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実験動物セミナー 第32回研究成果発表会抄録

山形大学

2022.02.22

概要

山形医学(ISSN 0288-030X)2022;40(1):32-36

実験動物セミナー 第32回研究成果発表会抄録
Abstracts of the 32nd Seminar of Laboratory Animal Center
日時:2021年12月9日(木)

によって、T細胞の増殖を抑制する骨髄由来サプレッサー細胞(myeloid-

場所:山形大学医学部 臨床研究棟1階 CBT室

derived suppressor cell, MDSC)や、獲得免疫応答を亢進する好中球など、

【演題番号1】

様々な異なる機能の好中球が誘導されることが知られている。現在、5つ

ゲムシタビンと放射線は悪性髄膜腫細胞に細胞老化を誘導し老化細胞除去

以上の新規の分類が提案されているが、異なる機能の好中球が混在する不

(senolytic)薬感受性を高める

均一な細胞集団のため、明確な分類法は確立されていない。我々は、がん

○山本雅大*,佐野町友美*,**,鈴木修平*,**,冨樫敬太*,***,

免疫応答に対して、抑制的、あるいは、促進的に作用する好中球をそれぞ

須貝明日香*,清野静香*,佐藤 篤****,岡田雅司*,

れ同定することで、がん治療に最適な免疫動態を予測し、がん免疫治療の

北中千史*,*****(* 山形大学医学部腫瘍分子医科学講座,** 同臨

効果を上げることを最終目標とし、研究を進めている。

床腫瘍学講座,***同眼科学講座,****同脳神経外科学講座,

本報告は、抗腫瘍型好中球を同定するため、高リスク非筋層浸潤膀胱

同メディカルサイエンス推進研究所)

