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大学・研究所にある論文を検索できる 「ジュベール症候群関連疾患の臨床遺伝学的解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ジュベール症候群関連疾患の臨床遺伝学的解析

北見 欣一 山梨大学

2022.03.18

概要

(研究の目的)
ジュベール症候群は、1969年にM. Joubertによって初めて報告された疾患で、精神運動発達の遅れ、呼吸異常、眼球運動の異常、小脳虫部の欠損、遺伝性を有する。ジュベール症候群の症状に類似した有馬症候群、セニール・ローケン症候群、口顔指症候群などは、大臼歯サイン(molar tooth sign;MTS)という小脳虫部低形成(あるいは無形成)と脳幹部低形成による特徴的な画像所見や精神運動発達遅滞、腎形成異常、網膜変性などの多臓器に渡る共通の症状を有しており、ジュベール症候群関連疾患(Joubert syndrome-related disorders;JSRD)として総称されるようになった。現在、35を超えるJSRDの原因遺伝子が同定されており、そのいずれもが一次繊毛に関連するため、JSRDは繊毛病の一疾患群と捉えられている。繊毛は非運動性の一次繊毛(primary cilium)と運動性繊毛(motile cilium)の二種類があり、ほぼ全ての細胞に存在する。最近、一次繊毛は発生や器官形成、維持に必要なシグナル因子の情報伝達を担い、細胞周期の調整や細胞移動など多様な機能の中枢であることが知られている。繊毛に関与する分子は600以上と考えられている。毎年数例ずつ新しい原因遺伝子が報告され、JSRD患者の中には病因性不明の遺伝子変異(variant of uncertain significance;VUS)が少なくない。

(方法)
2014年から2020年までの7年間に、国立精神・神経医療研究センターでJSRD患者およびその両親の遺伝子診断を行い、研究参加の同意を得た44家系51名の患者とその家族を研究対象者とした。患者および家族の末梢血からゲノム遺伝子を回収し、HiSeq2000(Illunima, San Diego, CA)で全ゲノム解析(Whole genome an alysis:WES)を行った。病因性が疑われる遺伝子変異は、insilico解析(SIFT、PolyPhen-2、Mutation Taster、PROVEAN)を用いて探索し、候補遺伝子につてSanger sequenceで確認した。

既報告にない新規性の高い原因遺伝子(VUS)について、不死化ヒト網膜色素上皮(hTERT-RPE1)細胞を用いて評価した。また、これらの遺伝子のsiRNAによるノックダウンを行い、一次繊毛発現細胞の割合と一次繊毛の長さを評価した。加えて、アフリカツメガエル胚へVUS遺伝子のMorpholino Oligo(MO)によるノックダウンを行い、表現型の評価を行った。

(結果)
JSRDの診断時における主要症状は、精神運動発達障害が91.7%、筋緊張低下が85.1%で運動失調を含めると91.5%、異常呼吸運動が55.1%、眼球運動障害は90.9%を認めていた。

遺伝学的解析の結果、既知の原因遺伝子は35名から7遺伝子が同定され、その内訳はC5ORF42(CPLANE1)が20%(10/51)、CEP290が18%(9/51)、TMEM67が16%(8/51)で,AHI1が10%(5/51),TCTN2が4%(2/51),TCTN1とKIAA0556がそれぞれ2%(1/51)であった。VUSの15名に12個の原因遺伝子候補が見つかった。

このうち、PLEKHB1(Pleckstrin Homology Domain Containing B1)遺伝子とRP1L1(retinitispigmentosa-1-like-1)遺伝子、SPTBN5(Spectrin Beta, Non-Erythrocytic5)遺伝子について解析した。PLEKHB1遺伝子とRP1L1遺伝子の遺伝子産物はRPE-1細胞の一次繊毛近傍に共局在し、一次繊毛との関連性が示唆された。また、PLEKHB1とRP1L1、SPTBN5の遺伝子のノックダウンでは、アフリカツメガエルに腎形成異常を示唆するfluid-filledcystsと前脳の形成異常が表現された。

(考察)
これまでの研究から、JSRD患者は本邦に約100例が推定されている。JSRDの大規模な臨床報告はこれまでにほとんどない。今回の研究では、国内の約半数の解析であり、本邦のJSRDの研究の重要な情報を提供することができた。JSRDの既知原因遺伝子の異常は70.6%に見つかった。これまでの報告では、約40~60%とされていたことから、臨床診断と遺伝子異常の相関が比較的高く、診断基準の精度が高いことがわかった。また、C5ORF42遺伝子異常が19.6%と最も多く、欧米の報告に比べてC5ORF42遺伝子異常の割合が高かった。

今回一次繊毛との関連と表現型解析から、PLEKHB1とRP1L1、SPTBN5の病因性を明らかにした。VUSの病因性はin silicoによる推定だけでなく、in vitro及びin vivo解析が有効である。アフリカツメガエルを用いた解析は、比較的短時間で表現型が評価できることから有効である。

これらの遺伝子は、特にPLEKHB1とSPTBN5は疾患の原因遺伝子としての新規性だけでなく、一次繊毛の新しい展開をもたらすかもしれない。

(結語)
本邦のJSRD患者44家系51名の臨床遺伝学的解析を行なった。いずれの患者も診断基準とされる主要症状を高頻度に認めた。36名は既知原因遺伝子に変異を同定した。15名に12個のVUSが見つかった。このうち、RP1L1遺伝子とPLEKHB1遺伝子、SPTBN5遺伝子は病因性を明らかにした。

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