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大学・研究所にある論文を検索できる 「Analysis of cancer-associated haptoglobin using a next generation glycan antibody」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Analysis of cancer-associated haptoglobin using a next generation glycan antibody

森下, 康一 大阪大学

2022.03.24

概要

単糖であるフコースが結合することをフコシル化と呼び、炎症やがんにも関わる最も重要な糖鎖修飾の1つである。研究室の先行研究でフコシル化ハプトグロビン(Fuc-Hp)が膵がん患者の血中で増加しており、これを直接捉える次世代型糖鎖抗体の10-7G抗体が樹立された。10-7G抗体が捉えるHpを抗体Affinity Columnを用いて解析したところ、10-7G抗体は成熟型Fuc-Hpだけでなく、ハプトグロビン前駆体proHpも捉え、proHpもフコシル化されていることが分かった。さらに、健常人に比して膵がん患者血中ではproHpが増加していることも確認された。我々は成熟型 Fuc-HpならびにproHpをがん関連ハプトグロビンと呼んでいる。本研究では次世代型糖鎖抗体の10-7G抗体を用いてがん関連ハプトグロビンのバイオマーカーとしての有用性と生物学的機能の解析を行った。

血中でのハプトグロビンの立体構造にはハプトグロビン表現型(Hp1-1, Hp2-1, Hp2-2)による差が存在する。申請者らが行った先行研究により、10-7G抗体を用いたがん関連ハプトグロビンの測定(10-7G値)においてHp1-1型膵臓がん患者が測定適応外であることが示されている。一方、10-7G抗体はWestern blot (WB)により、proHpを検出することができる。細胞実験やペプチド合成ペプチドを用いた実験によって、糖鎖を持たないHpのα鎖に存在する6アミノ酸(QCKNYY)が10-7G抗体のエピトープであることがわかった。このエピトープはHp1分子にも存在するがin silicoの解析から立体構造が原因となり10-7G抗体が認識できない可能性が示された。Hp2分子ではβ鎖に存在する糖鎖のフコシル化によるハプトグロビンの立体構造の変化でα鎖が露出し、エピトープが出現すると考えられた。

続いて10-7G抗体を用い、proHp産生細胞の検討を行った。10-7G抗体を用いて21例の膵がん組織の免疫組織染色を行うと、12例では膵がん組織ではなく周囲の免疫細胞が陽性となった。さらに蛍光組織染色の結果からCD68陽性細胞が10-7G抗体染色の陽性細胞であることが示唆された。複数の血球細胞株の培養上清を用いてタンパク発現量を解析するWestern blotを行うと単球性白血病細胞株THP-1がproHpを産生していることが明らかになった。さらに THP- 1細胞をマクロファージ様に分化させる、あるいは膵がん微小環境を模した共培養や刺激によってproHp分泌量が亢進することが分かった。したがって血中proHp量は膵がん微小環境を反映するマーカーになり得ることが示された。

最後にproHpの生物学的機能の解析を行った。上皮形質を有する大腸がん細胞株HCT116にproHpを発現させたとこ ろ、顕微観察レベルで形態変化が生じ、遊走能も亢進した。その原因として、上皮間葉転換と呼ばれるがん悪性化が考えられ、上皮系マーカーであるE-Cadherinの発現量減少を認めた。一方精製proHpをHCT116の培養上清に添加しても著明な形態変化を認めなかったが、薬剤によって数週間のproHp産生を誘導するとE-Cadherinの発現量が減少した。このことからproHpがE-Cadherinの発現量を減少させるには長期間が必要であることが示唆された。続いて proHpの相互作用分子を免疫沈降によって解析したところ、proHpがE-Cadherinそのものに結合する可能性が示された。すなわちproHpがE-Cadherinの膜上発現量のタンパクレベルでの調節因子であり、がん微小環境においてはマクロファージから分泌されたproHpががん細胞に長期間作用することで上皮間葉転換が誘導される可能性が示された。

以上より次世代型糖鎖抗体の10-7G抗体ががん関連ハプトグロビンを認識するメカニズムが明らかとなり、がん関連ハプトグロビンのうち、proHpの出現メカニズムとその生物学的機能が示された。

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