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大学・研究所にある論文を検索できる 「Growth Differentiation Factor-6の椎間板保護作用:細胞実験と動物実験による検証」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Growth Differentiation Factor-6の椎間板保護作用:細胞実験と動物実験による検証

宮﨑, 邦彦 神戸大学

2022.09.25

概要

【目的】
椎間板変性は腰痛の主要因の一つである。椎間板変性の機序や腰痛を生じる病態のさらなる解明とそれに基づいた椎間板機能を温存する低侵襲治療の開発が強く望まれおり、遺伝子導入や幹細胞移植、成長因子の投与などの様々な生物学的療法の有効性が日々研究されている。椎間板は髄核、周囲を囲む線維輪、これらと脊椎椎体を隔てる軟骨終板で構成される特殊な構造の組織である。椎間板髄核は人体最大の無血管組織であり、栄養供給の大部分は軟骨終板を介した椎体からの拡散に頼ることになる。そのため、加齢などに伴う軟骨終板の硬化・石灰化により容易に栄養不足に陥り、細胞外基質代謝の不均衡、椎間板細胞死さらには椎間板変性を引き起こす。椎間板の細胞外基質代謝においてプロテオグリカンやコラーゲンなどの同化促進因子には成長因子が、異化促進因子には炎症性サイトカインなどが関与している。つまり変性椎間板において、基質代謝バランスは異化優位の状態となっている。このため成長因子投与の治療コンセプトはこの基質代謝不均衡を異化優位から同化優位の状態に是正することにある。我々は成長因子であるGrowth differentiation factor-6(GDF-6)に注目した。過去の実験においてGDF-6の椎間板内投与による椎間板変性、椎間板性疼痛に対する効果の検証がなされているが、GDF-6投与が椎間板の様々な変性、炎症性条件下で及ぼす影響について検討はなされておらず、投与の際にスキャフォールドを併用した検討もなされていない。本研究の目的はGDF-6の臨床応用を目指し、ヒト椎間板細胞・関節軟骨組織における変性度別の発現度の解明とGDF-6投与がヒト椎間板細胞、細胞外基質代謝に与える影響を検討すること、またGDF-6とスキャフォールドを併用した治療の可能性について検討することである。

【方法】
細胞実験では腰椎変性疾患の手術時に採取した椎間板髄核組織(n=24、年齢15-70歳)から年齢とPfirrmann変性度別(Grade II、III、IV)のGDF-6発現量をウエスタンブロット(WB)法で測定した。次に髄核細胞へのGDF-6の投与効果を検証すべく、髄核細胞を三次元培地Tapered Soft Stencil for Cluster Culture(TASCL)へ1.0×10⁶個/TASCLずつ播種し、48時間後にGDF6(100ng/ml)または炎症刺激としてIL-1β(10ng/ml)もしくはその両者を投与した。細胞外基質(aggrecan、type II collagen)と炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、MMPs、ADAMTSs)を蛍光免疫染色とRT-PCRで評価し、コントロール群、GDF-6単独投与群、IL-1β単独投与群、GDF-6/IL-1βの共投与群の4群で変性度別に比較した。さらに同様に作製した4群間でMAPK経路であるp38のリン酸化(p-p38の発現)をWB法で比較した。

動物実験では12週齢雄Sprague-Dawleyラット尾椎を20G針で穿刺して変性椎間板モデル(穿刺群)を作製し、穿刺後GDF-6(20μg)単独投与群、GDF-6とスキャフォールドとして髄核の主成分であるtype II collagenからなるアテロコラーゲン(AC、2μL)共投与群、コントロール群の4群間で経時的(n=6、投与後2週、4週)に単純X線撮影を行い、椎間板高を比較した。またサフラニン-Oを染色行い、椎間板変性度を組織学的に比較し、蛍光免疫染色を行い細胞外基質であるaggrecan、type II collagen、炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-6およびpp38の発現度を比較した。

