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大学・研究所にある論文を検索できる 「慢性血栓塞栓性肺高血圧症と肺動脈性肺高血圧症におけるDual-Energy CTによる微小循環障害の評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

慢性血栓塞栓性肺高血圧症と肺動脈性肺高血圧症におけるDual-Energy CTによる微小循環障害の評価

三和, 圭介 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Microvasculopathy Evaluated by Dual-Energy
Computed Tomography in Patients with Chronic
Thromboembolic Pulmonary Hypertension and
Pulmonary Arterial Hypertension

三和, 圭介
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8596号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482344
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Microvasculopathy Evaluated by Dual-Energy Computed
Tomography in Patients with Chronic Thromboembolic
Pulmonary Hypertension and Pulmonary Arterial
Hypertension

慢性血栓塞栓性肺高血圧症と肺動脈性肺高血圧症における
Dual-Energy CT による微小循環障害の評価

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
循環器内科学
(指導教員:平田
三和

健一教授)

圭介

【背景】
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH: chronic thromboembolic pulmonary hypertension)
は、器質化した血栓により肺動脈が閉塞・狭窄により、肺動脈圧や肺血管抵抗(PVR:
pulmonary vascular resistance)が上昇し、最終的に右心不全に至る疾患である。近年の研究
により、肺動脈内の器質化血栓による狭窄や閉塞のみならず、肺動脈性肺高血圧症(PAH:
pulmonary arterial hypertension)と同様に末梢の微小循環障害の合併も関与していること
が提唱されているが、病理所見での報告にとどまり実態は明らかではない。
CTEPH における微小循環障害を確実に検出する方法は未だ確立されていないが、以前よ
り肺動脈 DSA 造影の毛細血管相での胸膜下の灌流低下(PSP: Poor subpleural perfusion)の
所見が CTEPH の微小循環障害を反映すると報告されてきた。また近年使用可能となった
Dual-energy CT(DE-CT)は、低管電圧と高管電圧の X 線を用いた撮像を行うことによっ
て、肺動脈領域においては高感度ヨードマップを作成しうる。その結果、局所における肺潅
流血液量の定量化(Lung PBV)、さらに肺野全体でカラースケールを用いることによって
の定性的な評価も行うことが可能となっている。既に先行研究にて、PSP で表現される
CTEPH の微小循環障害の検出率は、肺動脈造影毛細血管相と DE-CT において同等とされ
ている。
CTEPH における微小循環障害の病理学的変化は、PAH の微小血管病変である内膜線維
筋増殖や叢状病変などと同一とされてきた。しかし肺動脈造影毛細血管相では CTEPH の
約半数の症例では微小循環障害を示す PSP を呈するものの、PAH では PSP を認めること
は非常に稀とされている。
この差異を基に、本研究の目的は、臨床指標と DE-CT 所見から CTEPH における微小循
環障害の臨床的特徴を明らかにすることである。

【方法】
対象患者
2013 年 7 月から 2020 年 4 月までに当院で診断時に DE-CT も施行された PAH 患者、お
よび手術適応外 CTEPH 患者でバルーン肺動脈形成術(BPA: balloon pulmonary angioplasty)
の適応とされた患者を対象とした。PAH および CTEPH の診断時のルーチン評価として
DE-CT 撮像、右心カテーテル・肺動脈造影・呼吸機能検査・動脈血ガス検査、自覚症状、
6 分間歩行距離、および心肺運動負荷試験を施行した。また、BPA 治療が終了した CTEPH
患者においては BPA 後 3 か月後のフォローアップ検査にて同様の評価を行った。
DE-CT 撮影プロトコル
DE-CT は、電圧 150 kV の管球および電圧 80kV の管球を用いて、経末梢静脈より造影

