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書き出し

エチオピアにおける土地改革及び給付・移転プログラムが農業生産行動に及ぼす影響

高田, 純 筑波大学

2023.09.04

概要

エチオピアにおける土地改革及び給付・移転プログラムが
農業生産行動に及ぼす影響

2023 年1月

高田 純

エチオピアにおける土地改革及び給付・移転プログラムが
農業生産行動に及ぼす影響

筑波大学大学院
理工情報生命学術院
生命地球科学研究群
農学学位プログラム
博士(農学)学位論文

高田 純

論文要約



属:理工情報生命学術院生命地球科学研究群農学学位プログラム



名:高田 純

論文題目:エチオピアにおける土地改革及び給付・移転プログラムが農業生産行動に及ぼす影響

東アフリカ内陸部に位置するエチオピア連邦民主共和国は、干ばつや政治不安などに起因する度重な
る飢饉によって甚大な被害を被ってきた歴史を有しており、フードセキュリティに脆弱なことから特徴
的な開発政策が数多く実施されてきた。本論文は、同国において実施されてきた開発政策に着目し、中で
も、土地を大規模保有農家から収用し小規模保有農家へと再分配した土地再分配政策、および近年同国の
開発政策の主流となっている貧困層を対象に実施された現金や食料の給付・移転プログラムが同国にお
ける零細農家の農業生産に及ぼす影響について研究を行ったものである。
本論文は、研究における背景、課題、目的を提示した第1章、同国における開発政策の歴史的変遷や先
行研究に基づく評価を整理し、データ記述に基づいて各政策間の経路依存的な関係性について議論を行
った第2章、同国アムハラ州における土地再分配政策が農家の土地保有面積に及ぼした影響を推計した第
3章、当該土地再分配政策に起因する土地保有面積の増減が農家の要素需要に及ぼす影響について検討し
た第4章、給付・移転プログラムの受益が農家の生産行動に及ぼす影響を評価した第5章、結論として本研
究を通じて示唆された新たな知見と残された今後の課題を提示した第6章によって構成される。
第1章では、本研究の背景として同国の零細農家が抱える課題と一般的な開発政策の概要について整理
を行った。ここでは、開発途上国では急激な人口増加に伴う農村地域の土地不足や、天水農業に依存した
零細農家の脆弱性といった課題が存在することを示した一方で、土地不足への対応として実施される土
地再分配政策の意義や、その結果生じる土地保有権の保障(テニュアセキュリティ)を担保するための土
地登記制度の重要性、さらには零細農家の貧困削減と生産基盤強化のための給付・移転プログラムの役割
について既存研究に基づく議論を行った。また本研究の課題として上述の開発政策に着目する意義を述
べ、途上国における開発政策の実態を明らかにし、その有益性や課題を解明し、より効率的な政策実施の
ための判断材料を提供するという本研究の目的を明示した。
第2章では、公式資料や既存研究に基づきエチオピアにおける土地改革と土地制度について時系列的に
整理した。さらにこの章では、土地改革の効果に関する開発経済学上の議論の整理と土地改革実施後に同
国のいくつかの地域で実施された土地登記制度が農業生産や農業投資行動に対する影響を分析した既存
研究サーベイを通じて、テニュアセキュリティの重要性が同国の土地制度改革の経験として明らかにさ
れていることを確認した。また、近年同国では現金・食料給付プログラムが積極的に展開されているが、
この概要について紹介したのち、土地改革から続くこれらの開発政策が、土地、権利、現金、食料といっ
た有形無形を問わず何らかの財を零細農家に給付もしくは移転するという共通点を有していることを確
認した。このことを念頭に国際食料政策研究所が中心となり実施した家計調査、世界銀行とエチオピア中