癌治療で以前より行われているウシ型弱毒結核菌(BCG)の膀胱内注入

*****

悪性髄膜腫は可及的切除と術後放射線治療で治療される悪性度が高く

療法に着目した研究を報告する。BCG膀胱内注入治療は、膀胱癌の再発

予後の悪い腫瘍である。標準的な化学療法が存在せず新規治療法の開発

を70%以上抑制する有効な免疫治療である。その治療時には、好中球が

が望まれる中、我々は抗がん剤ゲムシタビンが悪性髄膜腫細胞に高い効

多量に膀胱内尿中に滲出する。そこで、BCG治療時の好中球を回収し、

果を示すことをその機序と共に報告してきた(Takeda et al.,Oncotarget

mRNA発現の網羅解析を行い、抗腫瘍型好中球の同定を試みた。その結

2017; Yamamoto et al., Neuro Oncol 2021)
。最近、ゲムシタビンは欧州脳

果、BCG治療時に尿中に滲出した好中球は、主要組織適合性抗原クラスII

腫瘍学会(EANO)の髄膜腫診療ガイドラインにて治療候補薬のひとつ

(MHCII;通常、好中球に発現していない)やCXCL10(NK細胞・リンパ

に挙げられ(Goldbrunner et al., Neuro Oncol 2021)、少数例ながら再発髄

球の遊走因子)の上昇が認められた。

膜腫における有効性・安全性が報告された(Khaddar et al., South Asian J

試験管内での再構成実験をヒト末梢血中の好中球を用いて試みたが、

Cancer 2020)
。ゲムシタビンは膵癌において放射線増感剤としての働きが

BCGで刺激しても、上記の結果は得られなかった。このことから、局所

知られているため、本研究ではより効果の高い治療法を開発することを目

の炎症応答に起因した骨髄からの好中球動員・組織滲出が、抗腫瘍型好中

的に、悪性髄膜腫細胞株を用いてin vitro及びin vivoでの放射線との組み合

球の誘導に関与していると予想された。そこで、動物実験センターの感染

わせ効果とその機序を検討した。ゲムシタビンは、培養細胞と皮下及び頭

室を利用し、マウス腹腔へのBCG注入モデルを考案した。その結果、ヒ

蓋内移植モデルにおいて、悪性髄膜腫細胞の放射線に対する感受性を高め

トBCG治療時と同様に、マウスBCG注入モデルにおいても、腹腔内に浸

た。ゲムシタビンと放射線の組み合わせは細胞形態を扁平・大型化させ細

潤した好中球に、MHCIIとCXCL10の上昇が認められた。また、マウス腹

胞老化を誘導することが示唆されたため、細胞老化マーカーを検討したと

腔への腫瘍移植モデルにおいて、BCG注入により抗腫瘍効果が認められた。

ころ、その組み合わせは老化関連酸性βガラクトシダーゼ(SA-β-gal)

これらのことから、BCGにより、MHCIIとCXCL10の上昇を伴う抗腫瘍型

活性を高め、ヒストンH2AXリン酸化(γ-H2AX)を誘導し、炎症性サイ

好中球が誘導されることが示唆された。

トカインの遺伝子発現を亢進させた。また、ゲムシタビンは放射線による

今後、マウスBCG注入モデルを用いて、抗腫瘍型好中球の誘導機序を

活性酸素種(ROS)の産生を促進し、抗酸化剤N-acetylcysteineはROSの

明らかにし、がん治療に最適な免疫動態への介入方法を開発したいと考え

産生と共にゲムシタビンと放射線による細胞増殖効果と細胞老化を抑えた

ている。

ことから、それらにおけるROSの関与が示唆された。ゲムシタビンと放射



線により誘導された老化細胞は治療を中止すると再増殖するため、老化

【演題番号3】

細胞を特異的に殺傷する老化細胞除去(senolytic)薬をスクリーニングし、

近位尿細管由来Semaphorin3Cの発現低下は心肥大を進展し心腎症候群の

senolytic薬の一つでBcl-2ファミリー蛋白阻害剤navitoclaxがその効果を更

予後を悪化させる

に高めることを見出した。実際にnavitoclaxはゲムシタビンと放射線によ

○青野智典*,大瀧陽一郎*,渡邉 哲*,後藤 準*,佐藤淳耶*,

り細胞老化が誘導された悪性髄膜腫細胞にアポトーシスを引き起こし、皮

小林祐太*,齋藤 悠司*,渡部 賢*,有本 貴範*,高橋 大*,

下移植モデルでもゲムシタビンと放射線の組み合わせの効果を増強した。

柳田素子**,本田浩章***,真鍋一郎****,渡辺昌文*(*山形大学

以上より、悪性髄膜腫に対して、ゲムシタビンが放射線増感剤として使用

医学部内科学第一講座,** 京都大学大学院医学研究科腎臓内科学

できる可能性が示唆されるとともに、両者の組み合わせにより引き起こさ

講座,***東京女子医科大学実験動物研究所,****千葉大学大学院

れる細胞老化がsenolytic薬の治療標的となり、navitoclaxがゲムシタビン

医学研究院疾患システム医学)

と放射線の抗腫瘍効果を更に高めることが示唆された。
(Yamamoto et al.,

【背景・目的】心不全は世界的に増加しており、本邦においても現在約

Neurooncol Adv 2021)

120万人の心不全患者がいると推計され、今後も増加傾向にある重要な疾



患である。心不全患者の予後は心臓機能の低下以外にも様々な併存症に影

【演題番号2】

響される。特に心機能と腎機能は互いに密接に関連するため、心不全患者

膀胱癌BCG膀胱内注入治療時に出現する抗腫瘍型好中球の同定

には高率に腎機能障害を合併し、心腎症候群と呼ばれる。心腎症候群の予

○武田裕司*,加藤智幸**,Sabrina Saima*,内藤 整**,

後は極めて不良であり、機序や治療法を明らかにすることが重要な課題と

伊藤裕美**,牛島正毅**,成澤貴史**,菅野秀典**,荒木明美*,

なっている。Semaphorin3C(SEMA3C)は神経軸索誘導因子として同定

斉藤真一*,土谷順彦**,浅尾裕信*(*山形大学医学部免疫学講座,

された分泌タンパクだが、心臓と腎臓の発生において重要な役割を担って

同腎泌尿器外科学講座)