【結果】
細胞実験:WB法でGDF-6の発現度は年齢と変性度が進むにつれ低下する傾向を認めた。蛍光免疫染色では変性初期から中期の椎間板においてGDF-6単独投与群はコントロール群と比較してaggrecan、type II collagenとも発現の亢進を認めた(P<0.01)が、変性後期の椎間板においては差を認めなかった。RT-PCRでも同様に変性初期から中期の椎間板においてGDF-6単独投与群はコントロール群と比較してaggrecan、type II collagenとも発現亢進を認めたが(P<0.05)、変性後期の椎間板においては差を認めなかった。さらに変性初期から中期の椎間板においてIL-1β単独投与群ではコントロール群と比較してTNF-α、IL-6、MMP-3、ADAMTS4の発現の亢進を認めたが、GDF-6/IL-1β共投与群ではIL-1β単独投与群と比較してTNF-α、IL-6、MMP-3、ADAMTS4の発現が減少を認めた(P<0.05)。一方、変性後期の椎間板においてはIL-1β単独投与群とGDF-6/IL-1β共投与群の間に差を認めなかった。また変性初期から中期の椎間板ではIL1β単独投与群と比較してGDF-6/IL-1β共投与群はp-p38の発現抑制を認めた(P<0.05)。

動物実験:穿刺した3群(穿刺群、GDF-6単独投与群、GDF-6/AC共投与群)はコントロール群と比較して穿刺後14日、28日とも有意に椎間板高は低下し(P<0.05)、組織学的にも椎間板変性の進行を認めた(P<0.05)。穿刺後28日ではGDF-6単独投与群は穿刺群と比較して有意に椎間板高の低下は抑制され(P<0.05)、組織学的な椎間板変性の進行抑制を認めた(P<0.01)。さらに穿刺後28日でGDF-6/AC共投与群ではGDF-6単独投与群と比較して有意に椎間板高の低下は抑制され(P<0.05)、組織学的な椎間板変性の進行抑制も認めた(P<0.01)。蛍光免疫染色法ではaggrecan、type II collagenの発現は穿刺後14日において4群間で有意差を認めなかったが、穿刺後28日では穿刺した3群でコントロール群と比較して有意に低下を認めた(P<0.05)。またaggrecan、type II collagenの発現は、穿刺後28日でGDF-6単独投与群は穿刺群と比較して有意に低下抑制を認め(P<0.01)、さらにGDF-6/AC共投与群はGDF-6単独投与群と比較して有意に低下抑制を認めた(P<0.01)。TNF-α、IL-6、p-p38の発現は穿刺後14日で穿刺群はコントロール群と比較して有意に高値であったが(P<0.05)、GDF-6単独投与群、GDF-6/AC共投与群群はコントロール群と比較して有意差を認めなかった。穿刺後28日ではTNF-α、IL-6、p-p38の発現は穿刺後28日で穿刺した3群はコントロール群と比較して高値であったが(P<0.05)、GDF-6単独投与群は穿刺群と比較して有意に低値で(P<0.01)、さらにGDF-6/AC共投与群はGDF-6単独投与群と比較して有意に低値であった(P<0.01)。

【考察】
本研究はGDF-6による椎間板変性抑制を椎間板変性度別に証明した初の研究である.細胞実験では加齢・変性により椎間板でのGDF-6発現は減少する傾向を認めた。また、三次元培養下に若年で変性度の低い髄核細胞ではGDF-6を投与することで細胞外基質の発現亢進と炎症性サイトカインの発現抑制を認めた。動物実験ではGDF-6はラット尾椎を用いた椎間板変性モデルにおいて、椎間板高の低下および椎間板変性を抑制した。またGDF-6は椎間板変性による細胞外基質の発現低下を抑制し、炎症性サイトカインの発現を低下させた。細胞実験および動物実験とも炎症条件下においてGDF-6はMAPK経路のp38のリン酸化を抑制し、抗炎症作用が働き、椎間板の変性の抑制に繋がる可能性が示唆された。ACは様々な薬剤の徐放性を有することが報告されており、局所で効果を増強することができる。今回の検討ではGDF-6/AC共投与でGDF-6単独投与より効果的な椎間板変性の抑制を認めた。

この研究にはいくつかの限界がある。第一に我々はGDF-6がなぜ炎症性条件下で抗炎症作用を発揮するのかを検討していない。第二に本研究では単一濃度のアテロコラーゲンを採用し、他のスキャフォールドを使用して検討していない。今後、GDF-6が効果を発揮する最適な条件を明らかにし、最適なスキャフォールドを調製することが必要である。

【結語】
GDF-6とACの共投与により椎間板変性進行を抑制することができた。GDF-6とACの共投与は、椎間板変性疾患の新たな治療戦略となり得る。

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