リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Differential clinicopathological features of EGPA-associated neuropathy with and without ANCA」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Differential clinicopathological features of EGPA-associated neuropathy with and without ANCA

Nishi, Ryoji 仁紫, 了爾 名古屋大学

2020.06.01

概要

【緒言】
 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)(以前はチャーグ・ストラウス症候群と呼称)は喘息、好酸球増加、ニューロパチーと関連する全身性小型血管炎である。全身の諸臓器を傷害しうるが50-75%の患者でニューロパチーを生じる。国際Chapel Hillコンセンサス会議(2012年)では顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)とともに抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎に分類されるが、EGPA患者のうちMPO-ANCA陽性となるのは30-40%程度で、PR3-ANCA陽性は稀である。近年、EGPAのANCA陽性例と陰性例における臨床像の差異が報告されており、EGPAはANCAの有無で病態が異なる可能性が推察される。しかし、ANCA陽性例と陰性例におけるEGPAの病態メカニズムの違いは明らかになっていない。今回の研究では、EGPAのANCA陽性例と陰性例の臨床病理学的特徴とニューロパチーの病態へのANCAの意義を検討する。

【対象および方法】
 1996年から2018年の間に腓腹神経生検を行い血清MPO-ANCAを測定したニューロパチーを伴うEGPA連続82例を後方視的に解析した。臨床所見として、神経学的所見、他の臓器障害の合併頻度、血液検査、電気生理学的検査の所見をMPO-ANCA陽性例と陰性例の2群間で比較検討した。
 腓腹神経生検標本の病理学的所見については、光学顕微鏡を用い、神経線維障害の程度や様式、炎症性細胞浸潤や血管のフィブリノイド壊死、血管構造の破壊(血管の閉塞や血管壁の層構造の破壊)といった血管炎を示唆する所見を2群間で比較検討した。バーチャルスライドと画像解析ソフトを用い定量的に、神経上膜・神経内鞘の面積、神経上膜の血管の数、神経上膜・神経内鞘における血管内・血管内皮に接着・血管外の好中球・好酸球の数、及び神経上膜における内腔が好酸球によって閉塞した血管の数、を解析し2群間で比較検討した。同手法を用い血管構造の破壊を呈する血管炎所見を呈する血管、及び内腔が好酸球によって閉塞した血管の血管径を測定した。一部の好中球や好酸球の所見は電子顕微鏡を用い観察した。

