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大学・研究所にある論文を検索できる 「苔類ゼニゴケにおけるデータベース整備及びそれを活用した植物特異的なメチル基転移酵素ファミリー遺伝子の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

苔類ゼニゴケにおけるデータベース整備及びそれを活用した植物特異的なメチル基転移酵素ファミリー遺伝子の解析

川村, 昇吾 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24945

2023.09.25

概要

(続紙 1 )
京都大学
論文題目

博士(生命科学)

氏名

川村

昇吾

苔類ゼニゴケにおけるデータベース整備及びそれを活用した植物特異的な
メチル基転移酵素ファミリー遺伝子の解析

(論文内容の要旨)
維管束植物と姉妹群を形成するコケ植物は、陸上植物における遺伝子の多様性や保存性
の 研 究 に お い て 重 要 な 位 置 を 占 め て い る 。苔 類 ゼ ニ ゴ ケ は 、ゲ ノ ム 解 読 に よ っ て 、制 御 遺
伝子の冗長性が低く、一方で多様な代謝遺伝子を保持していることが明らかにされた。
様々な分子生物学的実験基盤が整備されており、植物の進化や発生の研究で重要なモデ
ル 植 物 と し て 利 用 さ れ て い る 。 一 方 で 、 RNA Sequencing (RNAseq)デ ー タ を 含 め て 多 様 な
公開データが蓄積され、これらを活用したデータ駆動による研究の推進と、実際の植物
における実験に基づく機能解析をシームレスに行える基盤を整備 することが課題となっ
て い た 。 本 論 文 で は 、ゼ ニ ゴ ケ の 情 報 科 学 的 実 験 基 盤 の 整 備 を 行 っ た 。RNA Seq 法 は 、網
羅 性 と 高 い 感 度 か ら 遺 伝 子 発 現 解 析 に 多 数 利 用 さ れ 、 そ の デ ー タ は 、 Sequence Read
Archiveに 蓄 積 さ れ て い る 。 デ ー タ の 再 解 析 に よ っ て 多 く の 知 見 が 得 ら れ る と 期 待 さ れ る
が、実験生物学者がこれらのデータを解析することは容易ではな く、各モデル生物には
その利用を簡便にするための二次データベースが数多く存在する。そこで、ゼニゴケに
お い て 、 公 開 デ ー タ の 可 視 化 ・ 解 析 が 可 能 な Web ベ ー ス の デ ー タ ベ ー ス MarpolBase
Expression (MBEX)を 開 発 し た 。MBEXで は 、発 現 量 デ ー タ の 可 視 化 、共 発 現 解 析 、発 現 変
動 遺 伝 子 の 検 出 、機 能 エ ン リ ッ チ メ ン ト 解 析 を 行 う こ と が で き る 。MBEXを 用 い て 、苔 類
特異的な細胞小器官である油体を持ち、多様な二次代謝産物の生合成を行う油体細胞を
対象に解析を行った。油体細胞の二次代謝の生合成経路の解析を行ったところ、既知の
代謝遺伝子を同定できた。さらに、油体細胞の二次代謝に関わるテルペノイド生合成遺
伝 子 群 を 推 定 し た 。以 上 の 結 果 か ら 、MBEXは ゼ ニ ゴ ケ の 遺 伝 子 発 現 解 析 に 有 用 な ツ ー ル
で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。次 に 、構 築 し た デ ー タ ベ ー ス の 情 報 を 活 用 し て 、低 分 子 化 合 物
