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大学・研究所にある論文を検索できる 「Deficiency of WFS1 leads to the impairment of AVP secretion under dehydration in male mice」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Deficiency of WFS1 leads to the impairment of AVP secretion under dehydration in male mice

栗本, 隼樹 名古屋大学

2021.08.25

概要

【緒言】
小胞体は、細胞内での翻訳後修飾や膜タンパク質や分泌タンパク質の適切な折り畳みに関与する重要な細胞内小器官である。タンパク質合成の要求がタンパク質の折り畳み能力を超える状態が続くと小胞体ストレスが生じ、過度の小胞体ストレスは細胞機能障害や細胞死を引き起こして、様々な内分泌疾患や神経変性疾患の発症に関与していることが知られている。小胞体ストレス応答は、小胞体機能を改善し、細胞内の恒常性を維持する応答である。小胞体ストレス応答の 1 つとして activating transcription factor 6α(ATF6α) とその下流のシグナル伝達が活性化されると、シャペロンである immunoglobulin heavy chain binding protein(BiP)が増加してタンパク質の折り畳み能力を高めることが知られている。

バソプレシン(AVP)は抗利尿ホルモンであり、主に視床下部の視索上核(SON)と室傍核(PVN)で合成される。AVP ニューロンにおいては基底状態でも BiP mRNA が高発現していることが示されており、水バランス維持のために AVP 合成・分泌の多大な需要に応答し、常時小胞体ストレスに曝されていることを示唆している。

Wolfram 症候群は糖尿病、視神経萎縮、中枢性尿崩症、感音性難聴を臨床的特徴とする常染色体劣性遺伝性疾患である。主に WFS1 遺伝子変異により生じ、この遺伝子は小胞体の膜タンパク WFS1 をコードしている。Wfs1 ノックアウト(KO)マウスを用いた耐糖能異常に関する解析により、小胞体ストレスが Wolfram 症候群におけるβ細胞の機能不全を引き起こすことが報告されているが、中枢性尿崩症については未だ検討されていない。

【目的】
Wfs1 KO マウスを用いて Wolfram 症候群における中枢性尿崩症の病態形成機序を明らかにする。

【方法】
蛍光免疫染色法を用いて 2 か月齢の野生型(WT)マウスの SON および PVN の AVPニューロンとオキシトシンニューロンにおける WFS1 の発現を観察した。2 か月齢の Wfs1 KO マウスとその同胞 WT マウスを自由飲水群と間歇的脱水負荷群に割り付けた。自由飲水群においては自由飲水下で 7 か月齢まで尿量、飲水量を観察した。間歇的脱水負荷群においては脱水負荷後 4 日目と 5 日目に尿検体採取を行い、間歇的脱水負荷を 7 か月齢まで 20 回繰り返した。また、1 回目、12 回目、20 回目の脱水負荷時には脱水開始 1 日目の尿も採取し比較した。尿の解析においては尿中 AVP 濃度、尿浸透圧を測定した。間歇的脱水負荷を 7 か月齢まで反復した後に視床下部の SON および PVNにおける AVP と BiP の mRNA 発現量を in situ hybridization(ISH)法により評価した。

【結果】
蛍光免疫染色法により、WFS1 は WT マウスの SON と PVN に発現しており、AVPと共局在していることが明らかになった(Fig. 1)。また、オキシトシンとも共局在していた(Fig. 1)。定量解析の結果、95.9%(658/686)の AVP ニューロンと 89.1%(303/340)のオキシトシンニューロンにおいて WFS1 の発現を認めた。

自由飲水下では WT マウスと Wfs1 KO マウスにおける尿量、飲水量に差を認めなかった(Fig. 2A, B)。間歇的脱水負荷群においても脱水負荷後 4 日目と 5 日目に測定した場合、20 週間の尿量や水分摂取量には遺伝子型間で有意な差は認められなかった(Fig. 2C, D)。しかし、間歇的脱水負荷後の 7 か月齢の絶水中において、WT マウスに比して Wfs1 KO マウスの尿量は有意に多く(Fig. 2E)、尿中 AVP 濃度と尿浸透圧は低値であった(Fig. 2F, G)。また間歇的脱水負荷群において 7 か月齢での随時血糖値(Wfs1 KO 147.00 ± 7.86 mg/dL vs. WT 157.63 ± 6.20 mg/dL)には遺伝子型間で有意な差を認めなかった。

SON および PVN における AVP の mRNA 発現量は、間歇的脱水負荷を繰り返しても WT マウスと Wfs1 KO マウスの間で有意な差を認めなかった(Fig. 3A-C)。SON および PVN における BiP mRNA 発現量は、20 回目の脱水負荷後には、Wfs1 KO マウスで WTマウスよりも有意に増加した(Fig. 3D-F)。

【考察】
今回の研究において、WT マウスの SON と PVN に存在する AVP ニューロンにおいて WFS1 が発現していることを明らかにした。そして、Wfs1 KO マウスを用いた実験により、Wfs1 KO マウスが脱水負荷を繰り返すことにより野生型マウスに比して絶水中の尿量が増加し、尿中 AVP 濃度、尿浸透圧の低下を示した。本研究が Wolfram 症候群モデル動物における AVP 分泌障害を示した初めての研究である。

これまでの報告でも WFS1 が SON と PVN に存在することは示されていたが、今回の研究では蛍光免疫染色法で WFS1 と AVP の共局在を観察することにより WFS1 が AVP ニューロンに存在することを確認した。

Wolfram 症候群は糖尿病を呈するが、過去の報告では本モデルマウスは生後 36 週齢までは野生型マウスと比べて血漿インスリン値に有意な差を認めなかったことが報告されており、また今回の研究においても生後 28 週齢での随時血糖に有意な差を認めなかったことから、糖尿病による浸透圧利尿の影響を受けることなく水バランスを評価できたと考える。

Wfs1 をノックアウトしたモデル動物では、膵臓、網膜、脳幹で BiP の発現が増加することが報告されている。本研究では、Wfs1KO マウスの AVP ニューロンにおいて、脱水負荷後に WT マウスと比較して BiP mRNA の発現が増加していることを示した。 BiP は小胞体ストレスのマーカーとして用いられていることから、BiP 発現の上昇は AVP ニューロンの小胞体ストレスを反映している可能性がある。また、膵β細胞における研究では、WFS1 がユビキチン-プロテアソーム経路により小胞体ストレスセンサーの 1 つである ATF6αをダウンレギュレーションしており、WFS1 をノックダウンすると ATF6αと BiP の発現が増加することが示されている。また我々の研究グループは以前、脱水下の AVP ニューロンにおける BiP のアップレギュレーションが ATF6αノックアウトマウスで消失し、尿量も増加したことを報告している。Wfs1 KO マウスの水バランスの表現型が比較的軽度であったことは、BiP の増加が AVP ニューロンで保護的な役割を果たしていることが影響した可能性が考えられた。また、Wfs1 KO マウスの 20 回脱水中の尿中 AVP 濃度は WT マウスよりも低値であったが、SON と PVNの AVP mRNA には遺伝子型間で差を認めなかった。これらのデータは、Wfs1 のノックアウトが AVP ニューロンに翻訳後レベルで影響を与えている可能性を示唆している。

【結語】
Wfs1 KO マウスは脱水時に AVP 分泌が減少し、それに伴って AVP ニューロンにおいて BiP の発現が増加していることを明らかにした。

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