リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Pulmonary thromboembolism during pregnancy and puerperium: Comparison of survival and death case」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Pulmonary thromboembolism during pregnancy and puerperium: Comparison of survival and death case

高倉 翔 三重大学

2022.07.20

概要

Introduction (導入)
近年、日本における産科危機的出血による妊産婦死亡は減少してきているが、肺血栓塞栓症 (Pulmonary thromboembolism: PTE)、脳出血、感染症、心血管疾患による妊産婦死亡は横ばいで推移している。本研究では、PTEに着目し、PTEに関連した妊産婦死亡に対する予防策を模索することを目的とした。

Methods (方法)
診療録を用いた後ろ向き観察研究である。総合• 地域周産期母子医療センター( 407施設) を対象に、2013年1月から2017年12月で妊娠中、産褥期に発症したPTE症例をアンケート調査によって集積した。集積した症例を妊娠中、産褥期それぞれで生存群、死亡群に分けて、背景について比較・検討した。本研究は三重大学医学部附属病院の医学系研究倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:H2019-183)

Results (結果)
1次調査では、250施設(61.4%)より回答があり、妊娠中•産褥期のPTEが104例(生存:88例、死亡:16例)あることがわかった。続いて、2次調査で詳細な情報が得られた70例(生存:54例、死亡:16例)について解析した。
妊娠中発症が33例(生存:25例、死亡:8例)、産褥期発症が37例(生存:29例、死亡:8例) であった。妊娠中発症( 33 例) については、妊娠初期の発症が15 例( 45 . 5 %)、妊娠中期の発症が4 例( 12 . 1 %)、妊娠後期の発症が14 例( 42 . 4 %) であった。産褥期発症( 37 例) については、産褥1日目までに23例(62.2%)が発症していた。
妊娠中発症における生存群と死亡群の比較では、母体背景について死亡群で年齢が有意に高かった。初発症状出現から24時間以内に心肺停止に至った重篤な症例は、生存群で25例中2例(8.0%)、死亡群で8例中4例( 50.0%)であり、死亡群で有意に多かった。また、初発症状出現後、初診から24時間以内にPTEと診断された症例は、生存群で25例中22例( 88. 0%)、死亡群で8例中4例(50.0%)であり、生存群で有意に多く、早期診断がなされていた。診断方法については、生存群では造影C T が1 9 例( 7 6 . 0 % ) 、( 心臓• 下肢) 超音波が6 例( 2 4 . 0 % ) 、死亡群では造影C Tが3例(37.5%)、肺動脈造影が2例(25.0%)、剖検が3例(37.5%)であった。
産褥期発症における生存群•死亡群の比較では、母体背景について両群間で有意な差は認めなかった。両群ともに、ほとんどの症例が帝王切開術後の発症であった。妊娠中と同様、初発症状出現から24時間以内に心肺停止に至った重篤な症例は死亡群で有意に多かった。産褥期の静脈血栓塞栓症(Venous thromboembolism: VTE)予防については、弾性ストッキング着用が生存群で21例( 72 . 4 %)、死亡群で6 例( 75 . 0%) に行われ、間欠的空気圧迫法は生存群で18例( 62. 1%)、死亡群で6例(75.0%)に行われていた。また、抗凝固療法については、生存群で7例(24.1%)、死亡群で2例(25.0%)に行われていた。多くの症例で適切にリスク評価がなされ、ガイドラインに沿った予防策が講じられていた。両群ともに抗凝固療法の実施率が25%程度と低かった。

Discussion (考察)
妊娠中発症については、死亡群に比べ、生存群で有意に早期診断がなされていることがわかった。また、産褥期発症については、産褥期のVTE予防は多くの症例でガイドラインに沿って行われていたが、抗凝固療法の実施率は低いことがわかった。
妊娠に関連したVTEでは、症状が妊娠における生理的変化と類似しているため、症状のみでの診断は難しい。さらに、Wellsスコアや改訂ジュネーブスコアなどのVTE予測スコアは妊娠中、信頼性が低くなる。そのため、妊娠中、VTEが臨床的に疑われる場合、診断のためには画像検査が必須と考えられる。妊娠中発症については、生存群で有意に早期診断がなされていることがわかった。死亡群では重篤な症例が確かに多かったが、8例中4例( 50%)は初診から24時間以内に画像検査が実施されておらず、早期診断により救命できた可能性があると考えられた。妊娠中に PTEを疑った場合には、画像検査を迅速に行い、早期診断に努めるべきである。
産褥期発症については、両群ともにほとんどの症例が帝王切開術後の発症であった。産褥期の VTEは選択的および緊急帝王切開術と関連がある。初発症状出現から24時間以内に心肺停止に至った重篤な症例が死亡群で有意に多く、PTEの重症度が予後規定因子と考えられた。そのため、産褥期において、PTEによる妊産婦死亡を減らすためには、PTEを起こさないこと、つまり、発症予防が重要である。本研究で、産褥期のVTE予防は多くの症例でガイドラインに沿って行われていたが、抗凝固療法の実施率は低いことがわかった。特に帝王切開術後については、現在のガイドラインの適応以上に積極的な抗凝固療法を実施していく必要がある可能性が示唆された。
PTEに関連した妊産婦死亡を減少させるためには、PTEに罹患した妊婦の画像検査による早期診断と現在の産褥期のVTE予防の見直しが必要かもしれない。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る