

【目的】遺伝性ミオパチー疑いの家系について、全エクソーム解析を用いた網羅的遺伝子解析により原因遺伝子変異を明らかにする。

【方法】本研究の対象は、当分野を受診した遺伝性ミオパチー疑いの家系である。性差なく 4 世代 12 名に渡って成人期から発症する左右対称性の下肢帯筋を中心とした脱力がある。そのうち 3 名で呼吸筋麻痺を認めた。私は、患者 4 名について全エクソームシークエンス(whole exome sequencing, WES)による網羅的遺伝子探索を おこなった。WES 結果の絞り込みから得られた全 15 個の候補バリアントについて、発端者、WES を行わな かった家系内罹患者 1 名、家系内非罹患者 1 名、陰性対照者として家系外の健常成人 1 名の計 4 名に対してサ ンガーシークエンスをおこなった。既知の疾患との関連を考慮し最も考えられる候補バリアントであるHSPB8 c.525_529del (p.T176Wfs*38) については、さらに家系内の別の患者 4 人でサンガーシークエンスを行った。

【結果】WES 解析で 15 個の候補バリアントを得た。サンガーシークエンスで Co-segregation を確認したところ、10 個においてはco-segregation が見られず否定した。Co-segregation が確認できた 3 個、及び、塩基配列決定不能で否定できなかった 2 個の、計 5 個を最終候補バリアントとした。遺伝子疾患データベースに収載されている既知の疾患との関連から、新規バリアントである HSPB8 c.525_529del (p.T176Wfs*38) を本家系の原因と考えた。発端者のサンプルを用いたサブクローニング後のサンガーシークエンスの結果から、ヘテロ接合性に同変異を持つことを確認した。

【考察・結論】HSPB8 遺伝子異常を伴う RVM の既報では、人工呼吸器管理を要する呼吸機能不全の報告はなかったが、本家系では 3 名が発症 12-26 年後に拘束性換気障害を指摘され人工呼吸器管理となった。長期経過では呼吸機能低下が出現する可能性、また、顕在化した時点で既に重篤である可能性があり、HSPB8 遺伝子異常を伴うRVM では呼吸機能の定期的なフォローアップが必要であると考える。また、本家系では複数の患者で傍脊柱筋の著明な筋委縮を、少なくとも発症 13 年から認めており、特徴的な臨床所見であった。 Co-segregation の確認では 5 個が最終候補バリアントとなったが、既知の疾患との関連も考慮し、最終エクソンのフレームシフト変異であることと、成人発症で下肢・体幹優位の慢性進行性の臨床経過が HSPB8 遺伝子異常を伴う RVM の既報 4 報と合致することから、HSPB8 c.525_529del (p.T176Wfs*38) を病因変異として同定し、筋病理所見と合わせて本家系が同遺伝子異常を伴う RVM であると診断した。本研究で同定した変異は 5塩基欠失による最終エクソンのフレームシフト変異で、タンパクレベルでは C 末端領域の伸長が予測される。伸長部分に出現すると予測されるイソロイシン、X アミノ酸、イソロイシンもしくはバリンから成る IXI/V モチーフは sHSP の高次オリゴマー形成に重要なドメインであるが、HSPB8 には元来存在しておらず HSPB8 は低次のダイマーで存在する。変異体では IXI/V モチーフの出現に伴う HSPB8 の異常凝集及びオートファジー機能の障害が病態にある機能獲得型変異であると推察した。

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