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日中両国漢字に相違意義が生じた原因に関する研究

操 智 広島大学

2022.03.04

概要

日中両国漢字に相違意義が生じた原因に関する研究
(要約)

広島大学大学院総合科学研究科
博士課程後期文明科学専攻(言語・文字学)
学生番号: D161432
氏名: 操




論文の構成
序論は三章(第 1-3 章)から構成される。第 1 章は「研究課題の提起」・「研
究目的」・「研究手順」・「研究対象」・「論文の構成」の五つの部分からなってい
る。次の第 2 章は「先行研究」である。第 3 章は「調査方法」・「研究理論」・
「調査資料」といった三つの部分からなっている。
本論は第 4 章に置き,五つの節に分けて「安」(“安”)・「悔」(“悔”)・「催」
(“催”)・「真」(“真”)
・「本」(“本”)の五組の日中漢字それぞれの相違意義が
生じた原因を考察・分析する。
結論は第 5 章で述べる。第 4 章の原因分析をまとめるものと,本研究の限界
点と今後の課題についても触れる。
本論文の構成:
1.1 研究課題の提起
第1章

研究背景

1.2 研究目的と研究手順
1.3 研究対象
1.4 論文の構成
2.1 先行研究の提示

序論(第 1-3 章)

第 2 章 先行研究
2.2 深く究める必要がある点
第 3 章 調査方法や研究理論及び調査資料の提示

4.1 日中漢字「安」/“安”の相違意義が生じた原因に関する研究
4.2 日中漢字「悔」/“悔”の相違意義が生じた原因に関する研究
本論(第 4 章)

4.3 日中漢字「催」/“催”の相違意義が生じた原因に関する研究
4.4 日中漢字「真」/“真”の相違意義が生じた原因に関する研究
4.5 日中漢字「本」/“本”の相違意義が生じた原因に関する研究

結論 (第 5 章)

5.1 本研究の結論
5.2 本研究の限界点と今後の課題



研究目的と研究手順
本論文の「研究目的」は,日中両国の言語において同一の漢字それぞれの意義
の史的変遷から,双方の相違意義が生じた原因を究明することである。特に両言
語の同一の漢字それぞれ意義の史的変遷の中には,異なる方向性に導かれるこ
とがあるかどうかを解明したい。
本研究は,全て日中漢字を調査することができなく,
「安」
(“安”)

「悔」
(“悔”)

「催」
(“催”)

「真」
(“真”)

「本」
(“本”)の五組の日中漢字を取り上げて研究対
象とする。この五組の漢字を選んだ理由は次の3つ理由である。
①先行研究から見れば,この五組の日中漢字の間に相違意義が生じた原因は
深く究めることが必要となる。
②この五組の日中漢字は,中国の『通用規範漢字表』1と日本の『改定常用漢
字表』2の二表の中に共通して挙げられているものである(合計 1432 組の日中漢字
がある)
。この五組の日中漢字は,今日の日中両国の言語において全て常用の漢

字である。
③この五組の日中漢字は,前述した 1432 組の日中漢字の一部の代表格と見
なされる。詳しく言えば,この五組の日中漢字それぞれは,1432 組の日中漢字
(日中両国の言語において意義を間違えやすい日中漢字組に限る)の中の五類(A―E)
に属している。
A 物事の属性や性質面: 「辛」「快」「安」など。
B心理・感情面:「悔」「情」など。
C動態・動作面: 「被」「催」「携」「届」「弾」「控」など。
D物事の状態や程度面: 「凄」「真」など。
E物事の計数・単位面: 「串」「点」「羽」「本」「枚」など。
本研究の「研究手順」は,以下のようになる。
①先ず日中漢字の間に意義の相違が生じた原因に関する先行研究を整理す
る。
②次に前述した五組の日中漢字を例とし,それぞれの意義の史的変遷から相
違意義が生じた原因を考察・分析する。

1

中国政府は,2013 年 6 月 5 日に『通用規範漢字表』
(計 8105 字であり,常用漢字は 3500 字)を公布した。

2

日本政府は,2010 年 11 月 30 日に内閣告示の第 2 号とし,
『改定常用漢字表』
(計 2136 字)を公布した。



③最後にその相違意義が生じた原因をまとめ,また意義の史的変遷の中に
は,異なる方向性に導かれることがあるかどうかを確認する。
各章の概要
第 1 章の概要
本章は「研究課題の提起」

