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Non-Fermi Liquid Behaviors in Diluted Pr Systems (Y,Pr)T2Zn20 (T = Ir, Co)

山根 悠 広島大学

2020.03.23

概要

学 位 論 文 全 文 の 要 約




山根 悠

論 文 題 目
Non-Fermi Liquid Behaviors in Diluted Pr Systems (Y,Pr)T2Zn20 (T = Ir, Co)
Pr 希薄系(Y,Pr)T2Zn20 (T = Ir, Co)における非フェルミ液体的挙動

1987 年に D. L. Cox によって単サイトの四極子近藤効果が提案されて以来,ウラン(U)
やプラセオジム(Pr)を含む化合物が示す非フェルミ液体(NFL)的挙動が注目を集めてい
る。2 チャンネル(四極子)近藤モデルでは,f 2 配位をとる U4+または Pr3+イオンの3 二重
項がもつ局在的な電気四極子が,2 つの等価な伝導バンドの8 部分波の四極子成分によ
って過剰に遮蔽される。そのモデルを用いた計算から,比熱を温度で割った C/T と四極
子感受率 Q が–lnT,電気抵抗率  が√𝑇に比例する NFL 的挙動を示し,絶対零度で
(1/2)Rln2 のエントロピーが残ると予言された。四極子近藤効果の可能性は,これまで,
U または Pr を希薄に含む(Th,U)Be13, (Y,U)Pd3, (Th,U)Ru2Si2, (La,Pr)Pb3 などの化合物にお
いて議論されてきた。しかしながら,試料に含まれる不純物や元素置換による原子の無
秩序配置,
あるいは U の 5f 波動関数の遍歴性のために結晶場準位の同定が困難である,
といった問題があり,四極子近藤効果の実験的な確証には至っていなかった。
近年,結晶場(CEF)基底3 二重項をとる立方晶 Pr 化合物の PrIr2Zn20 において,比熱
C(T)と電気抵抗率(T)の NFL 的挙動が観測され,四極子近藤格子を形成している可能性
が提案された。そこで,PrIr2Zn20 の Pr3+イオンを,4f 電子をもたない非磁性元素で希釈
すれば,単サイトの四極子近藤効果が発現すると予想した。本研究では,非磁性のホス
ト化合物 YIr2Zn20 と YCo2Zn20 の Y を少量の Pr で置換した Pr 希薄系 Y1–xPrxIr2Zn20 と Y1–
yPryCo2Zn20

(x, y < 0.5)の単結晶試料を,Zn 自己フラックス法により作製した。T > 0.04

K,磁場 B ≤ 14 T における比熱,電気抵抗,磁化,弾性定数,熱膨張を測定し,NFL 的
挙動が発現するのか,また,それが単サイトの四極子近藤効果として理解できるのかを
調べた。
Pr 希薄系 Y1–xPrxIr2Zn20 (x = 0.044, 0.44)の磁気比熱を温度で割った Cm(T)/T は,10 K 付
近で極大を示す。この極大は,基底状態を二重項,第一励起状態を 30 K 離れた三重項
とした二準位モデルによるショットキー型の比熱で再現できる。また,x = 0.028 の磁化
率(T)は,10 K 以下で温度降下と共に一定値に近づく van-Vleck 常磁性的挙動を示す。