いる。しかし、発生以後の心疾患、腎疾患における役割は不明である。本

**

好中球は、細菌感染部位に素早く遊走し、貪食能と活性酸素産生能を

研究の目的は、心腎症候群の病態進展においてSEMA3Cの果たす役割を

もって、感染防御の最前線で働く細胞として古くから知られている。近年、

解明することである。

好中球と考えられていた細胞集団は、炎症状態や生活習慣に由来する要因

【方法・結果】野生型マウスにおいて、SEMA3C mRNAの発現量を臓

-32-

器ごとに比較したところ、腎臓で高発現していた。また、免疫染色法で

管ネットワークが形成されること、(2)微小管ネットワークが形成された

は尿細管に強く発現していた。野生型マウスに胸部横行大動脈縮窄術

胚では、ダイニンによる核近傍へのミトコンドリアの移動と細胞接着部位

(Thoracic transverse aortic constriction: TAC)を行い心腎症候群モデ

へのE-カドヘリンとオクルディンの輸送が行われることが示唆された。

ルを作成しSEMA3Cの変化を検討したところ、尿細管のSEMA3C発現



量が低下しており、血中SEMA3C濃度も有意に低下した。Tamoxifen誘

【演題番号5】

導により近位尿細管特異的SEMA3Cノックアウトマウス(Ndrg1CreERT2/+;

マウス胚の胞胚腔形成と拡張におけるE-カドヘリンの役割

SEMA3Cflox/flox)を作成しTAC手術を行ったところ、心肥大が悪化し生

○武田奈々,坂原聖士,高倉 啓,黒谷玲子,阿部宏之(山形大学

存率が有意に低下した。心肥大シグナルとして知られるAkt、ERK 1/2、

大学院理工学研究科バイオ化学工学専攻)