剤注入し肺野の撮影を行った。専用ソフトウェア(syngo CT Workplace, VA44A (Siemens
AG, Erlangen, Germany)を使用し、高電圧画像と低電圧画像を融合することによって合成
画像を作成し、5mm 間隔毎にヨードマップでの色分けを行った。また、このソフトウェア
を用いて肺灌流血液量の定量スコア(Lung PBV)は自動計算で算出された。
DE-CT を使用した胸膜下灌流の評価
既に報告されている定義と同様に胸膜下領域を水平断で外側胸膜から 1.5 cm 以下と定義
し、DE-CT で評価を行った。DE-CT での評価は、5mm スライス毎に、肺野灌流パターン
に応じて以下の 3 つに分類した(①正常灌流、②楔形の血流欠損、③胸膜下の灌流低下
[PSP])。②の楔形状血流欠損については、支配血管がより中枢側の器質化血栓による閉塞
が原因であるため微小循環障害の評価は不適切と考え、その区域を除外して検討した。既
報の定義と同様に、すべての区域で胸膜下の灌流低下を認める場合に、微小循環障害あり
と判断した。
BPA の手技内容
6Fr のガイディングシースを用いて、右大腿静脈から肺動脈にアプローチした。6Fr のガ
イディングカテーテルで肺動脈にエンゲージした。0.014 インチガイドワイヤーを標的血管
に通過させ、血管径と血行動態の重症度に応じて 2.0-9.0mm 口径のバルーンカテーテルで
病変を拡張させた。BPA のエンドポイントは、血行動態の正常化に関わらず、到達可能な
すべての病変を治療し終えるまで施行した。

【結果】
PAH および CTEPH 症例の患者背景
PAH 患者 23 例、CTEPH 患者 113 例の検討を行った。また CTEPH 患者のうち、BPA
が終了し約 3 か月後にフォローアップ検査できた症例は 86 例であった。PAH 患者と
CTEPH 患者の診断時(ベースライン時)の血行動態や患者特性は特に有意差を認めなか
った。
PAH 患者と CTEPH 患者における PSP の評価
PSP は CTEPH 患者では 113 例中 58 例(51%)で観察されたが、PAH 患者では 23 例
中 1 例(4%)であった(p<0.001)
。CTEPH 患者のうち PSP を認めた 58 例を「灌流不
良群」に、PSP を認めなかった 55 例を「灌流正常群」に分類した。
肺灌流血液量(Lung PBV)と肺血管抵抗(PVR)の相関関係
PAH 患者、CTEPH 患者の潅流不良群、潅流正常群のそれぞれの Lung PBV と PVR の

相関関係を検討した結果、CTEPH 潅流正常群では PVR が高いほど Lung PBV が低下する
という強い非線形逆相関を認めたが、PAH 患者および CTEPH 潅流不良群においては
Lung PBV と PVR に有意な相関関係は認められなかった。つまり、末梢灌流正常の
CTEPH では血栓による肺血流の低下と PVR 上昇は強く関連するが、PAH や末梢灌流不
良の CTEPH では、末梢の微小循環障害が PVR 上昇に関係していると考えられる。
CTEPH 患者の灌流正常群と灌流不良群における患者背景
潅流正常群の PVR は 463 ± 284 dynes-sec/cm5 に対し、灌流不良群では 768 ± 445
dynes-sec/cm5 と高かった(p<0.001)
。肺拡散能(DLCO/VA: diffusing capacity for
carbon monoxide divided by the alveolar volume)は肺の微小循環障害を反映すると言われ
ているが、灌流不良群で低下していた(75.9 ± 15.7% vs. 60.4 ± 16.8%, p<0.001)

灌流正常群と灌流不良群の CTEPH 患者に対して施行した BPA 後の変化
CTEPH 患者に対して BPA を施行し 3 か月後に血行動態評価した 86 例(灌流正常群
48 例、灌流不良群 38 例)の結果、PVR や平均肺動脈圧といった血行動態の指標は両群と
もほぼ正常まで改善を得られた。しかし、灌流不良群では十分な BPA を行った後でも、
灌流正常群に比べて、心肺運動負荷試験での VE/VCO2 スロープ(換気血流不均衡を反映
するとされる)は高値であり、DLCO/VA(微小循環障害を反映するとされる)は低値で
あった。