の メ チ ル 基 転 移 酵 素 (MT)で あ る Salicylic Acid MT 、 Benzoic Acid MT and Theobromine MT
(SABATH)フ ァ ミ リ ー の 解 析 を 行 っ た 。植 物 は 、環 境 応 答 や 成 長 調 節 の た め に 植 物 ホ ル モ
ン を は じ め と し た 低 分 子 化 合 物 を 利 用 し た シ グ ナ ル 伝 達 を 行 う 。 ジ ベ レ リ ン (GA) は 、 被
子植物において様々な生理活性を示す重要な植物ホルモンである。一方で、コケ植物を
用 い た 研 究 に よ っ て 、GAは 進 化 的 に 多 様 な 化 合 物 や シ グ ナ ル 伝 達 経 路 を 持 つ こ と が 近 年
明 ら か に さ れ つ つ あ り 、 ゼ ニ ゴ ケ で は 被 子 植 物 と は 異 な る 活 性 化 合 物 (GA M p )と シ グ ナ ル
伝 達 経 路 を 持 つ こ と が 示 唆 さ れ て い る 。系 統 解 析 の 結 果 、SABATHフ ァ ミ リ ー は そ れ ぞ れ
の系統内で多様化し、種にとって重要な化合物のメチル化活性を獲得していることが示
唆 さ れ た 。さ ら に 、ゼ ニ ゴ ケ の SABATHフ ァ ミ リ ー 遺 伝 子 の 1 つ で あ る MpSABATH2 の 機 能
解 析 を 行 っ た 。MpSABATH2 の 変 異 体 (Mpsabath2)は 、栄 養 成 長 と 無 性 生 殖 の 抑 制 、非 誘 導
条 件 下 に お け る 生 殖 器 官 形 成 が 観 察 さ れ た 。 こ れ ら の 表 現 型 は 、 GA初 発 生 合 成 経 路 の 変
異 に よ っ て 部 分 的 に 抑 圧 さ れ た 。 こ の こ と か ら Mpsabath2 の 表 現 型 は GA M p の 蓄 積 に よ る
も の で あ る こ と 、 ゼ ニ ゴ ケ で は GA M p の 蓄 積 に よ り 生 殖 器 官 形 成 が 引 き 起 こ さ れ る こ と が
示 唆 さ れ た 。本 研 究 に よ っ て 苔 類 で 多 様 化 し た SABATHフ ァ ミ リ ー 遺 伝 子 が GA M p の メ チ ル
化 能 を 獲 得 す る こ と で 、ゼ ニ ゴ ケ の 正 常 な 発 達 と 発 生 を 制 御 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。
本 研 究 で は 、 ゼ ニ ゴ ケ の 公 開 RNAseq デ ー タ を 用 い た 情 報 科 学 的 基 盤 で あ る MBEX を 開
発 し た 。そ の 適 用 例 と し て 、油 体 を 対 象 と し て 解 析 を 行 い 、二 次 代 謝 生 合 成 経 路 遺 伝 子 の
候 補 を 同 定 し た 。 さ ら に 、 整 備 し た 情 報 基 盤 を 活 用 し な が ら 、 GA M p の メ チ ル 化 を 制 御 す
る SABATHフ ァ ミ リ ー が ゼ ニ ゴ ケ の 正 常 な 発 達 と 発 生 に 必 要 な こ と を 明 ら か に し た 。本 研
究で整備された情報科学的解析基盤を用いることで、ゼニゴケを用いた進化的、発生学
的な研究が加速し、陸上植物の進化と発生のさらなる理解へとつながることが期待され
る。

