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大学・研究所にある論文を検索できる 「慢性閉塞性肺疾患を合併した慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術の効果と安全性について」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

慢性閉塞性肺疾患を合併した慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術の効果と安全性について

藤井, 寛之 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Efficacy and safety of balloon pulmonary
angioplasty for patients with chronic
thromboembolic pulmonary hypertension and
comorbid chronic obstructive pulmonary disease

藤井, 寛之
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8512号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482260
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Efficacy and safety of balloon pulmonary angioplasty for patients
with chronic thromboembolic pulmonary hypertension and
comorbid chronic obstructive pulmonary disease

慢性閉塞性肺疾患を合併した慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する
バルーン肺動脈形成術の効果と安全性について

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
循環器内科学
(指導教員:平田 健一教授)
藤井 寛之

【背景】
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、器質化した血栓により肺動脈が慢性的に狭窄、閉塞を
起こし、肺血管抵抗値の上昇、肺高血圧症を呈し、右心不全に至る疾患である。CTEPH に対する
治療法の第一選択は外科的肺動脈内膜摘除術であるが、CTEPH 患者の 40-70%は外科的に到達困
難な病変や併存疾患などのために手術非適応とされている。近年、そのような非手術適応患者に
おいて、バルーン肺動脈形成術(BPA)の有効性と安全性が示されている。一方、慢性閉塞性肺疾
患(COPD)は、気道や肺胞の病変による持続的な呼吸器症状や気流制限を特徴とし、40 歳以上
で 9-10%の有病率と比較的よく見られる疾患である。
CTEPH における COPD 併存率は 10~23%
であったと報告されているが、
CTEPH に対する BPA の有効性と安全性を支持する多くの報告は、
COPD などの肺疾患を伴わない CTEPH を対象としており、COPD などの肺疾患を伴う CTEPH
に対する BPA の有効性と安全性は、未だ不明である。そこで我々は、中等度または重度の COPD
を合併した CTEPH 患者に対する BPA の有効性と安全性を検討した。
【方法】
対象患者と評価項目
神戸大学病院にて BPA が開始となった、2011 年 3 月から 2021 年 6 月までに BPA を施行された
連続症例を対象にした。本研究では国際的な COPD の評価基準である GOLD 分類に従い、COPD
群は1秒率(FEV1(1 秒量)/FVC(努力肺活量)
)<70%、%FEV1(予測 1 秒量に対する比率)
<80%と定義した。結果の曖昧性を回避するため、軽度の COPD 患者(GOLD 分類 Stage I)は
除外した。右心カテーテル検査による血行動態の評価、呼吸機能検査、動脈血ガス分析、6 分間歩
行試験および心肺運動負荷試験を施行し、BPA 前と BPA 終了 3 ヶ月後での評価を行った。ベー
スラインの呼吸機能データがない患者、右心カテーテルによる再評価がない患者は除外した。
BPA の手技内容
6Fr のガイディングシースを用いて、右大腿静脈から肺動脈にアプローチした。6Fr のガイディン
グカテーテルをガイディングシースから肺動脈にエンゲージした。0.014 インチガイドワイヤーを
標的血管に通した。最初は 2.0mm のバルーンカテーテルで病変部を拡張し、その後各患者の血管
径と血行動態の重症度に応じて、2.0-9.0mm の適切なバルーンサイズのカテーテルを選択し、病
変を拡張させた。BPA のエンドポイントは、血行動態の正常化に関わらず、到達可能なすべての
病変を治療し終えるまで施行した。
【結果】
患者背景
合計 149 人の CTEPH 患者が、患者あたり平均 4.0±1.2 回の BPA を施行され、最後の BPA 治療
から約 3 ヶ月後に再評価を行った。軽症の COPD(GOLD ステージ I)患者 16 名は除外した。解
析対象となった 133 名のうち、32 名が COPD 群、101 名が非 COPD 群に分類された。COPD 群

