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大学・研究所にある論文を検索できる 「クライオバルーンとホットバルーンを用いた肺静脈隔離術後の治療創の特徴:遅延造影MRIを用いた検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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クライオバルーンとホットバルーンを用いた肺静脈隔離術後の治療創の特徴:遅延造影MRIを用いた検討

Akita, Tomomi 神戸大学

2021.03.25

概要

[背景]
 わが国における心房細動声者数は人口の髙齢化に伴い増加の一途をたどっている。薬剤抵抗性の発作性心房細動に対する肺静脈隔離術は確立された治療法であり、肺静脈-左心房間を電気的に隔離することで肺静脈からのトリガーを強力に抑制する。従来のカテーテルを用いたpoint-by-pointで行う肺静脈隔離術に加え、2014年にバルーン型のカテーテル(クライオバルーン)が導入された。バルーンを肺静脈に押し当て凍結させることによりバルーンと肺静脈を圧着し一括隔離できるようになった。手技が簡便化された一方で、バルーンサイズは単一であるため大きな肺静脈に対しては不十分な治療創形成が危惧される。2016年に導入された髙周波を用いたバルーン型カテーテル(ホットバルーン)は、クライオバルーンと異なりバルンコンプライアンスは高く、バルーンサイズが可変式であるという特徴を有する。そのため、比較的大きな肺静脈に対しても対応可能となった。バルーンカテーテルを用いた肺静脈隔離術は従来法に比してより簡便に行える一方で、約20%の慢性期再発や肺静脈狭窄などの合併症の報告も散見される。心房細動の再発は、肺静脈-左心房間の再伝導が主な原因と考えられており、不十分な治療創形成に起因する。2種類の異なる特徴を有するバルーン型カテーテルにより形成される治療創の特徴については十分な検討がなされていない。
 今回、我々は遅延造影MRIを用いて治療創を視覚化しその特徴を検討する。
 クライオバルーン・ホットバルーンの適切な選択、より安荃かつ有効な使用法の確立を目的とし本研究を立案した。

[方法]
 神戸大学医学部附属病院と姫路循環器病センターで肺静脈隔離術施行後に遅延造影MRIを施行した連続80名(クライオバルーン群40名、ホットバルーン群40名)を研究に登録した。クライオバルーン群は、バルーンが肺静脈に圧着し閉塞している事を造影剤で確認し、最大180秒冷却した。隔離されていない場合は、従来のカテーテルで追加通電(touch up)を行った。ホットバルーン群も同様に造影剤を用いて肺静脈の閉塞を確認し最大210秒通電した。両群ともリング状カテーテルを用いて肺静脈-左心房間の電気的隔離を確認した。アブレーション1-3ヶ月後に心臓MRIを施行し治療創の視覚化を行った。肺静脈-左房の形態を造影MRAで取得し、引き続いて肺静脈-左心房壁に対する遅延造影MRIを心電図同期、呼吸同期下で取得した(repetition time/echo time=4.7ms/1.5ms, voxel size 1.43×1.43×2.40mm(再構築0.63×0.63×1.2mm), flip angle=15, SENSE=1.8, 80reference line)。3Dワークステーションを用いて三次元再構築し、遅延造影の信号強度により色付けした。遅延造影のない健常心筋部位での信号強度を平均値及び標準偏差として算出し、2SD以上の信号強度を有する部位を遅延造影部位と定義して色付けをした(2SD以上:緑色、3SD-4SD:黄色、4SD以上:赤色)。治療創と肺静脈との位置関係を評価するために、遅延造影MRIと造影MRAと統合した。肺静脈周囲の遅延造影部位を肺静脈隔離術による治療創と定義した。肺静脈周囲の領域を、天井部、前壁上部、前壁carina、前壁下部、底部、後壁下部、後壁carina、後壁上部に8分割して、各領域の治療創の最大幅(醐)ならびに間隙(Gap)の数と発現割合(%)を算出した。Gapは4mm以上の遅延造影途絶部位と定義した。治療創の分布と肺静脈入口部の位置関係を評価するために、肺静脈入口部から治療創遠位端・近位端までの距離(臓)を計測し、治療創遠位端・近位端が肺静脈内入口部よりも遠位(肺静脈内)に位置する場合は、負の値で表現した。肺静脈の大きさを評価するために術前の造影MRIから肺静脈入口部断面積(cm2)を計測した。
 心房細動の再発は肺静脈隔離術後1、3、6、12力月ごとにフォローアップを行い、症状、心電図、ホルター心電図で30秒以上の持続する心房細動と定義した。肺静脈狭窄は、50%以上の狭窄を中等度、70%以上の狭窄を髙度肺静脈狭窄と定義した。