「研究目的」

「研究手順」

「研究対象」

「論文の構
成」の五つの部分からなっている。第 1 節「研究課題の提起」では,次のことを
述べた。日中両国の言語において同一の漢字それぞれの意義の史的変遷及び異
なる意義が生じた原因に関する研究は,これまでに系統的に整理するものは少
ない。
第2章の概要
既有の先行研究において,日中漢字の間に相違意義が生じた原因は,三つに
大別される。第1種類は,日中漢字の発音から追究しているものである。第2
種類は,日中漢字それぞれの意義(基本義)の史的変遷から追究しているもの
である。第3種類は,日中漢字の意義に関する文化的背景から追究しているも
のである。これまでの先行研究は本研究の研究課題に多くの示唆を与えている
一方,深く究める必要がある点が存在する。
詳細は,次の三つの点に分けられる。第 1 は,複数の字例を取り上げて系統
的に日中漢字の相違意義が生じた原因を分析・整理しているものが見られない
ことである。第2は,日中漢字の間に相違意義が生じた原因を追究する時に,
両者の意義の史的変遷を考察して比較研究しているものが少ないことである。
第3は,これまでの日中・中日同形語辞典が日中漢字の間に相違意義が生じた
原因に触れていないことである。
第3章の概要
第 1 節では「調査方法」について説明した。本研究の調査方法は,五つのセ
クションに分ける。
①第一セクションは,日中漢字双方の間に相違意義(顕著な相違意義)を取り
上げる原因を述べる。
②第二セクションは,漢字の本義(漢字本来の意義)を考察・分析する。
③第三セクションは,今日の中国漢字に特有の意義の由来を考察する。


④第四セクションは,今日の日本漢字に特有の意義の由来を考察する。
⑤第五セクションは,考察・分析した後の結果をまとめる。
第 2 節では研究理論について取り上げた。一つは中田祝夫『日本の漢字』・
杉本つとむ『日本文字史の研究』・劉元満『汉字在日本的文化意义研究』・潘鈞
『日本汉字的确立及其历史演变』などの論著で主張しているものである。つま
り「日中両国の漢字を異なるものとして見なされるべき」ということである。
もう一つは,華学誠・張猛の論文「“文獻語言學”學科論綱」で提言している
「文献言語学」という理論である。
第 3 節では本研究で使用する日中両国の漢字・言語資料を取り上げた。中国
の漢字・言語資料は,『一切経音義』・『康煕字典』・『字源』などの 33 点を含
む。日本の漢字・言語資料は,『新撰字鏡』・『和名類聚抄』・『訓点語彙集成』
などの 19 点を含む。
第 4 章の概要
第 1 節では,日中漢字「安」/“安”の相違意義が生じた原因を考察・論述し
た。中国漢字“安”の中に「付け加える」という意義は,「やすらか」➝「置く・
据え付ける」➝「付け加える」という変遷経緯を通じて生じたものである。そ
のうち,「やすらか」は“安”の本義である。また中国漢字“安”の中に「抱いてい
る」という意義は,“安”の元来の意義「置く」や「据え付ける」から派生した
ものである。
一方,日本漢字「安」の中に「値段がやすい」という意義の由来は, 8 世紀
後期以前に「安」が「ヤス」の表音文字・表意文字として用いられていた。ま
たおよそ 10 世紀初期になり,「ヤス」の中に「値段がやすい」という意義が現
れた。そして,近世以降,当時の日本人が「安」の元来の意義を熟慮せず,
「ヤス」を書き記すための常用の漢字(当て字)として用いられていった。
第 2 節では,日中漢字「悔」/“悔”の相違意義が生じた原因を考察・論述し
た。中国漢字“悔”に相違字義である「過ちを悟って改める」が生じた原因は,
“悔”字が出てくる前後の文脈の影響を受けられて生じたものであると推論す
る。


一方,日本漢字「悔」にある相違字義である「人の死を惜しみ悲しむ」は,
中国漢字“悔”の字義の影響を受けられて生じてきた可能性がある。また「悔」
にある相違字義である「勝負に負けたり,物事に失敗したり,相手にはずかし
められたり,外部の状況が期待に反したりして,もうこんな目にあいたくない
と腹立たしく思う気持ちにいう」が生じた原因は,「口惜しい」と「悔しい」
が混用されたことに帰すると言える。
第 3 節では,日中漢字「催」/“催”の相違意義が生じた原因を考察・論述し
た。中国漢字“催”の意義(「迫る」や「促す」など)は今日の日本漢字「催」の中
にも残されている。
一方,日本漢字「催」にある特有の三つの意義(A・B・C)の由来は,中国
漢字“催”の意義と関連しておらず,和語「モユ」・「モヨフ」・「モヨホス」に遡
る,ということが分かった。「モユ」の中には,元々「物事の兆しがある」と
いう意義がある。そして「モユ」から「モヨフ」や「モヨホス」などの和語が
作られた。この二つの和語から次第に①「物事のきざしが見えること/今にも
そのことが起こりそうであるさまを表す」(意義<C>)・②「準備する/用意を整
える」(意義<B>)・③「行事を行うために人々を召集する」(意義<A>)といっ
た三つの意義が現れてきた。9 世紀初期以降,この三つの意義(A・B・C)は
「催」の中に多く用いられるようになった。だが 9 世紀以前,前述した三つの
意義(A・B・C)は,日本漢字「催」の中に見受けられなかった。
第 4 節では,日中漢字「真」/“真”の相違意義が生じた原因を考察・論述し
た。中国漢字“真”の意義「はっきりしている」は,“真”の本義「本当であり,
偽りでない」や「まこと」から派生してきたものである。明清時代以来,この
意義は頻繁に用いられている。
一方,日本漢字「真」の意義「ちょうど」は,元々和語「マ」の中に存在す
る。だが,中世時代頃及びそれ以降当時の日本人は,「間中」の中の「間」が
「真」と誤写されたため,「間中」が次第に「真中」に置き換えられるように
なった。更に当時の日本人が「真」字に対する理解は,元来中国漢字“正”の意
義と同様であると見なされていた。このような複数のファクターによって
「正」の字義の一つである「ちょうど」が日本漢字「真」に取り入られていっ
た。そして今日の中国語における“真” は,なぜ「全くその状態になる」という