【考察】
本研究では、CTEPH 患者の半数以上で DE-CT 上の PSP が観察されたが、PAH 患者で
はほぼ観察されなかった。CTEPH 患者の生検や剖検での病理所見の報告では、肺細動脈レ
ベルでの内膜線維筋増殖や叢状病変といった PAH と同様の所見に加え、びまん性の微小血
栓も報告されている。DE-CT 上の PSP 所見は CTEPH に特有な画像所見の一つであると
いえるが、PSP はびまん性の末梢血流低下を反映していると考えられる。つまり PSP は
PAH とは異なる CTEPH の微小循環障害(びまん性微小血栓閉塞による微小循環障害)の
機序を示唆している可能性がある。
しかし CTEPH における PSP の臨床的影響は未だ不明であった。本研究では、肺灌流血
液量(Lung PBV)は、PSP を有さない CTEPH 潅流正常群では PVR と強い逆相関を示し
たが、PSP を有する CTEPH 潅流不良群では PVR の間に有意な相関はなかった。これによ
り、近位部の血栓性閉塞・狭窄だけではなく、PSP で表される末梢の微小血栓による循環
障害も CTEPH の血行動態に関与しうることが示唆された。また、PSP 有する CTEPH 潅
流不良群において BPA でアクセス可能な病変をすべて治療した後も、換気血流不均衡を反
映する VE/VCO2 スロープは高値を維持し、微小循環障害を示すとされている DLCO/VA

は低値の状態であった。
BPA では末梢の微小血栓にアクセスできず、治療できないため PSP
を有する患者では微小循環障害は残存すると考えられる。
しかしながら本研究では、PSP の有無にかかわらず、十分な BPA 治療後においては安静
時の血行動態が有意に改善することも示した。過去の臨床・基礎研究より、肺血管床の 2/3
が障害された時点より安静時の肺動脈圧が上昇することは広く知られている。PSP を有す
る患者では微小循環障害は残存すると考えられるが、BPA でアクセス可能な近位部の血流
を改善させることにより、肺血管床は 1/3 以上に改善し安静時の肺動脈圧は低下するもの
と考察する。以上より手術適応外の CTEPH においては、PSP で表現される微小血栓によ
る循環障害の有無に関わらず、BPA が治療の第一選択であると考えられる。
本研究の Limitation
本研究の主な Limitation は、単施設後ろ向き観察研究であることである。また、CTEPH
の微小循環障害の有無に関して、倫理的制約から剖検や生検による病理所見での検証がで
きていない。

【結論】
手術適応外 CTEPH における DE-CT 上の PSP 所見は CTEPH 特有の画像所見である。こ
れらは PAH とは異なる機序の微小循環障害を表しており、びまん性の微小血栓を反映し
ているものと思われる。

神戸大学大学院医学(
系)
研究科(博士課程)
言合釘文こ苓肝 予臣 クつ糸吉 長艮 ク> 窒巨 旨示
甲第



受 付 番号

3261 号



三和 圭 介

MicrovasculopathyEvaluatedbyDualEne
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論文題目

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慢性血栓塞栓性肺 高 血 圧 症 と 肺 動 脈性肺高血圧症における

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・ EnergyCTによる微小循環障害の評価


審査委員

Examiner



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副 査

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副 査

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卓 道/

記⑤定翠

4L 聾



(要旨は 1, 000字∼ 2, 000字程度)


背景 】
慢性血栓塞栓性肺高血圧症

(CTEPH: c
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) は、器質化した血栓により肺動脈が閉塞・狭窄により、肺動脈圧や肺血管
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) が上昇し 、最終的に右心不全に至る疾患で
抵抗 (
ある 。 近年の研究により、肺動脈内の器質化血栓による狭窄や閉塞のみならず、肺動脈性

PAH:pulmonarya
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) と同様に末梢の微小循環障害の合
肺高血圧症 (
併も関与していることが提唱されているが、病理所見での報告にとどまり実態は明らかで

