Investigation of therapeutic target of DNMT3A-mutant acute myeloid leukemia
概要
DNMT3Aは急性骨髄性白血病で最も高頻度に認められる遺伝子変異の一つであるが、ドミナント・ネガティブ変異のためこれまで阻害剤を始めとした標的治療が行われてこなかった。本研究ではこの変異に着目し、合成致死の観点からDNMT3A変異陽性AMLにおいて、生存・維持において依存する分子学的機構を明らかにし、新規治療標的を見出すことを目的とした。
まずDNMT3A変異を有するOCI-AML2,OCI-AML3細胞株の同変異を、CRISPR-Cas9システムを用いた遺伝子編集により野生型へと修復した細胞株を作成した。これらの細胞株は増殖やコロニー形成能に明らかな変化はみられなかった。次に、この改変細胞株と元の細胞株に対してゲノムワイドCRISPR-Cas9ノックアウトライブラリーを用いて、細胞増殖および生存に関わる遺伝子群のスクリーニングを行った。元のDNMT3AR882変異陽性であるOCI-AML3Mut細胞株と、改変したOCI-AML3WT細胞株で、sgRNAのリード数の変化がみられる遺伝子群を抽出したところ、OCI-AML3Mut細胞株において依存度が比較的高い遺伝子が複数抽出された。
以上から、DNMT3A変異陽性AMLにおいて、DNMT3A変異そのものはAMLの増殖には必須ではないと考えられるが、一方でスクリーニングの結果からは、特定の遺伝子がDNMT3A変異陽性AMLにとってDNMT3A野生型AMLよりも依存度が高い可能性があり、合成致死をきたす遺伝子として治療標的になるかもしれない。クロマチンリモデリング因子であるINO80Cはそうした傾向を持つ候補遺伝子の一つとして挙げられDNMT3A変異陽性AMLを含めた一部の白血病において治療標的となる可能性がある。