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大学・研究所にある論文を検索できる 「Zika virus protease induces caspase-independent pyroptotic cell death by directly cleaving gasdermin D」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Zika virus protease induces caspase-independent pyroptotic cell death by directly cleaving gasdermin D

山岡 悠太郎 横浜市立大学

2021.03.25

概要

1. 序論
 ジカウイルス(ZIKV)は, 胎児への小頭症や末梢神経障害, 成人へのギラン・バレー症候群などの重篤な合併症を引き起こす(Wikan and Smith, 2016).これらの病態の原因の一つとして, ZIKVが神経細胞やグリア細胞等に対して, 直接・間接的な細胞死を誘導することが挙げられる(Vicenzi et al., 2018).とりわけ, ZIKVによって引き起こされる細胞死の1種であるピロトーシスは, 炎症性サイトカインやダメージ関連分子パターン等(DAMPs)の放出を伴うことから, 神経炎症を生じさせ, 病態発現に密接に関与すると考えられている(de Sousa et al., 2018).ZIKV感染細胞においてピロトーシスは, インフラマソームにより活性化したカスパーゼ1がガスダーミンD(GSDMD)を切断し, それにより生じたGSDMDのN末端が細胞膜に小孔を生じさせることにより誘導されるとの報告があるものの(He et al., 2020), その他の因子の関与や経路については未解明であった.本研究では, ZIKVがコードするウイルスプロテアーゼ(NS2B3プロテアーゼ)によるGSDMDの切断を介した, 新規のピロトーシスの誘導メカニズムについて報告する.

2. 実験材料と方法
 各細胞死の阻害剤(zVAD-FMK, Necrostatin-1)の存在下でU87-MG細胞にZIKVを感染させ, 細胞障害性をLDHアッセイ法により調べるとともに, その際の細胞の形態を位相差顕微鏡により観察した.また, ZIKVのコードする非構造タンパク質(NS1, NS2A, NS2B, NS3, NS4A, NS4B, NS5)をU87-MG細胞に導入し, 細胞障害性を同様に解析した.NS2B3プロテアーゼにより切断される宿主因子を探索するため, コムギ無細胞系によりZIKVNS2B3プロテアーゼと宿主タンパク質を合成し, in vitroでZIKVNS2B3プロテアーゼによる切断活性を解析した.また, ZIKV感染細胞の抽出液を用いたex vivoでの切断実験により, ZIKV感染細胞中のNS2B3プロテアーゼがGSDMDの切断活性を有するかどうかを調べた.そして, 同定したGSDMDの切断部位をエドマン分解法により調べた.ZIKVNS2B3によって切断されるGSDMDのN末端を細胞に発現させ, その際の細胞障害性をLDHアッセイにより解析した.最後に, GSDMDをノックダウンした細胞におけるNS2B3プロテアーゼによる細胞障害性を同様に調べた.

3. 結果
 U87-MG細胞にZIKVを感染させた所, ピロトーシス様の細胞死が確認された.その細胞死は, パンカスパーゼ阻害剤であるzVAD-FMKにより部分的に抑制されたものの, 完全には抑制されなかった.したがって, ZIKV感染細胞では, カスパーゼ依存的な細胞死に加えて, 非依存的な経路でもピロトーシスが誘導されることが示唆された.本現象のメカニズムを調べるために, ZIKVの各非構造タンパク質をU87-MG細胞に導入したところ, NS2B3プロテアーゼを発現させた細胞において, カスパーゼ非依存的に, かつ, プロテアーゼの活性依存的にピロトーシス様の細胞死が誘導されることが明らかになった.そこで, NS2B3プロテアーゼにより切断されるピロトーシスに関連する宿主因子をin vitroの系で探索したところ, NS2B3プロテアーゼがGSDMDを切断することを見出した.その切断部位は, カスパーゼ1による切断部位よりややN末端側の249番目のアルギニン残基と250番目のセリン残基の間であった.また, ZIKV感染細胞の抽出液を用いたex vivoでの切断実験により, 感染細胞中のNS2B3もGSDMDの切断活性を有することが示唆された.そこで, GSDMDのN末端領域(1-249)を細胞に発現させたところ, カスパーゼ1より生じるN末端領域(1-275)を発現した細胞と同様にピロトーシスが誘導された.加えて, U87-MG細胞に対してGSDMDをノックダウンすると, NS2B3プロテアーゼの発現によるピロトーシスはほとんど生じなかった.さらに, GSDMDのノックダウン細胞に対して, GSDMDをNS2B3とともに再導入したところ, ピロトーシスが生じたが, NS2B3による切断部位をアラニン残基に置換した変異型のGSDMD(R249A)を共発現させた細胞では, ピロトーシスがほとんど生じなかった.

4. 考察
 ウイルスにコードされるプロテアーゼは, 本来, ウイルスの前駆体タンパク質の切断に機能することから, ウイルスの複製に必須な因子である.本研究では, ZIKVにコードされるNS2B3プロテアーゼが, 宿主因子であるGSDMDを直接切断することで, カスパーゼ非依存的にピロトーシスを誘導することを見出した.したがって, ZIKVNS2B3プロテアーゼは, 炎症応答を積極的に誘発することで, 病態の発現にも関与することが推察される.NS2B3プロテアーゼに対する阻害薬は, ウイルス複製だけでなく, ZIKVによる病態発現の制御にも有効な治療薬となる可能性が考えられた.

この論文で使われている画像

参考文献

He, Z., An, S., Chen, J., Zhang, S., Tan, C., Yu, J., Ye, H., Wu, Y., Yuan, J., Wu, J., Zhu, X. and Li, M. (2020), “Neural progenitor cell pyroptosis contributes to Zika virus-induced brain atrophy and represents a therapeutic target”, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., Vol. 117 No. 38, pp. 23869–23878 doi:10.1073/pnas.2007773117

de Sousa, J.R., Azevedo, R. do S. da S., Martins Filho, A.J., de Araujo, M.T.F., Cruz, E. do R.M., Vasconcelos, B.C.B., Cruz, A.C.R., de Oliveira, C.S., Martins, L.C., Vasconcelos, B.H.B., Casseb, L.M.N., Chiang, J.O., Quaresma, J.A.S. and Vasconcelos, P.F. da C. (2018), “In situ inflammasome activation results in severe damage to the central nervous system in fatal Zika virus microcephaly cases”, Cytokine, Vol. 111 No. August, pp. 255–264 doi:10.1016/j.cyto.2018.08.008

Vicenzi, E., Pagani, I., Ghezzi, S., Taylor, S.L., Rudd, T.R., Lima, M.A., Skidmore, M.A. and Yates, E.A. (2018), “Subverting the mechanisms of cell death: Flavivirus manipulation of host cell responses to infection”, Biochem. Soc. Trans., Vol. 46 No. 3, p. doi:10.1042/BST20170399

Wikan, N. and Smith, D.R. (2016), “Zika virus: History of a newly emerging arbovirus”, Lancet Infect. Dis., Vol. 16 No. 7, pp. e119–e126 doi:10.1016/S1473-3099(16)30010-X

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