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大学・研究所にある論文を検索できる 「不育症女性における妊娠予後に関連する臨床的因子」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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不育症女性における妊娠予後に関連する臨床的因子

Shimizu, Maho 神戸大学

2021.03.25

概要

【目的】不育症は超音波あるいは病理組織検査にて確定された2回以上の流死産と定義され、妊娠可能年齢女性の1.0-1.8%にみられる。不育症の原因、リスク因子(以下臨床因子)は様々で、複数の因子を持つ患者もいる一方、約半数はリスク因子すら不明である。治療は個々の症例に対しテーラーメイドで行っているのが現状である。不育症患者の治療方針の選択に関わる情報を得るため、個々の不育症臨床因子と妊娠予後の関係を前向きコホート研究により調べた。

【方法】神戸大学医学部附属病院の倫理委員会の承認の下、すべての参加患者からインフォームドコンセントを取得した。2009年6月から2016年12月までに神戸大学不育症外来を受診し、不育症精査を受け、1年以上定期通院し治療を受けた、2回以上の流死産の既往のある患者を対象とし、不育症臨床因子と妊娠率および妊娠帰結の関連についてステップワイズロジスティック回帰分析により検討した。異所性妊娠、奇胎妊娠、生化学的妊娠は妊娠歴から除外した。生児獲得歴のある不育症女性は、続発性不育症に分類した。すべての女性に、不育症の臨床因子に応じて標準的な治療を行った。治療行ったにもかかわらず流産に終わった症例では、インフォームドコンセントを得て、絨毛のギムサバンド染色法による染色体核型分析を行った。妊娠率と出生率は、各臨床因子のある患者と因子のない患者の間で比較した。胎児の異常核型を伴う流産および生化学的妊娠は、妊娠結果の分析から除外した。

【結果】259人の不育症患者が対象となった。そのうち、211人が妊娠し、妊娠率は81.5%であった。妊娠の結果は次の通りだった:生化学的妊娠が13例、10週未満の流産43例、10週以降22週未満の流産6例、生児獲得が149例で、22週以降の死産は認めなかった。10週未満の流産43例のうち、胎児染色体正常核型は15例、異常核型17例、残る11例は絨毛培養不成功などのため核型は不明であった。10週以降22週未満の流産6例では、胎児染色体核型正常は4例、核型不明が2例であった。
 背景について、年齢、BMI、既往流死産回数、続発性不育症率について、妊娠群と非妊娠群、ないし生児獲得群と胎児染色体核型正常ないし不明で流産した群(染色体正常流産流産群)に分類して解析を行った。妊娠群の患者の年齢(median34歳, range19-46歳)は、非妊娠群の患者の年齢(median36歳, range28-46歳)よりも若かった(p<0.01)。また、既往流死産回数は、生児獲得群(median2回, range2-7回)よりも、染色体正常流産群(median3回, range2-12回)の方が有意に多かった(p<0.01)。BMI、続発性不育症率については有意差を認めなかった。
 不育症患者の臨床因子と妊娠帰結について解析を行った。多変量解析では、妊娠時年齢(p<0.01, OR0.9, 95% CI 0.97-0.83)、子宮奇形(p<0.05, OR0.3, 95% CI 0.11-0.8)、Protein C(PC)低下(p<0.01, OR0.14, 95% CI 0.03-0.6)が不育症女性における妊娠の独立した臨床因子であった。また、既往流産回数(p<0.01, OR0.57, 95% CI 0.43-0.75)、natural killer(NK)細胞活性>33%(p<0.01, OR0.31, 95% CI 0.13-0.73)が生児獲得の独立した因子であった。

【考察】本研究では不育症患者において高年齢、子宮奇形、ブロテインC低下が妊娠率を下げる独立したリスク因子であった。また、既往流産回数、NK細胞障害活性高値が生児獲得率を下げる独立したリスク因子であった。
 これまでも、子宮奇形は胚移植後の妊娠率を低下させることや、子宮奇形に対する外科的治療が妊娠予後を改善させることが報告されている。本研究では、子宮奇形は妊娠率を下げるリスクであったが、生児獲得率低下に関わるリスク因子ではなかったため、子宮奇形に対する外科的治療は妊娠率を改善しない可能性がある。しかし対象の子宮奇形患者全例で外科的治療を行ったわけではないため、さらなる検討が必要である。
 また、プロテインC低下が不育症患者における妊娠率を低下させるリスクであることを初めて報告した。活性型ブロテインCは妊娠維持に必要なブロゲステロン産生に関わるとする報告もあり、プロテインCが妊娠成立に関与している可能性がある。
 さらに、我々はNK細胞活性33%をカットオフ値とすると、NK細胞活性の高い不育症患者において、生児獲得率が低いことを以前に報告しており、今回の多変量解析でもNK活性高値が独立したリスク要因であった。不育症患者では健常者と比べ末梢血のNK細胞活性が高く、NK活性高値は胎児の染色体正常流産と関連していることも報告されている。末梢血NK細胞活性の高値は、その後の妊娠における胎児染色体正常流産のリスクとなりうる。
 本研究の結果は、不育症女性の診療において、検査すべきリスク因子の選択や治療法などの臨床的管理に関する新しい知見を見いだし、今後の不育症治療の発展に貢献するものと考えられる。