【結果】
 82例のうち、27例(32.9%)はMPO-ANCA陽性、55例(67.1%)はMPO-ANCA陰性であった。臨床所見はMPO-ANCA陽性例と陰性例の2群間で概ね類似していたが、初発時の上肢症状はMPO-ANCA陽性例で陰性例に比べ有意に多かった(44.4% vs. 14.6%, p<0.01)。血液所見は白血球数や好酸球数に2群間で差はなかったが、血清CRPの値はMPO-ANCA陽性例で陰性例に比べ有意に高かった(6.5±5.6 vs. 4.1±4.6mg/dL, p<0.05)。電気生理学的検査の所見は2群ともに軸索障害の所見であった。MPO-ANCA陽性例では腎障害の合併割合が高く(11.1% vs. 1.8%, N.S.)、MPO-ANCA陰性例では消化管障害の合併割合が高い傾向を認めた(0.0% vs. 9.1%, N.S.)。
 病理学的所見の結果を以下に述べる。
 1. 神経線維の障害の様式は、MPO-ANCA陽性例、陰性例ともに有髄線維密度の低下を認め、ときほぐし線維標本では軸索変性の所見が主体で、2群ともに軸索変性性ニューロパチーの所見を呈していた。また2群ともに血管炎性ニューロパチーを示唆する局所的な有髄線維脱落所見を認めた。しかし、それらの割合に2群間で有意な差はなかった。
 2. 神経上膜における血管構造の破壊を呈する血管炎所見はMPO-ANCA陽性例で陰性例に比べ有意に多かった(55.6% vs. 10.9%, p<0.0001)。血管のフィブリノイド壊死所見もMPO-ANCA陽性例で陰性例に比べ有意に多く認めた(40.7% vs. 5.5%, p<0.001)。
 3. 神経上膜における血管内、血管内皮に接着した好中球は2群ともに認めたが、それらの数は2群間で差はなかった。一方で、好酸球の血管内の数(0.18±0.33 vs. 0.53±0.74/vessel, p<0.01)、血管内皮に接着した数(0.09±0.18 vs. 0.30±0.44/vessel, p<0.01)、はともにMPO-ANCA陰性例で陽性例に比べ有意に多かった。電子顕微鏡での観察では好中球は血管内皮細胞に隙間なく密着しているのに対し、好酸球は好中球ほど血管内皮細胞に隙間なく密着はしておらず好中球と好酸球の血管内皮細胞への接着の仕方に違いが見られた。
 4. 神経上膜において、「内腔が好酸球によって閉塞した血管」を次のように定義し;1)内腔が好酸球によって50%以上占拠された血管、2)内腔が好酸球によって75%以上占拠された血管、それらの数を2群間で比較すると、1)の血管(0.7±1.7% vs. 3.2±5.6%, p<0.01)、2)の血管(0.2±0.7% vs. 1.1±2.1%, p<0.05)、はともにMPO-ANCA陰性例で陽性例に比較して有意に多く認めた。
 5. 神経上膜へ浸潤した好酸球の数はMPO-ANCA陰性例で陽性例に比べ多い傾向であった(18.8±77.0 vs. 28.6±77.3/mm2, N.S.)。電子顕微鏡による観察でそれらの神経上膜へ浸潤した好酸球の一部では脱顆粒の所見を認めた。神経上膜への好中球の浸潤は2群ともにほぼ認めなかった。形質細胞を含め炎症性細胞の神経上膜への浸潤は2群ともに見られた。
 6. 神経内鞘へ浸潤した好酸球の数はMPO-ANCA陰性例で陽性例に比べ有意に多く(0.1±0.5 vs. 4.9±12.3/mm2, p<0.01)、神経内鞘への好酸球浸潤例もMPO-ANCA陰性例で陽性例に比べ多かった(7.4% vs. 41.8%, p<0.001)。神経内鞘への好中球の浸潤は2群ともに認めなかった。
 7. 神経上膜における血管構造の破壊を呈する血管炎所見の血管径は、中央値169μm(58-286μm, n=17)で、内腔が好酸球によって50%以上占拠された血管(中央値13μm, 5-60μm, n=180)の血管径は有意に小径であった(p<0.0001)。内腔が好酸球によって75%以上占拠された血管はさらに小径であった(中央値10μm, 5-30μm, n=60)。

【考察】
 結果からEGPAはMPO-ANCA陽性例と陰性例では臨床病理学的所見が異なることが示唆された。MPO-ANCA陽性群では、血清CRPの値が高く、初発時の上肢症状の割合が高く、フィブリノイド壊死の有無に関わらず血管構造の破壊を伴う血管炎所見が多く見られた。一方で、MPO-ANCA陰性例では、神経上膜における血管内腔、血管内皮に接着した好酸球が多く、内腔が好酸球の充満により閉塞した血管が多く、神経内鞘への好酸球の浸潤を多く認めた。これらのことからEGPAの病態メカニズムは少なくとも2つの異なる機序、つまり、MPO-ANCA陽性例で強い、ANCAの関連した血管炎による虚血性の組織障害の機序と、MPO-ANCA陰性例で強い、好酸球による毒性蛋白放出による組織障害や血管閉塞による虚血性の組織障害による機序によって構成されることが示唆された。

【結語】
 今回、腓腹神経生検を行ったEGPA関連ニューロパチー82例の臨床病理学的所見を、MPO-ANCA陽性例と陰性例の2群で比較検討した。本研究の結果、EGPAの病態メカニズムはMPO-ANCA陽性例で強いANCAの関連した血管炎による虚血性組織障害の機序と、MPO-ANCA陰性例で強い好酸球性の組織障害の機序の少なくとも2つの異なる機序により構成されることが示唆された。
 本研究で示唆されたMPO-ANCA陽性例と陰性例の組織障害の機序の差異を考慮すると、MPO-ANCAの有無や好酸球に関連するマーカーはともにEGPA患者の管理や今後のEGPAに関連する臨床試験のデザインに重要であることが示唆される。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る