では、24 名(75%)が GOLD ステージⅡ(中等度)、8 名(25%)が GOLD ステージⅢ(重度)
に分類され、GOLD ステージⅣ(最重度)の患者はいなかった。COPD 群では非 COPD 群に比べ
喫煙歴が多く(75% vs. 20%;p<0.001)、6-MWT での歩行距離が短かった(289±86 m vs.
331±103 m;p=0.042)
。COPD 患者の 32 人中 18 人(56%)が吸入気管支拡張薬による治療を
受けており、その他の背景や PH に対する内科的治療は、両群で同様であった。
BPA の有効性と安全性
COPD 群と非 COPD 群ともに血行動態は改善した。平均肺動脈圧は COPD 群で 36.1±9.6 mmHg
から 21.6±5.8 mmHg(p<0.001)
、非 COPD 群で 36.5±10.1 mmHg から 19.3±3.9 mmHg(p<
0.001)に改善した。平均肺動脈圧の変化量は COPD 群で-14.4±10.5 mmHg、非 COPD 群で17.0±10.1 mmHg であり、両群間に有意差は認めなかった(p=0.226)
。 肺血管抵抗値の改善率も
COPD 群で-55.6±29.0%、非 COPD 群で-58.9±21.4%であり、両群間で差は認めず(p=0.495)、
COPD 群でも非 COPD 患者と同様に BPA の効果はしっかり認めた。COPD 患者の呼吸機能に関
する検討では、1 秒率(FEV1/FVC)は有意に改善した(61.8±7.0%から 66.5±10.2%、p=0.021)、
また酸素化も改善した(PaO2:60.9±10.6 mmHg から 69.3±13.6 mmHg、p=0.007)
。また在宅酸
素療法患者は有意に減少した。6 分間歩行距離および心肺運動負荷試験も両群で改善した。
安全性に関する検討では、非侵襲的または侵襲的な人工呼吸管理を必要とする喀血を伴う重度の
肺障害は、COPD 群では 2 回(全治療回数の 1.6%)
,非 COPD 群では 12 回(全治療回数の 3.0%)
であり、重篤な肺損傷の発生率は両群で差は認めなかった(p=0.535)

生存率
追跡期間中央値 37.9 ヶ月(IQR:20.7-72.9)の間に、COPD 患者 32 人中 2 人(6.3%)、非 COPD
患者 101 人中 7 人(6.9%)が死亡した。COPD 群では 2 例とも悪性腫瘍で死亡し、非 COPD 群
では 4 例が悪性腫瘍で、3 例が肺炎、敗血症、重度の大動脈弁狭窄症で死亡した。右心不全や COPD
で死亡した患者はいなかった。COPD 患者の 1 年および 5 年生存率は 100%と 93.5%であり、非
COPD 患者では 98.0%と 93.0%であった(Cox-Mantel log-rank 検定、p=0.734)

COPD 患者における酸素化改善の予測因子
COPD 患者における BPA 後の酸素化の改善に寄与する因子を検討するため、BPA 前後の PaO2
の変化値を従属変数とし、BPA 前の臨床パラメーターを独立変数として多変量解析を行った。そ
の結果、BPA 前の肺活量(%VC)や肺拡散能(%DLCO)が高いほど、BPA 後に酸素化が改善す
ることが示された。しかし、1 秒率(FEV1/FVC)は酸素化の改善とは関係なく、つまり BPA 後
の酸素化の改善と COPD の重症度とは関連を認めなかった。
【考察】
この 10 年の間に、手術適応外 CTEPH に対する BPA の有効性と安全性が多く報告されており、

BPA は CTEPH 治療の重要な役割を担うようになった。しかし、BPA の有効性と安全性を支持す
る多くの報告は、COPD などの肺疾患を伴わない CTEPH、もしくは肺疾患の有無を層別化して
いない患者群を対象としており、COPD などの肺疾患を伴う CTEPH に対する有効性と安全性は
明らかではなかった。本研究では、COPD 合併の CTEPH は、COPD を合併していない CTEPH
と同様に BPA 治療後に血行動態が改善し、合併症の頻度も同程度であることを初めて明らかにし
た。また、肺疾患を合併する CTEPH の BPA 治療では換気血流ミスマッチの増悪により酸素化悪
化する潜在的な懸念があるが、本研究では COPD 合併の CTEPH 患者の酸素化を改善することも
示した。BPA 後の酸素化には、死腔比、肺内シャント比、微小血管障害など様々な因子が関与し
ていると考えられる。心肺運動負荷試験において換気血流ミスマッチを反映する分時換気量/二
酸化炭素生成量(VE/VCO2)
、換気血流ミスマッチと肺拡散能の指標である A-aDO2 も BPA 後
に改善を認めたことより、COPD を合併した CTEPH 患者において BPA が換気血流ミスマッチ
を悪化させずに血行動態と酸素化を改善できることを示した。また、BPA 治療前の%VC と DLCO
が高い程、BPA 後の酸素化が改善した。COPD 患者は非 COPD 患者に比べ、換気血流ミスマッチ
の増加や過膨張による肺胞ガス交換面積の減少のため、DLCO が低下しているとされている。酸
素化は遠位肺動脈と毛細血管で行われるため、DLCO が低い COPD 患者では BPA を行っても酸
素化の改善が乏しいと考えられる。また、本研究では BPA は気管支拡張薬の投与量を増やすこと
なく,COPD 患者の 1 秒率(FEV1/FVC)を改善できることも示したが、その機序は明らかでは
ない。
【Limitation】
本研究の主な Limitation は、単施設後ろ向き観察研究であることである。また、BPA が施行され
始めた初期段階では手技の経験が少ないことが、BPA の成績に影響を及ぼした可能性は否定でき
ない。また、COPD 群では中等症の COPD 患者が大半を占め、重症・超重症の COPD 患者は相
対的に少なかった。
【結論】
CTEPH と COPD を合併した患者に対する BPA の有効性と安全性は、COPD を合併していない
患者と同様であり、COPD を合併していても血行動態はほぼ正常化した。また、BPA は換気血流
ミスマッチを悪化させることなく、酸素化および 1 秒率を改善した。また、BPA 前の肺活量や肺
拡散能が高いほど、BPA 後に酸素化が改善することが示された。BPA は、手術非適応の CTEPH
と COPD を合併した患者に対する有効かつ安全な治療法として期待される。