一方,1.8 K における Y1–yPryCo2Zn20 (y = 0.48)の磁化過程 M(B)は,B > 2 T で M(B || [100])
> M(B || [110])の磁気異方性を示す。また,磁場 B = 1 T における y = 0.48 の磁化を磁場
で割った M(T)/B は,10 K 以下で温度降下と共に一定値に漸近する。これらの M(B)と
M(T)/B の振る舞いは,基底状態を3 二重項,第一励起状態を 38 K 離れた4 三重項とし
た CEF モデルによる計算で再現できる。以上の結果は,Y1–xPrxIr2Zn20 と Y1–yPryCo2Zn20
の両系の CEF 基底状態が3 二重項であり,四極子が活性となることを示す。
T = 0.04 K までの比熱と電気抵抗の測定から,Pr 希薄系において NFL 的挙動が発現
することを明らかにした。Y1–xPrxIr2Zn20 の x < 0.5 における Cm(T)/T と電気抵抗率の 3 K
からの変化量(T)は,T < 2 K でそれぞれlnT と 1+A√𝑇 (A は正の定数) の温度依存性
を示す。同様の振る舞いは Y1–yPryCo2Zn20 の y < 0.5 でも観測されることから,これら希
薄系に共通した特徴である。
置換量 x, y の異なる系の Cm(T)/T と(T)は,それぞれ NFL 的挙動の特性温度 T0 を用
いてよくスケールされる。ここで T0 は,磁気エントロピーSm が(3/4)Rln2 に達する温度
と定義した。T0 で規格化された x, y < 0.5 の Cm(T)/T は,0.5 < T/T0 < 3 の範囲でよく一致
する。また,T0 で規格化された x, y < 0.5 の(T)は,T/T0 < 3 で一つの曲線にのる。これ
らのスケーリングは,Cm(T)/T と(T)の NFL 的挙動が同一の機構によって生じたこと
を示す。さらに,Pr が希薄な x, y < 0.05 の系では,T/T0 ≤ 1 において,規格化した Cm(T)/T
と(T)がそれぞれlnT と 1+A√𝑇に比例し,単サイトの四極子近藤効果の発現を示唆す
る。
さらに,磁化と弾性定数,熱膨張の測定から,単サイトの四極子近藤効果の発現を強
く支持する結果を得た。Y1–xPrxIr2Zn20 の x = 0.028 の B = 1 T,2 T における M(T)/B は,
0.1 < T < 0.8 K の範囲でlnT 依存性を示す。この温度範囲は,Cm(T)/T と(T)が NFL 的
挙動を示す温度と一致する。M(T)/B は,3 二重項と励起状態間のゼーマン項の非対角
要素を通じて生じる,四極子に付随した磁気双極子のゆらぎを測定していると考えられ
る。実際,3 タイプの四極子感受率に対応する弾性定数(C11-C12)/2 は,0 ≤ B ≤ 2 T で lnT
に従うソフト化を示し,3 二重項における四極子ゆらぎの存在を示す。さらに,
Y1–xPrxIr2Zn20 の x = 0.036 における体積熱膨張係数(T)は,0.04 < T < 0.5 K の範囲でlnT
依存性を示し,4f 電子と伝導電子の混成による Pr イオンの価数変化を示唆する。
上に述べた NFL 的挙動は,磁場 B ≥ 4 T をかけると消失する。Y1–xPrxIr2Zn20 の x = 0.044
における Cm(T)/T のlnT 依存性は磁場を 4 T 以上かけると観測されず,Cm(T)/T には極
大が現れる。この極大は,基底二重項の分裂による二準位間のショットキー比熱として
説明できる。x = 0.044 の(T)では,B ≥ 4 T の磁場により上凸の振る舞いが消え,0.3 K
以下で一定値に近づく。B ≥ 4 T での x = 0.028 の M(T)/B と x = 0.034 の(C11-C12)/2 は,温
度降下とともに一定値に漸近し,これらの振る舞いはいずれも局在 4f 2 状態を仮定した
CEF 効果とゼーマン効果によって説明できる。さらに B ≥ 4 T において,(T)は 0.15 ≤ T
≤ 4 K の範囲でほぼゼロとなる。これらの結果は,B = 0 における NFL 状態が B ≥ 4 T の

磁場によって壊され,局在的な 4f 2 電子状態へとクロスオーバーすることを示唆する。
これらの結果は,Pr 希薄系の NFL 的挙動が単サイトの四極子近藤効果に起因すること
を示している。

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