央統計局が共同で実施した家計調査により収集されたマイクロデータに基づきながら各政策が経路依存
的な関係を有する可能性を論じた。この分析によって、土地再分配政策の実施が農家の主観的な土地収用
のリスクを高めたこと、土地再分配政策によって獲得された土地が相続によって獲得された土地よりも
土地登記の対象となりやすいこと、土地登記プログラムへの参加がテニュアセキュリティの低下に動機
付けされていたことを示した一方で、給付・移転プログラムと過去の土地関連政策の受益の関係性は地域
間で一様ではなく、地方分権化に伴う経験した政策スキームの差異が影響した可能性も提示した。これら
の開発政策の経路依存的な視点に基づく検討から、政策成果としてこれらの政策のデザインが意図した
効果を発揮しえなかった可能性を明らかにし、その背景に各種制約要因による開発政策の不完全性が存
在している可能性を示した。この結果に基づき、本章の帰結として土地再分配政策、土地登記制度、現
金・食料の給付・移転プログラムの間の経路依存性を踏まえた個別政策の評価の必要性を論じ、本研究の
位置づけを示した。
第3章は、同国中央統計局によって収集された繰り返しクロスセクションデータを用いて、同国の中で
も人口稠密化が著しいアムハラ州において実施された土地再分配政策が農家の土地保有面積に及ぼした
影響を差の差の分析手法によって推計することで、エチオピアにおける土地改革の実態解明を試みた。こ
の章で行った既存研究の整理によって、当該政策に焦点を当てた研究は非常に限定的であった一方、当該
政策がこれまで土地にアクセスできなかった土地なし農家に対して土地の再分配を実施することにより
土地保有の不平等を是正する平等主義的動機に基づく土地再分配政策としての特徴を有していたことを
明らかにした。限られた土地資源を土地なし農家に再分配する政策は、結果として政策実施地域における
農家の平均土地保有面積を減少させることを意味するが、この観点から分析の結果は、土地再分配政策が
実施地域の世帯当たり土地保有面積を大幅に減少させ、土地不足が深刻化していた同州における土地保
有の平等化に寄与したことを示していた。一方で、この分析によってその政策実施直後において土地保有
面積が政策実施前の水準まで逆行したことも明らかにした。本章の結論として、土地再分配政策実施後に
農家間での土地の再集積が行われた可能性があり政策の持続的効果には疑問が残ること、土地を新たに
獲得した農家がその耕作面積を維持するための政策効果の持続性を担保するために土地の権利を保障す
る土地登記制度の必要性を示した。なお、差の差分析においては、平行トレンド仮定の検証も実施するな
ど分析の頑健性も確認している。
第4章では、土地再分配政策後にいくつかの州で導入された土地登記制度の生産性向上に果たす役割に
ついての研究蓄積が見られる一方で、この登記制度以前の農家の生産行動についての分析が極めて限ら
れていることを念頭に、国際食料政策研究所が中心となり実施・公表している家計単位のマイクロパネル
データを用い、差の差分析の応用モデルによってアムハラ州における土地再分配政策の受益上の立場の
違いが農家の要素需要に及ぼす影響について検討を試みた。この分析によって、土地を収用された農家に
おいて肥料投入量及び肥料集約度の増加がみられる一方、土地を獲得した農家では農外労働投入量及び
農外労働選択の減少があったといった、土地収用と土地獲得の非対称の効果を明らかにした。同時に、既
存研究の整理に基づき、同国における土地の所有権が国家に帰属することに伴うテニュアセキュリティ

上の課題や、家畜市場や労働市場が十分に機能していない同国の要素市場の状況を明示し、土地を収用さ
れた農家と土地を獲得した農家の間における土地再分配政策の非対称の効果が、テニュアセキュリティ
の不完備や市場の不完全性に起因する可能性を示した。
第5章においては、同国中央統計局と世界銀行が調査実施し公表している家計単位のクロスセクション
によるマイクロ調査を用いて、給付・移転プログラムの受益が農家の生産行動に及ぼす影響を拡張逆確率
重み付けに基づく二重に頑健な手法によって評価した。この結果から著者は、給付・移転プログラムの平
均処置効果として、受益家計は非受益家計に比べて作付け品目数や家族労働投入、肥料使用が有意に低い
一方で、混作の実施や作物販売、全労働投入については両者の間で有意な差が確認できなかったことを明
らかにした。この結果の理解として、給付・移転プログラムの受益によって農業生産行動に差異が生じた
背景には、当該プログラムが有するリスク低減の効果や、食料価格の不確実性による食料保蔵動機とそれ
に伴う作物選択の変更、労働を伴う給付・移転プログラムへの参加に伴う家計内の労働配分の変化といっ
た要因がはたらいている可能性を論じた。
第6章は、結論として本研究を通じて示唆された新たな知見を総括し、開発政策のデザインについての
インプリケーションを次のように示した。まず本論文は、土地再分配政策や給付・移転プログラムといっ
た同国における開発政策が農家の農業生産行動に一定の影響を及ぼしており、零細農家の発展に対して
その役割を果たしてきたことを明らかにした。同時に本論文は、土地再分配政策による土地の平等化がテ
ニュアセキュリティの不完備によってその平等性を維持できなかったこと、土地再分配政策による農家
の土地賦存量の変化に伴う要素需要の調整が市場の不完全性によって阻害されたこと、給付・移転プログ
ラムによるリスク低減効果が必ずしも農家の農業生産投資を誘発するとは限らないことを、同国におい
て実施されてきた開発政策の課題として提示した。本論文の結論として、こうした開発政策の課題が、政
策デザインにおける設計上の不備、受益者のターゲティングの失敗、さらには政策実施の外部に阻害要因
が存在することに起因している可能性を示した上で、テニュアセキュリティの維持を目的とした土地再
分配と土地登記の並列実施、要素需要の適切な調節を目的とした土地以外の農業生産要素の分配及び要
素市場の開発、食料価格の不確実性に対応し得る給付・移転プログラムの制度設計の立案といった、各開
発政策の不完全性を補完するために求められる取り組みについての政策的インプリケーションを示した。
しかしながら残された研究課題も存在する。二次的データへの依存からの脱却、家計単位のみならず圃場
単位のデータを用いた推計の導入による分析の多角化、農業生産の側面に固執しない多様な視点からの
アプローチの実施の3点を、残された今後の課題として提示した。 ...

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