神戸大学大学院医学(
系)
研究科(博士課程)

論 文審 査 の 結 果 の 要 旨

論 .
文題目

T
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甲第

3256号





受付番号

藤井 寛 之

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慢性閉塞性肺疾患を合併した慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する
バルーン肺動脈形成術の効果と安全性について



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固 定久


及葺島
凸 ¥1- 篠 人


(要旨は 1
, 000字∼ 2
, 000字程度)

【背景 】
慢性血栓塞栓性肺高血圧症 (CTE
PH)は、器質化した血栓により肺動脈が慢性的に狭
窄、閉塞を起こし、肺血管抵抗値の上昇、肺高血圧症を呈し、右心不全に至る疾患である。近
年、非手術適応患者において、バルーン肺動脈形成術 (BPA)の有効性と安全性が示されてい
る。一方、慢性閉塞性肺疾患 (COP
D)は 40歳以上で 9-10%の有病率と比較的よく見られる疾患
であり、 CTEP
H における COP
D 併存率は 1
0 23%であったと報告されている。COPDなどの肺
PH に対する BPAの有効性と安全性は 、未だ不明である。中等度または重度の
疾患を伴う CTE
COPDを合併した CTEPH患者に対する BPAの有効性と安全性を検討した。
1年 3月から 2021年 6月までに BPAを施行

方法 】
神戸大学病院にて BPAが開始となった、 201

された連続症例を対象にした。本研究では国際的な COPDの評価基準である GOLD分類に従

、 COPD群は 1秒率 (FEVl(
1秒量) /FVC(努力肺活量))< 70%、%FEVl(予測 1秒量に対する
比率)< 80
%と定義した。結果の曖昧性を回避するため、軽度の COPD患者 (GOLD分類 S
t
a
g
eI
)
は除外した。右心カテーテル検査による血行動態の評価、呼吸機能検査、動脈血ガス分析、 6分
間歩行試験および心肺運動負荷試験を施行し、 BPA前と BPA終了 3ヶ月後での評価を行った。
ベースラインの呼吸機能データがない患者、右心カテーテルによる再評価がない患者は除外し


BPAのエンドポイントは、血行動態の正常化に関わらず、到達可能なすべての病変を治療し終え

るまで施行した。
49人の CTEPH患者が、患者あたり平均 4.
0土 1
.2回の BPAを施行され、

結果 】
患者背景合計 1
)患者 1
6
最後の BPA治療から約 3ヶ月後に再評価を行った。軽症の COPD(GOLD ステージ I

名は除外した。解析対象となった 133名のうち、 32名が COPD群
、1
0
1名が非 COPD群に分類さ
れた。COPD群では、 24名 (75%)
が GOLDステージ I
I(中等度)、 8名 (25%)
が GOLDステージ
田 (重度)に分類された。COPD 群では非 COPD 群に比べ喫煙歴が多く (75% v
s
. 20%;p<
2
8
9士 86m v
s
.3
3
1土 1
0
3m;p=0.
0
4
2
)。COPD患者
0
.
0
0
1
)、6-MWTでの歩行距離が短かった (

の 32人中 18人 (56%)が吸入気管支拡張薬による治療を受けており、その他の背景や PHに対
する内科的治療は、両群で同様であった。
BPAの有効性と安全性

COPD群と非 COPD群ともに血行動態は改善した。平均肺動脈圧は

COPD群で 3
6
.1士9
.
6mmHgから 2
1
.
6土 5
.
8mmHg(p<0
.
0
0
1
)、非 COPD群で 36.
5士 1
0
.
1mmHg

から 1
9.
3土 3.
9mmHg(p<0
.
0
0
1)に改善した。平均肺動脈圧の変化量は COPD群で一 1
4
.
4土 1
0
.5
7
.
0土 1
0
.
1mmHgであり、両群間に有意差は認めなかった (
p=0
.
2
2
6
)。
mmHg、非 COPD 群で― 1