Wnt/β cateninシグナルとSEMA3Cの関係をin vitroで検討した。心筋細

【目的】接着結合(adherens junction:AJ)は上皮細胞における主要な

胞においてRecombinant SEMA3Cを投与することで、Angiotensin IIや

細胞接着装置であり、E-カドヘリンが隣接する細胞の結合を強固にしてい

Wnt3a刺激によるAkt、ERK 1/2、Wnt/β cateninシグナルの活性化が抑

る。これまでに、母性および胚性E-カドヘリンを欠損したマウス胚では胚

制された。SEMA3Cを過剰発現したHEK293T細胞と心筋細胞を共培養し

の緊密化(コンパクション)が起こらず胚の発生が停止することが報告さ

たところ、心筋細胞におけるAktやERK 1/2のリン酸化が抑制された。新

れている。このようにAJは、初期胚の発生に重要な役割を果たしている

生仔ラット心筋細胞にSEMA3Cを投与すると、Angiotensin IIによる心筋

と考えられるが、胚の形態的品質やハッチングとの関係には未解明な点

細胞肥大が抑制された。

が多い。本研究では、E-カドヘリンをノックダウンしたマウス胚を作製し、

【結論】尿細管のSEMA3Cを低下させ心腎症候群を誘導すると、心肥

AJの形成や胚の形態形成への影響を調べた。

大 が 増 悪 し 生 存 率 が 低 下 し た。SEMA3Cは、Akt、ERK 1/2、Wnt/β

【方法】これまでの研究により、マウス胚においてE-カドヘリン遺伝子は

cateninシグナルを介して心筋細胞肥大を抑制した。腎尿細管から分泌

8細胞期胚に発現が始まり、桑実胚期に顕著に増加することが分かってい

されるSEMA3Cは、心保護作用を有しており、心腎症候群の新たな治療

る。そこで本研究では、マウス(B6C3F1)から8細胞期胚を回収し、ゲ

ターゲットとなる可能性が示唆された。

ノム編集装置(Genome Editor;ver1.00, BEX)を用いたエレクトロポ



レーション法によりE-カドヘリンsiRNAを導入した。その後mWMで36時

【演題番号4】

間培養して胚盤胞を回収し、AJおよび密着結合(tight junction:TJ)関

マウス胚における微小管ネットワークの形成と細胞内輸送における役割に

連タンパク質のmRNA発現を調べた。また、蛍光染色によってこれらの

関する研究

タンパク質の局在を調べた。さらに胚の発生のタイムラプス観察を行った。

○今 汰一,坂原聖士,高倉 啓,黒谷玲子,阿部宏之(山形大学

【結果と考察】E-カドヘリンsiRNA導入胚では、E-カドヘリンのmRNA

大学院理工学研究科バイオ化学工学専攻)

発現量が10分の1程度まで減少し、E-カドヘリンタンパクの細胞間での局

【目的】これまで我々は、MAP4と呼ばれる微小管結合タンパク質が微小

在も観察されなかった。また、E-カドヘリンの細胞膜への輸送に関与して

管ネットワークの形成に関与することを明らかにしている。しかし、中心

いるβ-カテニンは、mRNA発現量はほとんど変化しなかったが、細胞間

体をもたないマウス初期胚では、微小管ネットワークの形成や微小管を

に局在するタンパクは著しく減少した。一方、細胞骨格であるF-アクチン、

介した物質輸送に関しては不明な点が多い。そこで本研究では、多くの

TJ関連タンパク質であるZO-1およびオクルディンは、mRNA発現量とタ

動物細胞において微小管マイナス端の安定化に寄与するγ-チューブリン

ンパク質の局在に影響はなかった。次に、E-カドヘリンsiRNA導入胚の発

と上皮細胞の特徴的な微小管配置の構築に関与するCalmodulin-regulated

生率および発生速度は、コントロール胚と比べて有意な差はなかったが、

spectrin-associated protein3(CAMSPA3)に着目して、マウス胚におけ

胚の拡張が小さく、形態的品質が不良な胚が増加した。そこで初期胚盤胞

る微小管ネットワーク形成過程を調べた。さらに、マウス胚における微小

から拡張胚盤胞までの収縮の回数と強さを比較した。その結果、E-カドヘ

管とダイニンによる細胞内輸送を明らかにするために、核近傍へのミトコ

リンsiRNA導入胚では収縮の回数が2倍以上に増加していた。さらに、こ

ンドリアの移動と細胞表層への細胞接着関連タンパク質の輸送についても

の収縮を収縮の強さによって分類すると、体積が20%以上減少する「強い

解析した。

収縮(虚脱)
」が増加していることが分かった。以上の結果から、8細胞

【方 法 】 マ ウ ス(B6C3F1) の 卵 子 お よ び 胚 に お い て、 α-チ ュ ー ブ リ

期以降に発現するE-カドヘリンをノックダウンしたマウス胚ではAJが正

ン、γ-チューブリンおよびCAMSAP3の遺伝子発現とタンパク質の局在

常に形成されず、胚盤胞の形態的品質低下や虚脱の頻発が起こることが分

を調べた。ダイニンによる物質輸送を調べるために、 ダイニン機能阻害剤

かった。マウス胚では、AJは胚盤胞の形態構築や拡張に関与し、胚の品

EHNAで処理した胚において、ミトコンドリア、E-カドヘリンおよびオク

質に重要な影響を及ぼすと考えられる。

ルディンの局在を解析した。さらに、ダイニン機能阻害胚におけるミトコ



ンドリア膜電位活性はJC-10を用いて解析し、細胞間バリア機能はFITC-

【演題番号6】

デキストラン(FD)透過性試験により調べた。

異なる系統のマウス胚において発生する小胞体ストレスの解析

【結果と考察】α-チューブリンのmRNA発現量は、微小管の形成が顕著

○廣枝理紗子,坂原聖士,高倉 啓,黒谷玲子,阿部宏之(山形大

になる桑実胚および胚盤胞で増加した。γ-チューブリンのmRNA発現量

学大学院理工学研究科バイオ化学工学専攻)

