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Fluctuation of bacteria on bleb surface after trabeculectomy with adjunctive mitomycin C

髙橋, 伸通 岐阜大学

2020.01.15

概要

【目的, 緒言】
 濾過胞関連感染症は線維柱帯切除術において最も忌むべき合併症で, その発症予防は重要な課題である。発症に関して季節との関連が報告されている。そこで, マイトマイシンC(MMC)併用線維柱帯切除術後患者において濾過胞近傍結膜細菌叢の季節変動及び抗菌点眼薬の有無がどのような影響を与えるか検討した。

【対象と方法】
対象:岐阜大学眼科においてMMC併用線維柱帯切除術施行後3ヶ月以上経過した症例で, 2005年1月から2006年12月までの間に当院へ通院可能で, 無血管もしくは乏血管な嚢胞状で漏出の無い濾過胞(Indiana Bleb Appearance Grading Scale;H2orH3, E3, V0~V2, S0)を有し, それ以前に眼科的手術既往を有さない有水晶体眼症例で, 術後からその期間まで眼圧下降薬を使用していない症例を無作為に一例一眼選択した44例44眼。

方法:春(3月~5月), 夏(6月~8月), 秋(9月~11月), 冬(12月~2月)各1回, 0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼後, 濾過胞近傍上眼瞼結膜を滅菌綿棒にて擦過し, 分離ならびに増菌培養に供し, 分離菌の薬剤感受性試験を施行した。

【結果】
 44眼の患者背景は, 男性22名, 女性22名, 右眼21眼, 左眼23眼, 平均年齢は61.6±11.7歳, 経過観察期間は95.2±55.8ヶ月, 術前眼圧は20.6±7.9mmHg, 術後眼圧は9.2±3.9mmHgであった。
 44眼中30眼(68.2%)で菌が検出され, 全検体(176検体)では48検体(27.2%)が培養陽性であった。菌検出回数は1回のみ15眼, 複数回15眼であった。菌種数に関して, 単回検出では1菌種14眼, 3菌種1眼で, 複数回検出では同種菌種10眼, 異種2菌種6眼, 異種3菌種5眼であった。検出された58株中56株がグラム陽性菌で, その内訳はStaphylococcus epidermidisが22株と最も多く, 次いでPropionibacterium acnes 21株, Corynebacterium sp. 8株であった。一方濾過胞関連感染症, 特に眼内炎において最も高頻度に検出されるStreptococcus sp.は検出されなかった。
 季節では, 春, 夏, 秋および冬ではそれぞれ6眼, 9眼, 20眼および13眼検出され, 秋に優位に検出される傾向にあった(P=0.006)。
Levofloxacin(LVFX)点眼薬は44眼中32眼で検体採取時に使用され, うち22眼(35株:27.2%)で培養陽性であった。
薬剤感受性に関して, S. epidermidisでは63.9%でLVFXに対し耐性であった。一方, Corynebacterium sp.では25%が耐性を認め, P. acnesでは6.2%が耐性であった。

【考察】
 健常人結膜嚢内擦過物の培養では80-90%の確率で菌が検出される。しかし今回68.2%で若干低い結果であった。その要因として, 線維柱帯切除術により結膜表面の細菌定着に対し, 不利な環境への変化, 採取時の点眼麻酔による殺菌効果, 嚢胞状濾過胞の眼瞼と接触による物理的減菌化などが考えられた。
 今回S. epidermidis, P. acnesおよびCorynebacterium sp.が多く検出されたが, 正常結膜嚢から検出される菌種と同様であった。但し, 濾過胞関連感染症, 特に眼内炎において最も高頻度に検出されるStreptococcus sp.は検出されなかった。その一因として正常結膜嚢からの検出報告では感染因子(Streptococcus sp.)が貯留しやすい下方結膜嚢内から検体採取, 本報では上方の濾過胞近傍結膜から採取とした検体採取部位の差が考えられた。
 今回, 季節では秋に多く細菌が検出された。S. epidermidisあるいはP. acnesなどの正常結膜細菌叢が, 気温あるいは湿度といった季節の環境条件の変異から結膜の感染防御機構に影響を及ぼしている可能性が考えられた。具体的には, 日本の夏のように蒸し暑い環境では結膜(濾過胞)の細菌への防御能を低下させ濾過胞感染症を惹起させる, 一方, 秋では細菌への抵抗性を回復させ, 濾過胞関連感染症の発生を防いでいる可能性が考えられた。
 LVFXを継続使用した32眼(128検体)において, 22眼35検体(27.3%)で培養陽性であった。既報に比し抗菌点眼薬使用の有無で培養陽性率に著しい差はなかった。薬剤感受性において, S. epidermidisでは63.9%でLVFX耐性を示していた。よって広範囲のスペクトを有する薬剤の長期使用は耐性菌株の増加ならびに抗菌薬耐性S. epidermidisによる濾過胞関連感染症の増加が危惧され, 抗菌点眼薬の長期間, 断続的な使用は避けるべきであると思われた。

【結論】
 MMC併用線維柱帯切除術患者の濾過胞近傍結膜から, 秋に最も多く細菌が検出され, その内訳は正常結膜細菌叢と同様にS. epidermidisあるいはP. acnesであった。MMC併用線維柱帯切除後濾過胞近傍結膜嚢からの菌検出は稀ではない。

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