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大学・研究所にある論文を検索できる 「Good clinical teachers in pediatrics: the perspective of pediatricians in Japan」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Good clinical teachers in pediatrics: the perspective of pediatricians in Japan

西屋, 克己 岐阜大学

2020.03.25

概要

現代の医療者教育において,優れた教育的能力を有している指導医の役割は重要であり,指導医の教育的能力を高めることは,臨床研修プログラムの充実,ひいては医療の向上につながる。指導医の教育的能力向上の基盤として,指導医の資質・能力を明確にすることは不可欠であるが,指導医が持つべき資質・能力に関する研究は,これまで主として欧米諸国の内科や総合診療領域で行われてきており,アジア諸国や小児科領域での検討は乏しい。また指導医自身が考える指導医像と,研修医が求める指導医像の差異に関する研究は少ない。本研究では,質的/量的混合研究手法を用いて,日本の小児科医を対象として,指導医の資質・能力を同定するとともに,小児科指導医と小児科専攻医の間で,同定された資質・能力に対する認識の相違について解析し,我が国における優れた小児科指導医像の確立を試みた。

【対象と方法】
小児科指導医と小児科専攻医を対象として,質的/量的混合研究手法を用いて小児科指導医の資質・能力を同定し,各資質・能力の重要性に関する認識を調査した。1) 小児科指導医の資質・能力の同定:2012-2013 年に開催された臨床研修指導医講習会(日本小児科学会主催)に参加した小児科指導医 117 名,大学病院・子ども病院で専門研修中の小児科専攻医 32 名を対象として,優れた小児科指導医像について質問紙調査を行い,記載された内容を質的に主題分析し、小児科指導医の資質・能力を同定した。2) 資質・能力のレーティング(小児科指導医と専攻医の認識の差異):小児科指導医 187名(2009-2013 年開催の講習会参加者)および小児科専攻医 50 名を対象として,1)で同定された個々の小児科指導医の資質・能力に関し,リッカート 5 段階尺度によるレーティングを行い,比較検討した。統計解析は Mann–Whitney U test を用い,Benjamini–Hochberg correction を行った。本研究は岐阜大学大学院医学研究等倫理審査委員会の承認を経て実施し(承認番号 26-421),研究参加者には文書により説明し同意を得た。

【結果】
1) 小児科指導医の資質・能力の同定:指導医 116 名(回収率 99.2%)から 990 項目,専攻医 32 名(回収率 100%)から 148 項目の自由記載を収集し,主題分析によって資質・能力を抽出し,48 の資質・能力を同定した。これらは『個人的資質・能力』,『小児科医としての資質・能力』,『教育的資質・能力』の 3 ドメインに分類された。『個人的資質・能力』には「責任感」,「コミュニケーション」,「一貫性」,「共感」など 14 項目,『小児科医としての資質・能力』には「チーム医療」,「診療能力」,「問題解決力」など 17 項目、『教育的資質・能力』には「フィードバック」,「評価」,「教育マインド」など 17 項目が含まれていた。抽出された資質・能力の多くは先行研究とほぼ一致するものであったが,「優しさ」,「時間管理能力」,「研修医を守る」,「研修医を叱る」などは本研究で新たに抽出された資質・能力であった。

2) 資質・能力のレーティング (小児科指導医と専攻医の認識の差異):指導医 85 名 (回収率 45.2%),専攻医 50 名 (回収率 100%) から回答を得た。抽出された 48 項目の資質・能力の多くは 4 以上のレーティングとなり,いずれも妥当な資質・能力であることが示唆された。各ドメインの比較では,『個人的資質・能力』のレーティングが高く,『教育的資質・能力』が相対的に低い結果となった。指導医と専攻医の比較では,全般的に専攻医のレーティングが高く,『教育的資質・能力』において有意に高い項目が多く認められた。

【考察】
本研究で同定された 48 項目の小児科指導医の資質・能力の多くは先行研究と共通するものが多く,世界の地域や文化によらず,また多くの診療科に共通して普遍的なものであることが示された。一方,本研究で新たに抽出された項目のうち,「優しさ」は小児科医としての特徴を示唆し,「時間管理能力」は日本の医師の長時間労働に由来する可能性が示唆された。また,「研修医を守る」は日本の集団主義との関連,「研修医を叱る」は日本の教育におけるネガティブフィードバック重視との関連が示唆された。また 48 項目の資質・能力に対して,専攻医がより高いレーティングを行い重要視した理由については,①指導医はメタ認知能力が高く,自己を振り返り,より客観的に妥当な判断をした可能性,②『教育的資質・能力』に関しては比較的新しい概念であり,旧来の教育を受けてきた指導医が高くレーティングすることに消極的であった可能性,③若い学習者ほど指導者に依存し,専攻医が指導医の更なる教育を期待している可能性,などが考えられた。

【結論】
日本の小児科医の視点から,優れた小児科指導医の資質・能力 48 項目を同定し,3 ドメインに分類 した。同定された資質・能力の多くは,世界の地域,文化,診療科を問わず普遍的であったが,本邦 において特徴的な新たな資質・能力も同定された。また専攻医は,指導医よりも各資質・能力を重要 視しており,特に『教育的資質・能力』において顕著であった。本研究の成果は,小児科指導医の資 質・能力向上や専攻医指導における指導医自身の省察に活用するなど,小児科指導医育成指針の基盤 構築に大きく貢献するのみならず,幅広い診療分野における臨床教育の発展にも資すると考えられた。

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