無衝突プラズマ中の運動論的不安定性に伴う粒子の加熱・加速の研究

概要

無衝突プラズマ中の運動論的不安定性に伴う
粒子の加熱・加速の研究
Particle acceleration and heating associated with kinetic instabilities in collisionless plasmas
研究代表者：天野孝伸（東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻）
amano@eps.s.u-tokyo.ac.jp
研究分担者：寺境太樹

（東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻）
jikei@eps.s.u-tokyo.ac.jp
担当：シミュレーション実施・データ解析
研究分担者：岡田卓郎 （東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻）
okada2022@eps.s.u-tokyo.ac.jp
担当：シミュレーション実施・データ解析
研究目的 (Research Objective):
宇宙空間に存在するプラズマは高温・希薄であるため，粒子間の衝突が無視できる
無衝突プラズマの状態にある．無衝突プラズマにおけるエネルギー・運動量交換はプ
ラズマ波動を介して行われるため，プラズマ波動の励起過程および波動粒子相互作用
の理解は柩めて重要である．実際に無衝突衝撃波や磁気リコネクションなどに伴い多
種多様なプラズマ波動が励起され，それにともなう粒子の加熱・加速が起きている．
本研究では特に無衝突衝撃波近傍において重要となる運動論的不安定性の数値シミ
ュレーションを行い，不安定性に伴う粒子の加熱・加速効率を調べる．

計算手法 (Computational Aspects):

電子・イオン共に運動論的に扱う Particle-In-Cell （
PIC）法と電子を流体近似した
ハイブリッド法を用いた数値シミュレーションの両方のモデルを用いて比較を行っ
た．ただし，ハイブリッド法は有限電子慣性モデル（電子を有限の慣性を持つ流体と
して近似）を用いた．どちらのモデルにおいても数値シミュレーションは 1 次元およ
び 2 次元モデルを状況に応じて使い分けた．

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研究成果（ Accomplishments

本年度は特に中性粒子がプラズマ中で電離されることによって作られるピックア
ップイオンが励起する不安定性に着目した．ピックアップイオンは電離された直後に
は速度空間において特徴的なリング・ビーム分布を持つことが期待されるが，この分
布は一般には不安定であり，等方分布に緩和すると考えられている．このピックアッ
プイオン起源の不安定性やその緩和過程の重要性は太陽風と惑星・彗星の相互作用や
太陽圏外縁部において指摘されているが，本研究はその物理素過程に着目して数値シ
ミュレーションと理論的な考察を行った．
-3
9-

特に，ピックアップが磁力線に垂直方向に起こった場合のリング分布（ビーム成分は
ゼロ）を仮定し，一様系の PIC およびハイブリッドシミュレーションを行った． Fig.1

PIC ）およびハイブリッド Fig.2 （ハイブリッド）に， 2 次元数値シミュレーション
（
AIC）
によって得られた波数スペクトルの例を示す．長波長の Alfven-Ion-Cyclotron （
モードやミラーモードについては両者で波数や強度が一致している一方で，短波長に

IB）モードについては両者に大きな違いが見
伸びている斜め伝播の Ion Bernstein （
られた．これは短波長の IB モードにおいては一般に電子の Landau 減衰の効果が無
視できないため， Landau 減衰の効果が含まれていないハイブリッドの結果ではより
短波長の成分の強度が強くなったものと考えられる．このことは線形解析からも確認
された．パラメータサーベイの結果から， Landau 減衰の効果はピックアップイオン
の密度が大きい，またリング速度が大きい場合に特に顕著になることが分かった．こ
れはすなわち適用対象によって適切なモデルを使い分ける必要があることを示唆す
る．例えば，太陽圏外縁部のようなピックアップイオンの密度が低い場合については
ハイブリッドが適したモデルであると言える．一方で，彗星近傍のような比較的ピッ
クアップイオンの密度が高い場合には PIC を用いなければならない．
P
I
C
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ょ
＝ 15.0)

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Fig.1: 2 次元 PIC シミュレーションで得られた磁場の波数スペクトル

-40-

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Fig.2: 2 次元ハイブリッドシミュレーションで得られた磁場の波数スペクトル

公表状況（Publications ）:：
（論文）

1. 岡田卓郎，東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻修士論文「ピックアップ
イオン分布の安定性における電子運動論効果の影響」
（口頭）

1. 岡田卓郎，天野孝伸，ピックアップイオンが励起する不安定性のハイブリッドシミュレーシ
ョ
ン
， Japan Geoscience Union (JpGU) Meeting 2022 ，幕張 2022 年5月
2. ...

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