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大学・研究所にある論文を検索できる 「A Hyperactive RelA/p65-Hexokinase 2 Signaling Axis Drives Primary Central Nervous System Lymphoma」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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A Hyperactive RelA/p65-Hexokinase 2 Signaling Axis Drives Primary Central Nervous System Lymphoma

三宅 勇平 横浜市立大学

2021.05.31

概要

1. 序論
中枢神経原発リンパ腫(Primary central nervous system lymphoma: PCNSL)は,脳・脊髄に限局した悪性リンパ腫である.現在の標準治療であるメトトレキサートを基盤とした化学療法と全脳照射では50%以上は再発し,さらに白質脳症などの治療合併症は著明な認知機能障害をきたす.そこで治療成績向上と副作用低減の観点から,PCNSLの分子生物学的な機構に基づく標的治療の開発が望まれている.PCNSLは病理学的にdiffuse large B-cell lymphoma (DLBCL)の activated B-cell (ABC) like subtypが85%以上を占めるが,その特徴として,NF-kB経路の上流であるB-cell receptor(BCR)のCD79B遺伝子とToll-like receptor(TLR)のMYD88遺伝子の点突然変異を認める(Nakamura et al., 2016).またABCl ike subtypeとは別に、免疫不全者のEpstein-Barr virus(EBV)感染に関連したPCNSLも指摘されているが,こちらもNF-kB経路の上流であるLMP1変異を高頻度に認める.その理論に基づきNF-kB経路の上流にあるBCR経路の重要なシグナルであるBruton’s tyrosine kinase(BTK)の阻害薬が臨床応用されたが,再発/難治例に対する奏効率が5-8割である一方で,無再発生存期間は4.6-5.8ヵ月であり,早期耐性獲得を示唆する結果であった(Grommes et al., 2017).分子生物学的機序に基づいた腫瘍形成や薬剤耐性機序の解明,さらには新規薬剤の開発には詳細な前臨床試験が必須である.しかしPCNSLは疾患モデルなどの研究材料が存在しなかったことから基礎実験に基づく提言は乏しい疾患である.疾患モデルの中でも患者由来異種移植Patient-derived xenograft(PDX)モデルは,ヒト起源の遺伝型,腫瘍内不均一性,ヒト腫瘍内の微小環境などがよく保存されており,腫瘍発生機序や新規薬剤の探索に非常に有用なツールである.横浜市立大学脳神経外科教室では以前よりグリオーマのPDXモデルを用いた研究に取り組んでいる.今回私は,同様の手法にて中枢神経リンパ腫のPDXモデルの樹立を行った.本研究では,樹立したPDXモデルがヒト由来の腫瘍の特徴を再現したモデルであるかを確認し,PDXモデルを用いて腫瘍形成の病態生理,NF-kB経路活性と腫瘍発生の関係を明らかにすることを目的とする.

2. 実験材料と方法
15例の中枢神経リンパ腫(14例:PCNSL,1例:全身性リンパ腫の播種,Secondary CNSlymphoma ;SCNSL)に対し,診断目的に手術により組織採取を行った.余剰検体を用いて酵素的に処理を行った腫瘍細胞をマウス脳へ移植し,PDXモデルを作成した.採取した腫瘍は遺伝子学的解析,病理組織学的解析を行った.さらに各モデルにて,in vitro, in vivoで種々の薬剤投与による細胞活性測定やMYD88,CD79B,LMP1などの遺伝子ノックダウンモデル作成を行った.これらの手法により,PCNSL発生の鍵となる遺伝子や標的シグナルの同定を行った.

3. 結果
患者15例中12例で腫瘍形成が観察できた.PDXモデルは複数回継代しても患者腫瘍の病理組織学的特徴を模倣したものであり,遺伝子学的には非同義変異の多くが忠実に保持されていた.特にMYD88,CD79Bは早期に出現するドライバー遺伝子として検出され,複数回継代しても常に保持されていた.二次リンパ組織で生じるaberrant somatic hypermutation (aSHM)は,親クローン―サブクローン間で大きく変化しなかった.脳移植モデルでは脳のみ腫瘍を形成し,経静脈的移植によっても脳以外には腫瘍を形成しなかった.臨床的にPCNSLではFDG-PETの集積が高いことが知られているが,PDXモデルにおいても同様にFDG高集積を認めた.腫瘍細胞においてはhexokinase2(HK-2)などの解糖系蛋白が高発現しており,薬物的,遺伝子学的に解糖系を抑制することで,強い細胞活性の低下を認めた.MYD88,CD79B変異を持つPDXでは解糖系蛋白が高発現しており,MYD88,CD79Bをノックダウンするとその下流のNF-kB経路の重要なシグナルであるRELA/p65の発現抑制とともに,解糖系蛋白,特にHK-2の発現低下と,細胞活性の低下を認めた.免疫不全例のPCNSLでは,LMP1をノックダウンするとRELA/p65の発現抑制とともに,HK-2の発現低下と細胞活性の低下を認めた.RELA/p65のノックダウン,薬物的な抑制によっても解糖系の抑制を認めた.PDXモデルを形成しなかった3例では,MYD88/CD79Bなどの遺伝子変異を有していたが,RELA/p65の発現は低かった.これらにおいてはRELA/p65を支持するとされるpeptidyl-prolyl1isomerase(Pin1)の発現が低かった.そこでPDX形成細胞に対し,薬物的,遺伝子学的にPin1を阻害したところ,RELA/p65,HK-2発現低下と細胞活性の低下を認めた.メトトレキサートも同様にRELA/p65と解糖系を抑制した.さらにPDXでのメトトレキサートの感受性は臨床での治療反応性と相関した.

4. 考察
今回樹立したPDXモデルは患者腫瘍の遺伝学的,病理組織学的特徴を再現することが確認され,PCNSLの病態や治療感受性を探索できる重要なモデルであることが判明した.クローン間でaSHMは有意な変化を認めなかったことは,二次リンパ組織内でのaSHMは重要でないことを示唆している.つまり,PCNSL細胞は中枢神経外で成熟をきたしてから中枢神経に適合することが示唆される.また腫瘍が脳のみに形成されたことから,脳特異的なミクログリアなどの微小環境が腫瘍形成を支持すると予想される.MYD88,CD79Bは既報と同様に高頻度に変異を認め,早期に発生する極めて重要なドライバー遺伝子として検出された.MYD88,CD79B,LMP1,PIN1を抑制することで,RelA/p65-HK-2経路が抑制され,細胞活性が低下することが繰り返し示された.本研究より,PCNSLではMYD88/CD79BもしくはLMP1によるNF-kB経路関連の遺伝子異常によりRELA/p65が活性化し,それをPin1が支持することで,RELA/p65がPCNSL進展を促進させることが示唆された.そしてRELA/p65-HK-2経路が強い解糖系依存を誘導していることが示された.したがって,如何にRELA/p65を制御するかがPCNSLの標的治療の重要な鍵となると考えられた.

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