(続紙 2 )
(論文審査の結果の要旨)
コケ植物苔類ゼニゴケは、遺伝子冗長性の低さ、進化的位置づけ、および分子
遺 伝 学 的 実 験 基 盤 の 整 備 な ど を 背 景 と し て 、近 年 モ デ ル 生 物 と し て の 利 用 が 盛 ん
に行われている。本学位論文の第一章では、公開データベースの登録された
RNAseqデ ー タ に 基 づ く ゼ ニ ゴ ケ の 遺 伝 子 発 現 解 析 の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム MBEX を
整 備 し 、そ の 有 効 性 の 検 証 を 行 な っ た 。MBEXに は 公 開 デ ー タ の 可 視 化 と 解 析 機
能 が 備 わ り 、実 験 生 物 学 者 が 既 存 の デ ー タ を 容 易 に 再 解 析 す る 環 境 が 実 現 し て い
る 。具 体 的 に は 、時 空 間 的 発 現 量 デ ー タ の 可 視 化 と 比 較 、遺 伝 子 共 発 現 解 析 、発
現 変 動 遺 伝 子 の 検 出 、機 能 エ ン リ ッ チ メ ン ト 解 析 が 提 供 さ れ て い る 。ま た 、こ の
解 析 の 有 効 性 を 油 体 細 胞 の 遺 伝 子 発 現 解 析 を 例 に 検 証 し 、油 体 細 胞 特 異 的 な 二 次
代 謝 経 路 遺 伝 子 が 検 出 さ れ る こ と を 示 し て い る 。さ ら に 、テ ル ペ ン 代 謝 に 関 わ る
新 た な 関 連 遺 伝 子 の 推 定 も 行 い 、MBEX の 有 効 性 を 示 す こ と に 成 功 し て い る 。こ
の過程では、遺伝子コード番号のみが付与された遺伝子の遺伝子名の登録、
RNAseqデ ー タ の 公 開 デ ー タ ベ ー ス 登 録 の た め の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 整 備 と い っ た
地 道 な 作 業 も 行 っ て お り 、成 果 の 背 後 に あ る 申 請 者 の 工 夫 の う え に 成 果 が 得 ら れ
た こ と も 評 価 で き る 。こ の デ ー タ ベ ー ス は 、研 究 者 コ ミ ュ ニ テ ィ ー に 大 き な 便 宜
を提供し、ゼニゴケをモデル生物として扱う研究を加速することが期待できる。
本 論 文 の 第 二 章 で は 、構 築 し た 発 現 デ ー タ ベ ー ス の 解 析 か ら 注 目 し た 低 分 子 化
合 物 へ の メ チ ル 基 転 移 酵 素( SABATH )遺 伝 子 の 解 析 を 進 め た 。分 子 系 統 解 析 に
よ り 、SABATH 遺 伝 子 が 陸 上 植 物 進 化 の 基 部 で コ ケ 植 物 型 と 維 管 束 植 物 型 に 分 岐
し 、そ れ ぞ れ の ク レ ー ド で 多 様 化 す る と い う 独 自 の 進 化 を す る こ と を 示 し た 。機
能 欠 損 変 異 体 が 強 い 表 現 型 を 示 す Mp SABATH2 遺 伝 子 に 着 目 し 解 析 を 進 め た 。得
ら れ た 変 異 表 現 型 を 遺 伝 子 発 現 、面 積 や 成 長 方 向 、ク ロ ロ フ ィ ル や デ ン プ ン 蓄 積
と い っ た デ ー タ で 定 量 的 に 示 し た 。さ ら に RNAseq法 を 利 用 し て Mp sabath2 に お
け る 網 羅 的 な 遺 伝 子 発 現 解 析 を 進 め 、機 能 推 定 を 行 な っ た 。さ ら に 、表 現 型 か ら
MpSABATH2が ゼ ニ ゴ ケ の ジ ベ レ リ ン 様 化 合 物 を 基 質 と す る 仮 説 を 示 し 、生 合 成
酵 素 遺 伝 子 変 異 や 生 合 成 酵 素 阻 害 剤 に よ る Mp sabath2 表 現 型 の 抑 圧 お よ び 中 間
化 合 物 に よ る 抑 圧 表 現 型 の 復 帰 な ど で 検 証 し た 。最 終 的 な 結 論 を 得 る に は 生 化 学
的 解 析 が 必 須 で あ る が 、機 能 推 定 と 遺 伝 学 的 検 証 を 論 理 的 に 的 確 に 進 め た 点 は 評
価できる。
本論文では、情報科学的知識を背景としてゼニゴケの遺伝子発現解析の基盤と
な る MBEX を 開 発 し た こ と 、そ れ を 活 用 し つ つ 分 子 遺 伝 学 的 に メ チ ル 基 転 移 酵 素
が関わるゼニゴケの発生分化に対する低分子化合物制御が存在することを見出
し た こ と と い っ た 成 果 が 明 確 に 示 さ れ て い る 。さ ら に 情 報 科 学 的 解 析 と 分 子 遺 伝
学的解析を合わせて実施した点は高く評価できる。
以上のように、本論文は生命科学に関する高度で幅広い学識、大規模発現デー
タ を 用 い た 情 報 解 析 能 力 、植 物 科 学 分 野 に お け る 優 れ た 研 究 能 力 、そ し て 生 命 科
学 の 理 解・発 展 に 寄 与 す る 新 し い 発 見 も し く は 概 念 等 が 示 さ れ て お り 、論 理 的 か
つ 一 貫 性 を 持 っ て 記 述 さ れ て い る 。よ っ て 博 士( 生 命 科 学 )の 学 位 論 文 と し て 価
値 あ る も の と 認 め た 。更 に 、令 和 5 年 8 月 9 日 論 文 内 容 と そ れ に 関 連 し た 口 頭 試
問を行った結果、合格と認めた。
論文内容の要旨及び審査の結果の要旨は、本学 学術情報リポジトリに掲載し、公表と
する。特許申請、雑誌掲載等の関係により、学位授与後即日公表することに支障がある
場 合 は 、以 下 に 公 表 可 能 と す る 日 付 を 記 入 す る こ と 。
( た だ し 、学 位 規 則 第 8 条 の 規 定 に
よ り 、 猶 予 期 間 は 学 位 授 与 日 か ら 3 ヶ 月 以 内 を 記 入 す る こ と 。 ...

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