新規インドール化合物MA-5投与によるミトコンドリア機能活性化を介した骨格筋への影響の検討

概要

（書式１８）

学
（

位 論 文 要 約
A b s t r a c t ）

博士論文題目 Title of dissertation
新規インドール化合物 MA-5 投与によるミトコンドリア機能活性化を介した骨格筋への影響の検討

東北大学大学院医学系研究科医科学専攻
外科病態学講座
氏名 Name

佐藤

整形外科学分野
宏陽

【⽬的】
新規インドール化合物 Mitochonic acid-5（MA-5）は、種々の臓器でミトコンドリアのエネルギー産性能を向
上させることが知られているが、⾻格筋ミトコンドリアへの影響について検討した報告はない。本研究では
MA-5 投与による運動機能と⾻格筋ミトコンドリア機能への影響を検討した。
【⽅法】
実験１：４〜6 か⽉齢の野⽣型 C57Bl/6J マウスを使⽤した。
対照群（蒸留⽔）、
MA-5 低⽤量投与群
（10 mg/kg) 、
MA-5 ⾼⽤量投与群（50 mg/kg）の 3 群を作成し運動機能を⽐較した。投与開始 8 週で安楽死させ⾻格筋を
採取した。前脛⾻筋の凍結切⽚を⽤いてミトコンドリア呼吸鎖複合体 I の活性を評価する NADH-TR 染⾊と
呼吸鎖複合体 II の活性を評価する SDH 染⾊を⾏い、染⾊強度を⽐較した。さらに免疫染⾊による前脛⾻筋の
⾻格筋線維タイプの割合を⽐較した。また、腓腹筋から抽出した RNA を⽤いて遺伝⼦の変化を網羅的に解析
するため RNA シーケンスを⾏った。残った RNA を使⽤して cDNA を作成し Real-time PCR（RT-PCR）を
⾏った。
実験２：オス C57Bl/6J マウス 9 週齢を対照群（蒸留⽔）
、運動群、MA-5 投与群（30 mg/kg）の 3 群に分け
た。運動群は休⽇を除く 10 ⽇間にトレッドミルを 20 m/分で 30 分間⾛⾏させた。２週間経過後に安楽死させ
た。⼤腿四頭筋から抽出したミトコンドリアを使⽤し Blue Native-PAGE を⾏い、ミトコンドリア呼吸鎖複合
体および呼吸鎖複合体同⼠が複数結合した呼吸鎖超複合体 supercomplex 形成に関する、運動及び MA-5 投与
の影響を検討した。
【結果と考察】
実験１：投与後 4 週・8 週間後のトレッドミル⾛⾏時間および⾦網の把持時間の変化率が、MA-5 ⾼⽤量群
で対照群よりも有意に延⻑・増加しており、MA-5 投与が持久⼒の向上をもたらした。NADH-TR 染⾊、SDH
染⾊ともに MA-5 ⾼⽤量群で対照群より濃く染⾊された⾯積の割合が多く、
ミトコンドリア機能が向上してい
ると考えられた。速筋である前脛⾻筋において⾻格筋の筋線維タイプは MA-5 ⾼⽤量群で MHC type IIa が多
くなっており、遅筋化していた。RT-PCR では⾻格筋の分化やミトコンドリア⽣合成に関連する遺伝⼦の発
現量に差がなかった。RNA シーケンスでは⾻格筋の機能や代謝に関連する遺伝⼦に変化が⾒られ、⾻格筋の
遅筋化や脂質代謝の亢進を誘導する Hoxa13 の発現の上昇が持久⼒の向上した要因であることが⽰唆された。
実験２：運動によりミトコンドリ機能が向上することが知られており、ミトコンドリアに対する運動の影響
と MA-5 投与による影響を⽐較するため検証を⾏った。Blue native-PAGE では、運動群と MA-5 投与群で対
照群より⾼分⼦・⾼質量のタンパク質がミトコンドリア内で増加し、ミトコンドリア呼吸鎖超複合体
supercomplex 形成が⽰唆された。Supercomplex 形成がミトコンドリアのエネルギー産性能が向上していた要
因と推測された。
【結語】
MA-5 はミトコンドリア呼吸鎖超複合体 supercomplex の形成や Hoxa13 の遺伝⼦発現上昇による遅筋化など
を介して⾻格筋におけるミトコンドリア機能を活性化することで持久⼒を向上していると考えられた。 ...