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大学・研究所にある論文を検索できる 「5-hydroxytryptamine type-4 (5-HT4) 受容体パーシャルアゴニストの心血管リスク臨床評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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5-hydroxytryptamine type-4 (5-HT4) 受容体パーシャルアゴニストの心血管リスク臨床評価

濱谷, 辰斗 大阪大学

2021.03.24

概要

背景:5-hydroxytryptamine 4 (以下、5-HT4)受容体は、消化管神経や平滑筋に局在し、コリン作動性運動神経上の5-HT4受容体が活性化することでアセチルコリン遊離が促進され、腸管運動が惹起される。また5-HT4受容体アゴニストは、便秘型過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome with constipation, IBS-C)に対する有効性が期待されているが、本作用機序を有するIBS-C治療薬はTegaserodが米国で承認されているのみであり、本邦では治療薬はない。また、Tegaserodについても限定された対象(心血管リスクのない65歳未満の女性)での承認であり、幅広い患者層で使用できる5-HT4受容体アゴニストは未だ上市されていない。また、5-HT4受容体アゴニストであるTegaserod、Cisaprideは、それぞれ虚血性心疾患、QT延長の副作用が原因で過去に販売中止となった背景があり、5-HT4受容体アゴニストと心血管リスクの関連を評価することが極めて重要である。Tegaserodの虚血性心疾患イベント増加の原因は明確ではないが、Tegaserodは5-HT1B及び5-HT1Dの各受容体に強い親和性を示すことが報告されており、これら受容体を介した冠動脈収縮作用が関与していることが示唆されている。Cisaprideは、human ether-a-go-go related gene チャネルに対する50%阻害濃度が低く、5-HT4受容体選択性が低かったことからQT延長を引き起こしたと考えられる。本研究で使用した5-HT4受容体パーシャルアゴニスト(Minesapride)は、非臨床データから心血管リスクが低いと考察されているが、MinesaprideはQT延長を臨床で惹起したCisapride含むいくつかの5-HT4受容体アゴニストと同じBenzamides骨格を有する。Benzamides骨格は、5-HT4受容体アゴニストの基本構造として期待される化学構造であることから、Benzamides骨格を有するアゴニストであっても、5-HT4受容体に対して選択的な高親和性を実現することで、心血管リスクが軽減できるか否かを、非臨床データのみならず、臨床データを以て検討し、明らかにすることは非常に重要であり、今後のIBS-Cの治療薬開発にとって意義があると考え、4つの臨床試験(QT/QTc評価試験、IBS-C患者を対象とした前期第Ⅱ相試験、後期第Ⅱ相試験、健康高齢者及び健康非高齢者を対象とした臨床薬理試験)を実施し、5-HT4受容体パーシャルアゴニストの心血管リスク臨床評価を行った。

方法:QT/QTc評価試験では、健康成人男女(20-39歳)を対象にMinesapride(40 mg/日又は120 mg/日)、プラセボ又は陽性対照であるモキシフロキサシンを空腹時単回経口投与した時のQT/QTc延長作用、薬物動態及び安全性について、ランダム化プラセボ対照4 群4 期クロスオーバー試験で検討した。IBS-C患者を対象とした前期第Ⅱ相試験では、IBS-C患者175名の成人男女(20~64 歳)を対象に1、4、12 及び40 mg/日を1日1回4週間食後反復投与したときの有効性及び安全性を、プラセボを対照にランダム化二重盲検並行群間比較法により検討する計画とした。本治験は2週間のプラセボ投与観察期、4週間の二重盲検治療期、2週間の事後観察期から構成された(各群の例数は、33~36例)。IBS-C患者を対象とした後期第Ⅱ相試験では、IBS-C患者411名の成人男女(20~64歳)を対象にMinesapride 10 mg/日、20 mg/日又は40 mg/日を1日1回12週間食後反復投与したときの有効性、安全性及び薬物動態を、プラセボを対照にランダム化二重盲検並行群間比較法により検討する計画とした。本治験は2週間のプラセボ投与観察期、12週間の二重盲検治療期、4週間の事後観察期から構成された(各群の例数は、101~104例)。健康高齢者及び健康非高齢者を対象とした臨床薬理試験では、健康高齢者及び健康非高齢者(高齢男性、非高齢男性、高齢女性、非高齢女性それぞれ6 名ずつ)を対象に、Minesapride 40 mg/日を空腹時単回経口投与し、薬物動態、及び安全性・忍容性を比較検討する無対照、非盲検、並行群間比較試験を実施した。

結果:健康成人で実施したQT/QTc評価試験では、QT延長作用を評価したが、5-HT4受容体への高い親和性と選択性を有する5-HT4受容体パーシャルアゴニスト(Minesapride)では、QT延長作用は認められなかった。この結果から、QT延長の副作用で販売中止となったCisaprideと同じBenzamides骨格を有していても5-HT4受容体への高い親和性と選択性を実現することでQT延長リスクは回避できることが臨床的に明らかとなった。IBS-C患者を対象とした前期第Ⅱ相試験及び後期第Ⅱ相試験では、実臨床に近い条件で安全性評価した結果、懸念すべき心電図異常所見、心血管リスクは認め られなかった。これらの結果は、健康成人で実施したQT/QTc評価試験結果と一貫した結果であり、健康成人とIBS-C患者での安全性プロファイルに大きな違いは認められないことが明らかとなった。一方、心拍数に関して、IBS-C患者を対象とした前期第Ⅱ相試験(各群33~36例)では、Minesaprideの心拍数への影響は認められなかったが、精度の極めて高い手法を用いたQT/QTc評価試験及びIBS-C患者を対象とした後期第Ⅱ相試験(各群101~104例)で軽微な心拍数増加作用が認められ、5-HT4受容体に高い親和性と選択性を有するパーシャルアゴニストであっても心拍数増加作用が惹起されることが今回明らかとなった。また、健康高齢者及び健康非高齢者を対象とした臨床薬理試験にて、高齢者と非高齢者で薬物動態プロファイル、安全性プロファイルに違いが生じてないかを確認した結果、薬物動態プロファイルに大きな違いはなく、高齢者と非高齢者で投与後の脈拍数の変動に大きな違いは認められなかった。

結論:1) 5-HT4受容体に対して選択的な高親和性を実現したパーシャルアゴニストでは、心拍数増加作用が惹起されるものの、もっとも深刻な心血管リスクであるQT延長作用は認めなかった。心血管リスクは、健康成人とIBS-C患者で違いは認めず、また、薬物動態プロファイル及び脈拍数変動は、高齢者と非高齢者で大きな違いは認められなかった。

本知見から、QT延長作用は、5-HT4受容体アゴニストのクラスエフェクトとではないことが明らかになった。一方、心拍数の増加は、Minesapride及び他の5-HT4受容体アゴニストでも認められており、クラスエフェクトである可能性が示唆された。5-HT4受容体アゴニストの臨床薬理的評価においては心拍数の評価に注意を払う必要がある。 2) 実臨床環境に近い臨床試験で心拍数を評価する場合は、各群100例規模での評価が望ましいことがわかった。また、15 分以上前から臥位安静状態を保った状態(高感度)で心拍数増加を評価すると、小規模臨床試験でもシグナルを捉えることが可能である。一方、臥位安静状態を保った状態(高感度)での測定は、実臨床環境と条件が異なることに留意すべきである。上記は、心拍数変動を臨床試験でいかに正確に評価するかという点での知見であるため、5-HT4受容体アゴニストの臨床開発のみならず、他の作用機序の薬剤の臨床試験デザイン策定時にも応用できると考えられる。

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