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は な い。 以 前 よ り 肺 動 脈 DSA 造 影 の 毛 細 血 管 相 で の 胸 膜 下 の 灌 流 低 下 (
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) の所見が CTEPHの微小循環障害を反映すると報告されてきた。
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yCT (DECT) の高感度ヨードマップによって局
また近年使用可能となった D
所における肺潅流血液量の定量化 (
LungPBV
)、定性的な評価も行うことが可能となって
いる 。既に先行研究にて、 PSPで表現される CTEPHの微小循環障害の検出率は、肺動脈
造影毛細血管相と DE-CTにおいて同等とされている 。CTEPHにおける微小循環障害の病
理学的変化 は、PAHの微小血管病変である内膜線維筋増殖や叢状病変などと同一 とされて
きた。 しか し肺動脈造影毛細血管相では CTEPHの約半数の症例では微小循環障害を示す
PSPを呈するものの 、PAHでは PSPを認めることは非常に稀とされている 。
この差異を基に 、本研究の目的は、臨床指標と DE-CT所見から CTEPHにおける微小循
環障害の臨床的特徴を明らかにすることである 。

方法】
対象患者

2013年 7月から 2020年 4月までに当院で診断時に DE-CTも施行された PAH患者、お
BPA: b
a
l
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o
o
n pulmonary
よ び 手 術 適 応 外 CTEPH 患 者 で バ ル ー ン 肺 動 脈 形 成 術 (
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) の適応とされた患者を対象とした。
DECT撮影プロ トコ)レ
DE-CTは、電圧 150kVの管球および電圧 80kVの管球を用いて 、経末梢静脈より造影剤
注入し肺野の撮影を行った。

DE-CTを使用した胸膜下灌流の評価
既に報告されている定義と同様に胸膜下領域を水平断で外側胸膜から 1
.
5cm以下と定義

CTでの評価は、 5
m mスライス毎に、肺野灌流パターン
し、DE-CTで評価を行った。DE
に応じて以下の 3 つに分類した(①正常灌流、②楔形の血流欠損、③胸膜下の灌流低下

[
P
S
P
])。②の楔形状血流欠損については、支配血管がより中枢側の器質化血栓による閉塞
が原因であるため微小循環障害の評価は不適切と考え 、その区域を除外して検酎した。

BPAの手技内容
6Frのガイディングシースを用いて、右大腿静脈から肺動脈にアプローチ した
。 6F
rのガ
.
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1
4イ ンチガイドワイヤーを標的血
イディングカテーテルで肺動脈にエンゲージした。 0
管に通過させ、血管径と血行動態の重症度に応じて 2
.0-9.0mm口径のバルーンカテーテル
で病変を拡張させた。BPAのエンドポイントは、血行動態の正常化に関わらず、到達可能
なすべての病変を治療し終えるまで施行した。

結 果】

PAHおよび CTEPH症例の患者背景
PAH患者 23例
、 CTEPH患者 1
1
3例の検討を行った。また CTEPH患者のうち、 BPAが
終了し約 3か月後にフォローアップ検査できた症例は 86例であった。PAH患者と CTEPH
患者の診断時(ベースライン時)の血行動態や患者特性は特に有意差を認めなかった。