は卵子成熟過程で減少したが、8細胞期胚において顕著に増加した。一

【目的】細胞は急激な環境変化や遺伝子変異により多量の不良タンパク

方、CAMSAP3のmRNA発現量は卵子で顕著に高かったが、受精後に大

質が小胞体内に蓄積すると小胞体ストレス(ERS)が生じる。近年ERSは、

きく減少した。桑実胚と胚盤胞において、ドット状のγ-チューブリンと

神経変性疾患や糖尿病などの疾患と関係していると報告されているが、胚

CAMSAP3が観察され、それらの多くは微小管と共局在していた。これは、

発生とERSとの関係はよくわかっていない。これまでに小胞体ストレス誘

桑実胚においてγ-チューブリンとCAMSAP3を基点にα-チューブリンが

導試薬であるBrefeldinA(BFA)で人為的に小胞体ストレスを引き起こ

重合し、胚盤胞では細胞質全体に微小管ネットワークが形成されることを

したマウス胚の解析を行ってきた。BFA処理胚では、ERSに対する応答

示唆している。また、ダイニン機能阻害胚では、核近傍へのミトコンドリ

として、ERS関連遺伝子の発現増加、分子シャペロンであるGRP78の増加

アの移動の抑制とミトコンドリア膜電位活性の低下が観察されるとともに、

やアポトーシスなどが起こることが明らかになった。そこで本研究では、

細胞接着部位に存在するE-カドヘリンおよびオクルディンが顕著に減少し、

胚発生とERSの関係を明らかにするために、発生能が異なる系統のマウス

胞胚腔へFDが透過した胚の数が増加した。以上の結果から、マウス胚で

胚において、ERSの発生とERSによって生じる生物現象を解析した。

は、
(1)γ-チューブリンとCAMSAP3を基点に細胞質全体に広がる微小

【方法】胚発生の良好な系統のICRマウスと発生能の低い系統のDBA/2J

-33-

マウスを実験に用いた。過排卵処理したマウスの卵管から回収した2細胞

いないと考えられた。

期胚をmWM培地で培養した。これらの胚において、ERSマーカータンパ

ラット膝関節欠損部にgel、11gel及びfilmを充填した組織学的評価の結

クの遺伝子発現と局在を解析しERSの有無を調べた。小胞体はER-IDを用

果、filmでは欠損部位に組織再生は認められなかった。また、11gelでは骨

いて細胞内における局在を調べ、アポトーシスはTUNEL法により解析し

組織と充填部の境界に線維芽細胞が認められ、コラーゲンが線維状に配向

た。また、BFA添加mWM培地で培養し人為的にERSを誘導したICR胚で

していることから、線維性軟骨への再生が示唆された。一方で、gelでは

観察されるERSと体外培養のみで起こるERSとの比較を行った。

軟骨表面部に正常軟骨組織より薄いガラス様相の組織が観察された。従っ

【結果】ICR胚では桑実胚期から胚盤胞期にかけてERSや細胞死に関連す

て、gelにおいて硝子軟骨と類似した組織が再生されたことから、gelを充

るタンパク質の遺伝子発現はほとんど変化しなかった。 一方、DBA/2J胚

填することで硝子軟骨の再生が可能であることが示唆された。

では胚盤胞期においてBAX、CHOP、ATF4の遺伝子発現が有意に増加
した。また、ICR胚では桑実胚期に小胞体内腔にGRP78が局在していたが、

以上の実験結果から、グルコース/マンノースゲルは膝関節の軟骨再生
に有効であると考えられる。 

DBA/2J胚ではGRP78タンパクの局在は桑実胚、胚盤胞ともにほとんど観
察されなかった。加えてDBA/2J胚では多数のTUNEL陽性細胞が観察さ

【演題番号8】

れ、胚の著しい品質の低下が認められた。

結晶性グルコース/マンノース重合膜を用いた新規創傷被覆材の皮膚再生

【考察】マウスの系統によって、ERSに伴って起こる生物現象は異なる

効果

ことがわかった。人為的にERSを誘導したICR胚では、小胞体の異常な拡

○戸村夏那子*,山本 修**(* 山形大学工学部化学・バイオ工学

張とともにGRP78タンパク質の高発現が観察された。一方で、DBA/2Jマ

科,**同大学院理工学研究科)