意義があまり用いられていないのかという原因の一つは,次の通りである。こ
の意義は“真” の本義(「本当であり,偽りでない」や「まこと」)と大きく異なるた
め,元々“真”の中に存在していたが,改めて別の漢字“纯”字に付け加えられて
いったためである。
第 5 節では,日中漢字「本」/“本”の相違意義が生じた原因を考察・論述し
た。中国漢字“本”が「書物や書籍などを数える助数詞」という意義の由来は,
“本”の元来の意義である「書物や書籍や文章の底本・抄本」や「書物や書籍」
に帰する。これらの意義は,“本”の本義「草木の根」から派生したものであ
る。
一方,日本漢字「本」は,元々「書物や書籍などを数える助数詞」という意
義や用法を持っていなかった。だが元来中国漢字“本”にあった意義である「長
細い物を数える助数詞」は,今日の日本漢字「本」の中に残存している。そし
て日本漢字「本」の中に「書物や書籍」という意義は,遅くとも初唐時代の中
国語における“本” の意義に遡ることができる。それ以降,日本漢字「本」の中
には,この意義が一貫して残されている。だが,およそ明清時代以来,中国漢
字“本”は,殆ど単独で「書物や書籍」という意義を表さなくなった。これは,
今日の日中両国の言語において「本」/“本”が名詞として用いられる場合,異な
る意義(「書物や書籍」という意義の有無)が生じた原因の一つである。
第 5 章の概要
第 5 章では,第 4 章の原因分析のまとめと,日中漢字の間に相違意義が生じ
た以下の四つのパターンを分析した。
①一つ目のパターンは,漢字に当てられる和訓と漢字は,元々異なる意義が
存在することである。
②二つ目のパターンは,日中両国の言語において漢字の意義の発展と使用状
況が異なることである。中国漢字の本義以外の意義は,殆ど本義から派生して
きたものである。一方,日本漢字の意義は,必ずしもこの法則に当てはまるわ
けではない。
③三つ目のパターンは,古代の日本人が中国漢字の意義を誤訳することによ
って,日本漢字において特有の意義が生じたことである。
④四つ目のパターンは,およそ近世以降,日本の庶民階層が漢字の意義を熟


慮せず,同訓に属する他の漢字を借用する傾向があった。また読み方が類似す
る和語の間に混用されるケースもあるため,この和語を書き記すための漢字の
意義にも影響を与える。
それから、本研究も日中両言語の同一漢字の意義の史的変遷は,以下の二つ
の方向性に導かれることを提言したい。
①およそ中世以降,日本漢字の意義は中国漢字の意義から徐々に離脱してい
ったことがある。そして漢字の日本語化が深まるとともに,中国漢字にある意
義はもはやそれほど重要ではなくなる一方,和語の語音を書き記す文字として
用いられる役割はますます重要になった。特に近世以降,和語を書き記すため
に,漢字の意義がしばしば軽く見られており,日本漢字は和語の読み方を記す
記号のみとして用いられるケースもある。つまり近世以降,日本漢字の意義の
中に漢字に当てられる和語の意義は更に重要になった。
②中国漢字の意義の中に,本義は一貫して核心的な位置を占めている。他の
意義は殆ど本義に遡ることができる。また後代に新しく生じた意義は,本義と
の間に関連性が見られる。
本研究は,日中漢字の間における相違意義が生じた原因(一部分の原因)及び
日中漢字の意義の史的変遷が導かれる方向を解明した。日中両国漢字の意義が
生じた原因を研究する上で,一定の示唆を与える。一方,日中漢字の字義の相
違が生じた原因の研究に関して残された課題は多岐にわたるため,これらの課
題を更に分析すれば,本研究の成果がより精密化されると考えられる。
以上

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