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大学・研究所にある論文を検索できる 「食事成分が引き起こす雌性不妊における卵巣や卵の機能異常のメカニズム解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

食事成分が引き起こす雌性不妊における卵巣や卵の機能異常のメカニズム解析

小峰, 瞳子 東京大学 DOI:10.15083/0002007098

2023.03.24

概要




















小峰

瞳子

ATP-binding cassette transporter G5 と G8 のヘテロダイマー(ABCG5/G8)は、ステロー
ル類を消化管管腔側へと排出するトランスポーターである。当研究室での Abcg5/g8 遺伝子欠損
マウスの繁殖過程において、Abcg5/g8 遺伝子をホモ欠損したマウス(以下、KO マウス)の雌
は不妊であることが明らかとなっている。申請者は、修士課程で行った血清メタボローム解析に
より、KO 雌マウスでは通常飼料中に含まれる植物ステロールの血清中濃度が野生型マウス(以
下、WT マウス)と比較して顕著に高値であること、また、KO 雌マウスの不妊は、植物性成分
を除去した飼料(以下、妊娠餌)で飼育することで回復する一方で、上記の植物ステロールを妊
娠餌に添加した植物ステロール餌では回復しなかったことから、これらの植物ステロールが KO
雌マウスの不妊原因物質である可能性を見出している。さらに、体外受精実験の結果、通常飼料
で飼育した KO 雌マウス(以下、不妊 KO 雌マウス)では、WT 雌マウスや妊娠餌で飼育した
KO 雌マウス(以下、妊娠可能 KO 雌マウス)と比べて、受精・卵割といった卵の機能が顕著に
低下していることも見出している。しかしながら、このような卵の機能異常が生じるメカニズム
は明らかとなっていない。そこで、本研究では、卵の成熟を担う卵巣にも着目し、植物ステロー
ルが卵巣や卵の機能に及ぼす影響をその分子機構も含めて解析することを目的として検討を行
っている。
各マウスから採取した卵巣の RNA-sequencing 解析により、不妊 KO 雌マウスの卵巣では、
他の妊娠可能マウスと比較して、ステロール生合成関連酵素群の発現量が低下していることを明
らかにしている。また、これら酵素群により産生制御を受け、卵の成熟を促進すると報告されて
いる化合物 A の卵巣中濃度が不妊 KO 雌マウスで顕著に低下していることも明らかにしている。
さらに、発現量低下因子群に共通するゲノム結合因子を探索した結果、ゲノム結合因子 B が候
補として見出され、ゲノム結合因子 B により生じるゲノム修飾 C が、不妊 KO 雌マウスの卵巣
で有意に上昇していることを明らかにしている。そこで、ゲノム結合因子 B の活性化が不妊に
関わるか否かを検討すべく、ゲノム結合因子 B の阻害活性を有する薬剤 D を不妊 KO 雌マウス
に投与した結果、ステロール生合成関連酵素の発現量ならびに化合物 A の卵巣中濃度の回復が
認められ、KO 雌マウスの卵の機能異常や不妊が改善し得るという重要な結果が得られている。
これら一連の成果は、未解明な点が多い卵巣や卵の機能制御機構に関して、新たな知見を与える
ものと考えられる。
申請者はさらに、卵巣内で卵の成熟を担う細胞集合体である卵胞に着目してさらなる解析を試
みている。その結果、不妊 KO 雌マウスの卵巣では、薬剤 D の投与で回復可能な卵胞発育不全
が生じていることを見出している。そこで、植物ステロールの異常蓄積が卵胞発育に及ぼす影響
を明らかにすべく、WT 雌マウスから採取した卵胞の in vitro 培養実験を行った結果、植物ステ
ロールが卵胞発育の阻害活性を有することを新たに見出し、さらに、この発育阻害は化合物 A
や薬剤 D の添加により回復することを明らかにしている。植物ステロールと卵胞発育との関連
性に着目した報告はこれまでなされておらず、植物ステロールの新たな活性(毒性)を見出した
点で、生理学的・毒性学的に重要な成果であると考えられる。
以上、申請者の研究により、不妊 KO 雌マウスの卵巣では、
「植物ステロールの蓄積によるゲ
ノム結合因子 B の活性化、ならびに、それに伴う下流でのステロール生合成系(特に化合物 A)
の低下を介し、卵胞発育不全や卵の機能異常が生じている」というスキームが示唆されている。
本研究を契機に、食事成分の一つである植物ステロールと、ゲノム結合因子 B の活性、卵巣・
卵の機能異常や不妊との関係に関して、さらなる解析が進み、未解明な点が多い生殖機能の制御
機構について一層の理解が深まることが期待される。よって本論文は博士( 薬科学 )の学位
請求論文として合格と認められる。

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