PAH患者と CTEPH患者における PSPの評価
PSPは CTEPH患者では 1
1
3例中 58例 (
51%)で観察されたが、 PAH患者では 23例中
1例 (4%)であった (
p<0
.
0
0
1)
。 CTEPH患者の うち PSPを認めた 5
8例を「灌流不良
5例を 「
灌流正常群」に分類した。
群」に、 PSPを認めなかった 5
肺灌流血液量(
LungPBV)と肺血広抵抗(PVR)の相関関係
PAH患者、 CTEPH患者の潅流不良群、潅流正常群のそれぞれの LungPBVと PVRの
CTEPH潅流正常群では PVRが高いほど LungPBVが低下するという強い非線形逆相関
gPBVと PVRに有意な
を認めたが、 PAH患者および CTEPH潅流不良群においては Lun
相関関係は認められなかった。つま り、末梢灌流正常の CTEPHでは血栓による肺血流の
低下と PVR上昇は強く関連するが、 PAHや末梢灌流不良の CTEPHでは 、末梢の微小循
環障害が PVR上昇に関係していると考えられる 。
CTEPH患者の灌流正常群と灌流不 良群における患者背景
潅流正常群の PVRは 4
63 土 284dynes
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m5に対し、灌流不良群では 768 土 445
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るが、灌流不良群で低下していた (
i流正常群 と灌流不良群の CTEPH患者に対 して施行し た BPA後の変化
CTEPH患者 に対して BPAを施行し 3か月後に血行動態評価した 86例(灌流正常群 48
例、灌流不良群 3
8例)の結果、 PVRや平均肺動脈圧といった血行動態の指標は両群とも
ほぼ正常まで改善を得られた。しか し、灌流不良群では十分な BPAを行った後でも、灌流
正常群に比べて、心肺運動負荷試験での VENC02スロープ(換気血流不均衡を反映する
とされる)は高値であり、 DLCONA(微小循環障害を反映するとされる)は低値であった。


考察 】
本研究では 、CTEPH患者の半数以上で DE-CT上の PSPが観察されたが、 PAH患者では
ほぼ観察されなかった。 CTEPH患者の生検や剖検での病理所見の報告では、肺細動脈レ
ベルでの内膜線維筋増殖や叢状病変といった PAH と同様の所見に加え 、びまん性の微小
血栓も報告されている 。 DE-CT上の PSP所見は CTEPHに特有な画像所見の一つである
といえるが、 PSP はびまん性の末梢血流低下を反映していると考えられる 。つまり PSP
は PAHとは異なる CTEPHの微小循環障害(びまん性微小血栓閉塞による微小循環障害)
の機序を示唆して い る可能性がある。しかし CTEPHにおける PSPの臨床的影響は未だ不
明であった。本研究では 、肺灌流血液量 (
LungPBV) は、PSPを有さない CTEPH潅流
正常群では PVRと強 い逆相関を示したが、 PSPを有する CTEPH潅流不良群では PVRの
間に有意な相関はなかった。 これにより、近位部の血栓性閉塞 ・狭窄だけではなく、 PSP
で表される末梢の微小血栓による循環障害も CTEPHの血行動態に関与しうることが示唆
された。 また 、PSP有する CTEPH潅流不良群において BPAでアクセス可能な病変をす
べて治療した後も 、換気血流不均衡を反映する VENC02スロープは高値を維持し、微小
循環障害を示すとされている DLCONAは低値の状態であった。 BPAでは末梢の微小血栓
にアクセスできず、治療できないため PSPを有する患者では微小循環障害は残存すると考
えられる 。
しかしながら本研究では 、PSPの有無にかかわらず 、十分な BPA治療後においては安
静時の血行動態が有意に改善することも示した。PSPを有する患者では微小循環障害は残
存すると考えられるが 、BPAでアクセス可能な近位部の血流を改善させることにより、肺
/
3以上に改善し安静時の肺動脈圧は低下するものと考察する。以上より手術適
血管床は 1
応外の CTEPHにお いては 、
PSPで表現される微小血栓による循環障害の有無に関わらず、
BPAが治療の第ー選択であると考えられる 。
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本研究の L
本研究の主な L
i
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o
nは、単施設後ろ向き観察研究であることである 。また 、CTEPH
の微小循環障害の有無に関して、倫理的制約から剖検や生検による病理所見での検証がで
きていない。

結論 ]
手術適応外 CTEPHにおける DE-CT上の PSP所見は CTEPH特有の画像所見である 。こ
れらは PAH とは異なる機序の微小循環障害を表しており、びまん性の微小血栓を反映し
ているものと思われる。
本研究は、 CTEPHにおける微小循環障害について、その臨床的特徴を研究したのもので
あるが、従来ほとんど行われなかった手術適応外 CTEPHにお ける PAHとは異なる機序
の微小循環障害について重要な知見を得たものとして価値ある集積であると認める 。よっ
て, 本研究者は, 博士(医学)の学位を得る資格があると認める 。

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