ウス胚ではGRP78のタンパク質の高発現がみられなかった。GRP78はア

【緒言】創傷治癒では止血期、炎症期、増殖期、再構築期が連続して進行

ポトーシスを抑制することが報告されている。そのため、DBA/2Jでは

する。特に炎症期や増殖期では滲出液が漏出し、細胞遊走が起こり治癒が

GRP78の発現量低下とCHOPの発現量増加によりアポトーシスが頻発し、

進行していく。ガーゼなどを使用して創面が乾燥すると治癒が滞ってしま

これにより胚発生能が著しく低下すると考えられる。

うため、痂皮や瘢痕組織が形成される。そこで創面の湿潤環境の維持を目



的としてハイドロコロイドドレッシング剤が使用されている。しかし、現

【演題番号7】

在使用されているドレッシング剤では持続的な使用で組織との癒着が生

グルコース/マンノースゲル及びその重合体膜によるラット膝硝子軟骨の

じることがある。そこで、結晶性の構造を持ち吸水性をもつ素材として

再生に関する検討

(1,4)-β-D-グルコース-β-D-マンノースに着目した。本研究ではグルコー

○西山実優*,山本 修**(* 山形大学大学院理工学研究科化学・

ス/マンノース重合膜を適用した際の創傷治癒効果を検証することを目的

バイオ工学専攻,**同理工学研究科)

とした。

【緒言】現在、ケガや高齢による膝関節軟骨の変形・消失で関節症などの

【実験】グルコース/マンノース粉末1.0gと蒸留水100mlを100分間攪拌し、

膝関節損傷に対する治療法として、硝子軟骨シートの貼付や、アルギン酸

そこに0.1Mの炭酸ナトリウム水溶液20mlを加えて5分間攪拌することに

ゲルを用いた骨髄刺激法などが臨床で行われている。骨髄刺激法は、膝軟

より重合体ゲルを作製した。ゲルをガラスシャーレに移し、室温で7日

骨損傷部位に医療用ドリルで欠損孔を作成し、そこにアルギン酸ゲルを充

間熟成乾燥した。乾燥後、蒸留水を使用しpH調整を行い中性にしたのち、

填することで軟骨再建が行われるものである。しかし、アルギン酸ゲルは

正方形に成形した。オートクレーブ滅菌処理後、70℃の乾燥機内で3日間

生体吸収性が高く、さらに再生される軟骨は膝関節本来の硝子軟骨ではな

乾燥させ重合膜とした。特性評価としてX線回折測定による結晶構造解析

く線維性軟骨で再生されるといった問題点がある。そこで、骨髄刺激法

を行った。動物実験は山形大学動物実験委員会承認の下、ラット両腹側部

に用いる軟骨再生用材料として、我々は多糖類の一種であるグルコース/

に直径10mmの円形皮膚全層欠損を作成した。Control群として生理食塩

マンノース重合体ゲル(
(1,4)
,β-D-グルコース-β-D-マンノース重合体ゲ

水を含水させた重合膜を、Sample群として塩化マンガン水溶液を含水さ

ル)を使用する軟骨再建に着目した。本研究では、ラット膝関節を用いて

せた重合膜を皮膚全層欠損部位に貼付した。創傷作成後、1及び2週間を

グルコース/マンノースゲル及びその重合体膜の軟骨再生に及ぼす効果を

治癒期間とした。組織摘出後に、創傷残存率の統計学的評価及び組織染色

in vivoで評価することを目的とした。

による組織学的評価を行い、創傷治癒効果を評価した。 ...