リンゴの果肉褐変性に関する包括的形質解析による遺伝要因の研究

概要

リンゴは、世界の生産量が果樹で第3位であり、経済的に重要な商業作物である。生食のほか加工利用もさかんであるが、果実をカットしたときに生じる果肉褐変は外観を著しく損ない、商品価値を喪失させる重大な負の現象である。青森県で育成されたリンゴ品種‘あおり27’（商標登録名「千雪」）は、すり下ろし5日後も果肉が褐変しない希有な非褐変特性から、新たな需要を喚起する品種として期待されるが、‘あおり27’単品種では周年供給することができない。交配育種における非褐変性品種の育成例は極めて少なく、収穫期の異なる新たな非褐変性品種を育成するためには、原因遺伝子領域の解明とDNAマーカーによる選抜育種が不可欠である。そこで本研究では、果肉褐変性の原因遺伝子領域及びその遺伝様式を明らかにするために、‘あおり27’やその後代、祖先品種及び多様な遺伝資源を対象とした遺伝解析を行い、マーカー選抜による非褐変性品種開発に資する知見を獲得した。