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大学・研究所にある論文を検索できる 「Comprehensive Structure-Activity Relationship Study of Gramicidin A」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Comprehensive Structure-Activity Relationship Study of Gramicidin A

高田, 悠里 東京大学 DOI:10.15083/0002002532

2021.10.15

概要

【序】グラミシジンA(1, Figure 1a)は、15個のD,L-アミノ酸が交互に配列する抗菌ペプチド天然物である1)。1は、強力な抗菌活性を示す一方で、顕著な哺乳細胞毒性を示すため、抗菌薬としての適用は著しく限られている。1は、脂質2重膜中でβ6.3-ヘリックスと呼ばれるらせん構造を形成し、N末端で会合した2量体がイオンチャネルとして機能する(Figure 1b)2)。1の示す抗菌活性および哺乳細胞毒性はイオンチャネル形成に起因することが想定されているが、詳細については未だ不明な点が多い。そこで私は、顕著な生物活性を示す1を構造基盤とし、多様な側鎖構造パターンを持つ数千種類の1類縁体群を合成・評価することで、1の持つ抗菌活性・細胞毒性を分離し、選択的な活性を示す新規1類縁体を創出することを研究目的とした。

【方法・結果】
1. グラミシジンA類縁体ライブラリーの設計・構築・スクリーニング
 数千種類の1類縁体を得るため、one-bead-one-compound(OBOC)3)ライブラリーの構築を計画した。OBOCライブラリーとは、split-and-mix法によってランダムにアミノ酸残基が組み合わされたビーズ結合型化合物群のことを指す。Split-and-mix法により置換する第4、6、8、10、12、14残基には、疎水性アミノ酸であるLeu、Valに加え、3次元構造および会合状態や生体内分子との相互作用を変化させる目的で、水素結合形成可能な側鎖を有するThr、Asm4)を用いた(Figure 1a)。実際のライブラリー合成では、Nα-アミノ基をFmoc基で、また側鎖ヒドロキシ基およびメチルアミド基をそれぞれt-Bu基および2,4,6-トリメトキシベンジル(Tmb)基で保護した4–7(Figure 2)をモノマーとして用いた。固相担体としては、多様な溶媒を許容し、均一な大きさを有するTentaGelを選択した。これに4-ヒドロキシメチル安息香酸(HMBA)リンカーおよびTrpを導入した3を出発物質とし、split-and-mix法を適用したマイクロウェーブFmoc固相合成によりペプチド鎖の伸長および置換を行い、8を得た。N末端アミンに対するホルミル基の導入と側鎖の脱保護を経て、46=4096種類からなる1類縁体OBOCライブラリー10を13584個のビーズとして合成した(Figure 2)。これらのビーズをマイクロプレート上で分離した後、エステルアミド交換によりエタノールアミンをC末端に導入すると同時に、ビーズから切断して得た1類縁体ライブラリーをスクリーニングに付した。ここでは、1の持つ抗菌活性、細胞毒性を評価でき、微量(<3µg)かつ夾雑物を含む系にも適用可能な評価法として、細菌膜を模倣したホスファチジルグリセロール含有リポソームを用いたH+/Na+イオン透過活性スクリーニングとP388マウス白血病細胞を用いた細胞毒性スクリーニングを採用し、上記ライブラリーを統一的に評価した。その結果、1と同等以上のH+/Na+イオン透過活性と細胞毒性(細胞生存率20%未満)を示すA群(74ビーズ)の他に、1と同等以上のイオン透過活性を示す一方、細胞毒性が減弱した(細胞生存率30%以上)B群(519ビーズ)に該当する1類縁体を得ることに成功した(Figure 3)。これらを、S. pyogenesに対する抗菌活性スクリーニングに付し、1と同等またはそれ以上の抗菌活性を示す化合物を得た(Figure 3)。また、MS/MS解析により、全ヒット化合物の構造を決定した。その結果、B群に該当する化合物276種、A群に該当する化合物41種を見出した。これら計317種の化合物から、Figure 3に示した方法により、20種類の化合物を詳細な機能評価対象として選定した(A群: A1、B群: B1–B19)。

2. 選定化合物のイオン透過活性・細胞毒性・抗菌スペクトル
 20種類の選定化合物をmgスケールで合成・精製し、これらのH+/Na+イオン透過活性と哺乳細胞毒性の容量作用関係および、グラム陽性菌に対する抗菌スペクトルを評価した(Table 1)。その結果、全化合物が1(EC50=4.4nM)と同等もしくはそれ以上のイオン透過活性(EC50=1.3–7.5nM)を示した。さらに、これらの中から強力な抗菌活性を示すものも多数見出した。中でも、全ての菌株に対して1よりも2–4倍抗菌活性が増強したA1や、P388細胞に対する細胞毒性が著しく減弱したにも関わらず、抗菌活性が増強した化合物B1–B6が得られた。特に、B4は、P388細胞に対する細胞毒性が著しく減弱した(IC50=>1000nM)にも関わらず、抗菌活性が に対して2倍(MIC=0.000015µg/mL)、MSSA1に対して4倍(MIC=8µg/mL)、L. monocytogenesに対して4倍(MIC=2µg/mL)増強した。また、同様の活性特性を示す類縁体としてB5も得られた。興味深いことに、B1は、P388細胞に対する細胞毒性が著しく減弱した(IC50=387nM)一方で、抗菌活性がS. pneumoniaeに対して2倍(MIC=0.000015µg/mL)、MSSA1に対して8倍(MIC=4µg/mL)、L. monocytogenesに対して2倍(MIC=4µg/mL)増強した。さらに、B1は、B2–B6の特性とは異なり、S. pyogenesに対して1とほぼ同等の抗菌活性(MIC=0.125µg/mL)を示した。以上のように、天然物に比して優れた活性を有する新規1類縁体および高度に細菌選択的な毒性を示す新規1類縁体の創出を実現した。

【結語】OBOCライブラリー戦略を活用した4096種類の1類縁体群の合成・評価により、極めて優れた生物活性特性を示す1類縁体を多数創出することに成功した。これらの化合物は、有用な新規抗菌薬シーズとなることが期待される。また、以上の結果は、本戦略の応用が、多様なペプチド系天然物の内包する優れた特性をさらに拡張させる可能性を示した。

参考文献

1) Dubos, R. J.; Cattaneo, C. J. Exp. Med. 1939, 70, 249.

2) Ketchem, R. R.; Hu, W.; Cross, T. A. Science 1993, 261, 1457.

3) Lam, K. S.; Lebl, M.; Krchňák, V. Chem. Rev. 1997, 97, 411.

4) Hamada, T.; Matsunaga, S.; Fujiwara, M.; Fujita, K.; Hirota, H.; Schmucki, R.; Güntert, P.; Fusetani, N.

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