肺血管抵抗値の改善率も COP
D群で―55.
6土 29.
0
%、非 COP
D群で一5
8
.
9士21
.4
%であり、両群間
で差は認めず (
p
=
0
.
4
9
5
)、COPD群でも非 COPD患者と同様に BPAの効果はしっかり認めた。
COPD 患者の呼吸機能に関する検討では、 1秒率 (FEVl/FVC)は有意に改善した (
61
.8土 7.
0%

から 6
6
.
5土 1
0
.
2
%、p=0
.
0
2
1
)、また酸素化も改善した (Pa02:6
0
.
9土 1
0.
6mmHgから 69.
3土 1
3
.6
=
0
.
0
0
7
)。また在宅酸素療法患者は有意に減少した。6分間歩行距離および心肺運動負
mmHg、p

荷試験も両群で改善した。安全性に関する検討では、非侵襲的または侵襲的な人工呼吸管理を
全治療回数の 1
.6%),非 COP
D群で
必要とする喀血を伴う重度の肺障害は、 COPD群では 2回 (
2 回(全治療回数の 3.
0
%)であり、 重 篤な肺損傷の発生率は両群で差 は認めなかった
は 1
(
p
=
0.
5
3
5
)。

生存率

追跡期間中央値 37.
9ヶ月 (
I
QR
:20
.
7-72.
9
)の間に、 COPD患 者 32人中 2人 (6.3%)、

非 COPD患 者 1
0
1人中 7人 (
6
.9%)が死亡した。COPD群では 2例とも悪性腫瘍で死亡し、非

COPD群では 4例が悪性腫瘍で、 3例 が肺炎、敗血症、重度の大動脈弁狭窄症で死亡した。右
心不全や COPDで死亡した患者はいなかった。COP
D患者の 1年および 5年生存率は 1
0
0%と

93.
5%であり、非 COPD 患者では 98.
0%と 93.
0%であった (Cox-Man
t
e
ll
ogr
an
k検 定
、 p=

0.
73
4
)。
COPD 患者における酸素化改善の予測因子 COPD 患者における BPA 後の酸素化の改善に寄
与する因子を検討するため、 BPA前後の Pa02の変化値を従属変数とし
、 BP
A前の臨床パラメー
ター を独立変数として多変量解析を行った。その結果、 BPA 前 の 肺 活 量 (%VC)や 肺 拡 散 能

(
%DLCO)が高いほど、BP
A 後に酸素化が改善することが示された。しかし、1秒 率 (
FE
Vl/F
VC)
は酸素化の改善とは関係なく、つまり BP
A 後の酸素化の改善と COPD の重症度とは関連を認め
なかった。

考察 】
本研究では、 COPD合併の CTEPH は、COPDを合併していない CTEP
H と同様に BPA
治療後に血行動態が改善し、合併症の頻度も同程度であることを初めて明らかにした。また、肺
疾患を合併する CTEPH の BPA治療では換気血流ミスマッチの増悪により酸素化悪化する潜在
的な懸念があるが、本研究では COPD 合併の CTEPH 患者の酸素化を改善することも示した。

BPA 後の酸素化には、死腔比、肺内シャント比、微小血管障害など様々な因子が関与していると
考えられる。心肺運動負荷試験において換気血流ミスマッチを反映する分時換気量/二酸化炭
素生成量 (VE /
VC02)、換気血流ミスマッチと肺拡散能の指標である A-a
D02も BPA後に改善
を認めたことより 、COP
Dを合併した CTEPH 患者において BPAが換気血流ミスマッチを悪化させ
ずに血行動態と酸素化を改善できることを示した。また、 BPA治療前の%v
cとDLCOが高い程、

BP
A後の酸素化が改善した。COP
D患者は非 COPD患者に比べ、換気血流ミスマッチの増加や
過膨張による肺胞ガス交換面積の減少のため、 DLCO が低下しているとされている。酸素化は遠
位肺動脈と毛細血管で行われるため、 DLCOが低い COPD患者では BPAを行っても酸素化 の
改善が乏しいと考えられる。また、本研究では BPAは気管支拡張薬の投与量を増やすことなく ,

COPD患者の 1秒 率 (
FEVl/FVC)を改善できることも示したが、その機序は明らかではない。

結 論】

CTEP
H と COPDを合併した患者に対する BPA の有効性と安全性は、 COPD を合 併していな
い患者と同様であり、 COPD を合併していても血行動態はほぼ正常化した。また 、BPA は換気血
流ミスマッチを悪化させることなく 、酸素化および l秒率を改善した。また、 BP
A 前の肺活量や肺
拡散能が高いほど、 BPA後に酸素化 が改善することが示された
。 BPAは、手術非適応の CTEPH
とCOPDを合併した患者に対する有効かつ安全な治療法として期待される。
これらは従来の研究とは異なる重要な知見を得たものとして価値ある集積であると認める。よっ
て本研者は、博士(医学)の学位を得る資格があると認める。

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