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大学・研究所にある論文を検索できる 「高極性化合物の触媒的化学選択的変換反応」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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高極性化合物の触媒的化学選択的変換反応

石澤, 公平 東京大学 DOI:10.15083/0002006107

2023.03.20

概要




























石澤公平は,「高極性化合物の触媒的化学選択的変換反応」というタイトルで,以下の研究を行
った。
背景と目的
アミノ酸をはじめとするカルボン酸や、糖の誘導体などは生体内において様々な機能を有する化
合物であり、創薬の現場でも取り扱うことの多い化合物群である。これらが有するカルボキシル基
や水酸基などの高極性官能基は、一般に高い反応性を有するため、複雑な分子の構築にあたっては
それら官能基との化学選択性が重要な課題となる。保護基を用いてそれらの反応性を落とす戦略は
頻用されるが、目的分子の構築には本来不必要な保護・脱保護が必要となり、全体の工程数が長く
なるという欠点を有している。この点に対し、触媒を効果的に用いることで高極性官能基との選択
性を制御することができれば、高極性化合物を効率的に変換できる新手法となりうると期待した。
以上の背景をもとに「ホウ素触媒によるカルボン酸とトリフルオロメチルケトンのアルドール反
応」(第一章)および「銅触媒を用いた無保護糖の立体選択的プロパルギル化を経由する 3 位置換シ
アル酸誘導体の短工程合成」(第二章)の二つのテーマについて、研究を行った。
① ホウ素触媒によるカルボン酸とトリフルオロメチルケトンのアルドール反応
カルボン酸は酸性度の高い OH 基を有するため、複雑な分子の構築においては、望まぬ副反応を
抑制するべくエステルなどの保護された形で取り扱うことが一般的である。しかしその高い反応性
を逆手に取り、カルボン酸選択的な変換を行うことも研究されてきた。石澤は、当研究室から報告
されたボランによるカルボン酸の直接的かつ選択的な活性化を鍵としたアルドール反応に着目し、
トリフルオロメチルケトンを用いたアルドール反応への拡張を検討した。
検討の結果、10 mol%の BH3・SMe2 と 3 当量の DBU 存在下、カルボン酸とトリフルオロメチル
ケトンを反応させると、反応のジアステレオ選択性はさほど高くないものの、中程度~高い収率で
アルドール付加体を与えることを見出した(Scheme 1)。基質適応範囲は、ケトン側については芳香
族トリフルオロメチルケトンに概ね限定されるものの、カルボン酸側についてはある程度幅広く適
応可能であり、ボランと反応しうるアルケン、アルキンやエステル、アミドなど他のカルボニル基
が存在していても問題なく反応が進行している。

Scheme 1 ホウ素触媒によるカルボン酸とトリフルオロメチルケトンのアルドール反応


銅触媒を用いた無保護糖の立体選択的プロパルギル化を経由する 3 位置換シアル酸誘導体の

短工程合成
近年 C3 置換シアル酸誘導体が抗インフルエンザ薬等として注目されつつあるが、既存の合成法

は長い工程を必要とするという課題がある。石澤は、当研究室が報告した一価銅試薬を触媒として
用いるプロパルギル化反応を鍵とするシアル酸誘導体の短工程合成法を発展させることで、C3 置
換シアル酸誘導体の短工程合成法を、容易に入手可能な 6 炭糖から保護基を用いず 3 段階で合成す
る方法の開発に成功した。本手法では基質糖の立体化学に関わらず、プロパルギル化に用いる触媒
の立体化学を変更するのみでシアル酸 4 位に相当する水酸基の立体化学を制御できることから、非
天然型の立体配置を有する種々の C3 位置換シアル酸誘導体の合成が可能である(Scheme 2)。

Scheme 2 銅触媒を用いたプロパルギル化を鍵とする C3 位置換シアル酸誘導体合成法
同時に石澤は、本変換反応の鍵である一価銅触媒を用いたプロパルギル化反応が、用いる一価銅
ソースによって異なる反応機構で進行していることを見出した。NMR 実験及び立体的かさ高さの
異なるアレニルボロン酸同士の反応性を比較することにより、以下の反応機構を提案した。すなわ
ち、一価銅ソースとして MesCu を用いる塩基性の条件下では、初めにトランスメタル化が進行し
てアレニル銅(I)錯体 III を生じる。その銅原子上に、ホウ素添加剤により開環したアルデヒド型の
基質 V が配位することで、6 員環遷移状態 VI を経てプロパルギル化反応が進行する。一方、CuBF4
を銅ソースとした場合は、まずカチオン性 Cu(I)錯体がアレニルホウ酸エステルの酸素原子に配位
して VII のような状態となる。このときホウ素原子の電子密度は低下し、基質アルデヒドの配位が
促進されるものと考えられる。その後、遷移状態 VIII から付加反応が進行して目的物を与えるとい
うものである(Figure 1)。

Figure 1 一価銅触媒を用いたプロパルギル化反応の銅ソースによる反応機構の違い
以上の業績は,高極性化合物の合成を効率化し、それら化合物が有する生物活性についての研究
や医薬品候補化合物の探索などの分野に大きく貢献するものであり,博士(薬科学)の学位論文と
して合格と認められる。

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