[結果:]
 クライオバルーン・ホットバルーン両群において、年齢性別、左房径、左室駆出率を含む患者背景、肺静脈入口部の断面積に有意差は認めなかった。手技時間は両群に時間差はなかったが、透視時間はクライオバルーン群で有意に短かった(手技時間:169 ± 45min vs 165 ± 47min, P=0.67;透視時間:51 ± 19min vs 67 ± 24min, P<0.001)。治療創の幅は、クライオバルーン群で有意に広かった(7.8 ± 2.0mm vs 4.9 ± 1.0mm, P<0.001)。特に、右上肺静脈周囲(右肺静脈天井部、右肺静脈前襞上部、右肺静脈前壁carina、右肺静脈後壁下部、右肺静脈後壁carina)、右下肺静脈後壁、左上肺静脈後壁(左肺静脈後壁上部、左肺静脈後壁carina)で有意差を認めた。
 肺静脈入口部から治療創近位端までの距離は、クライオバルーン群が有意に長かった(6.9 ± 2.8mm vs 4.9 ± 2.0mm, P=0.001)。肺静脈入口部から治療創遠位端までの距離は、クライオバルーン群が有意に長かったが負の値を示した(-1.5 ± 1.8mm vs -0.2 ± 1.2mm, P<0.001)。クライオバルーン群では肺静脈入口部から治療創遠位端までの距離と肺静脈断面積に負の相関を認めたが、ホットバルーン群では認められなかった(クライオバルーン群:r=-0.273, P=0.007;ホットバルーン群:r=0.040, P=0.635)。
 Gapに関しては、クライオバルーン群で有意に多く(2.9 ± 2.4 vs 1.3 ± 1.4gaps, P=0.001)、特に左肺静脈天井部では有意差を認めた。多変量解析では、左房径と遅延造影MRIで検知されたGap数が再発と関連していたが、心房細動の再発は両群で差は認めなかった(左房径:HR:1.152(1.025-1.296), P=0.018;Gap数:HR:1.357(1.100-1.675), P=0.004;慢性期再発:クライオバルーン群:5[12.5%]vs ボットバルーン群:4[10%], P=0.695)。肺静脈狭窄は、クライオバルーン群で2名、4本の肺静脈に、ホットバルーン群では、4名、6本の肺静脈に認めた。中等度以上の肺静脈狭窄はクライオバルーン群では認めず、ホットバルーン群において5本の肺静脈に認めた。

[考察]
 クライオバルーンによる肺静脈隔離術後の治療創は幅が広い一方で、Gapは多く認めた。治療創は、肺静脈前庭部に加え肺静脈内へも進展しており、その程度は肺静脈の断面積に逆相関していた。ホットバルーンは治療創の幅は狭いがGapは少なく、肺静脈形態の影響は少なかった。
 クライオバルーンとホットバルーンの肺静脈隔離範囲を比較した先行研究では、クライオバルーンはホットバルーンに比べ隔離範囲が広いことが報告されている。隔離範囲は、本研究において肺静脈入口部から治療創近位端までの距離に相当するため先行研究と一致する。また動物実験では、クライオバルーンの均一な冷却伝導速度は全方向へ均一に治療創が形成され、通常120秒から160秒の冷却でバルーン表面から5mmまでの範囲が組織温度は0度以下となり有効な治療創が形成される。大きな断面積を有する肺静脈の場合は、クライオバルーン自体が肺静脈内に位置し、さらに遠位部へも治療創が拡大する事となる。一方、ホットバルーンでは、バルーンを大きくした場合、均一なバルーン表面温度が得られにくく、過度な肺静脈内への治療創形成は回避されたと考えられる。近年、左上肺静脈へのクライオバルーンによる左主気管支内のice形成や、心房気管支瘻の合併が報告されおり、大きな左上肺静脈へのクライオバルーンの適応には細心の注意を払う必要がある。本研究では、肺静脈の断面積と治療創遠位部の肺静脈内への進展は関連を認めており、断面積が3.2cm2の場合は、肺静脈入口部より3mmの肺静脈内への治療創が形成され始める。これらの情報は術前画像から予測可能であり、適切な治療デバイスの選択に有用であると考えられた。
 ホットバルーンはあらゆるサイズと形の肺静脈に適応可能なバルーン特性を有する。これは、ホットバルーン群がクライオバルーン群に比べ肺静脈入口部への圧着が良好であり、Gap数が少なかったことを裏付けている。MRIで同定されたGapの数と心房細動の再発は関連を認めたが、クライオバルーン群はGap数が有意に多いにも関わらず心房細動の再発はホットバルーン群と同等であった。近年、LinhartらはGapの幅が再発に関連する事を報告している。本研究では、左肺静脈天井部のGapは他の領域に比べGap有意に狭かった(4.7 ± 0.7mm vs 7.0 ± 2.1mm, P<0.001)。クライオバルーンアブレーション後に再発を認めた4名のうち3名に左肺静脈天井部のGapを認めていたが、同部位に電気的再伝導を認めたのは1名のみであった。これは、幅の狭いGapは、電気的再伝導に至っていない可能性が示唆された。また、心房細動再発の原因として肺静脈以外のトリガーを考慮する必要がある。肺静脈以外のトリガーの好発部位として肺静脈と左心房の接合部である肺静脈前庭部が注目されている。クライオバルーンの幅の広い治療創は肺静脈隔離に加え肺静脈前庭部へも広く進展するため付加的な治療効果を生んでいると考えられた。
 肺静脈狭窄については、先行研究と同様にホットバルーン群で多く、さらに重症度は高かった。ホットバルーンによる治療創は肺静脈内への進展はまれであるが、肺静脈狭窄を来した例では、肺静脈内に治療創が形成されており、同部位で狭窄を来していた。肺静脈と十分な圧着を得るためにホットバルーンを肺静脈内に深く留置していたことが原因と考えられた。このような中等度以上の肺静脈狭窄を防ぐために、バルーンサイズをより大きくする事、複数回のバルーン治療は避け、従来のカテーテルによるtouch upをより早期に考慮することが重要であると考えられた。

[結論]
クライオバルーンを用いた肺静脈隔離術後の治療創は幅が広く、遠位端は肺静脈内へも進展し、その分布は肺静脈形態に依存する。本研究では、肺静脈形態に応じて適切な治療デバイスを選択することでより安全かつ有効に適切な治療創を形成できる可能性を示した。

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