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大学・研究所にある論文を検索できる 「Hypothalamic paraventricular nucleus (PVN) is the center for hypothalamo-pituitary-thyroid axis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Hypothalamic paraventricular nucleus (PVN) is the center for hypothalamo-pituitary-thyroid axis

近藤, 友里 コンドウ, ユリ Kondo, Yuri 群馬大学

2021.03.23

概要

【序論】生体の甲状腺機能は、主に視床下部(Hypothalamus)-下垂体(Pituitary)-甲状腺(Thyroid)(HPT系)におけるフィードバック機構で制御されている。視床下部においてはpreproTRH遺伝子からThyrotropin-releasing hormone(TRH)が合成・分泌されHPT軸を制御している。TRHニューロンは、視床下部室傍核(paraventricular Nucleus: PVN)での発現が最も強いが、視床下部全体、大脳皮質、小脳等全脳領域だけでなく、腸管や膵臓β細胞等全身諸臓器に分布している。HPT系におけるTRHの責任領域については、ラットを用いた視床下部離断法での実験結果や、トリヨードサイロニンのペレットを室傍核に埋没した実験などから、室傍核TRHの重要性が示唆されてきたが詳細は不明のままである。私達は全身のpreproTRH遺伝子を欠失させたTRHノックアウトマウス(Conventional TRHKO)を作製し、三次性(視床下部性)甲状腺機能低下症モデルマウスとして報告してきたが、同マウスは全身のTRHが欠損しており、HPT系におけるTRHの責任領域は解明できていない。本研究では、Cre-loxPシステムによりPVN特異的TRHノックマウスを作製し、甲状腺機能を解析し、HPT系における視床下部TRHの責任領域を決定する事を目的とした。

【方法】1)マウスpreproTRH遺伝子のexon2,3をCre recombinase標的配列loxPで挟んだ Targeting vectorを作製し、C57BL/6のES細胞へ導入し相同組換えを行い、F1マウス (floxマウス:TRH+/lox)を得た。2)TRHlox/loxをTau-Creトランスジェニックマウスと交配させ、得られたTau-Cre;TRHlox/loxの大脳組織を、抗TRH抗体を用いて免疫組織化学的解析を行った。3)Sim1-creリコンビナーゼ発現トランスジェニックマウス(以下、Sim-Cre Tg)と、tdTomatoレポーターマウスを交配させSim1-Cre;tdTomatoマウスを作製し、大脳組織におけるTRH発現解析を行った。4)TRHlox/loxとSim-Cre Tgを交配させ、PVN特異的TRHノックアウトマウス(Sim1-Cre;TRHlox/lox以下、PVN-TRHKO)を作製した。5)PVN-TRHKOと対照群としてSim1-Cre-;TRHlox/lox(以下、Ct)マウスを用いて、12週齢のオスマウスを12時間絶食後に安楽死させ、以下を行った。(1)大脳組織でのTRH発現を免疫組織化学的に解析した。(2)視床下部室傍核領域を単離後、RNAを抽出しpreproTRH遺伝子mRNA発現量をqPCR法にて解析した。(3)血清FT4値、TSH値を測定した。(4)下垂体前葉からRNAを抽出して下垂体前葉ホルモンをコードする遺伝子群(TSHβ、TSHα、プロラクチン(PRL)、成長ホルモン、POMC, 黄体形成ホルモン)のmRNA発現量を解析した。(5)下垂体前葉組織を抗TSHβ抗体、抗プロラクチン抗体にて免疫組織化学的に解析した。(6)6〜12週齢で体重を測定し、12週齢で腹腔内ブドウ糖負荷試験(IPGTT)を施行した。

【結果】1)Targeting vectorの相同組み換えがサザンブロット法にて確認された。 2)TRHlox/loxでは、PVN,正中隆起,視床下部背内側核,背側結節乳頭核と内因性のTau発現部位に一致してTRH陽性細胞が染色されたが、Tau-Cre:TRHlox-loxでは上記の全ての部位で TRH陽性細胞が検出されなかったことから、TRH対立遺伝子がCreによって機能的に欠失したことが確認された。3)Sim1-Cre;tdTomatoマウスの脳組織では、TRHとTomatoはPVNでのみ共局在していた。内側扁桃体と上核では、tomato染色を認めたが、TRH蛋白は検出されなかったことから、TRHとSim1はPVNでのみ共発現することが確認された。 4,5)(1)PVN-TRH KOではPVN特異的にTRHニューロンが欠失していた。(2)PVN-TRHKOの室傍核領域でのpreproTRH mRNA発現量はCtの約9%に低下した。(3)PVN-TRHKOでは、血清 FT4値はCtの60%程度に低下していた。一方、血清TSH値はCtに比してPVN-TRHKOでは約 1.7倍に増加していた。(4)PVN-TRHKOの下垂体TSHβmRNA発現量はCtに比して約65%に低下し、PRL mRNA発現量も約55%に低下したが、他の前葉ホルモン遺伝子群の発現量に有意差はなかった。(5)下垂体前葉全体の細胞数におけるTSHβ陽性細胞数は、PVN-TRHKOではCtに比して約50%に低下し、PRL陽性細胞数は約60%に減少していた。(6)PVN-TRHKOとCtは6-12週まで体重に有意差を認めず、また耐糖能も有意差がなかった。

【考察】生体における甲状腺機能調節機構であるHPT軸において、視床下部TRHニューロンの責任領域を決定するために、TRHlox/loxマウスとSim1-Creトランスジェニックマウスを交配することでPVN特異的TRHノックアウトマウス(PVN-TRHKO)を樹立し、解析し た。Sim1とTRHは視床下部のPVNでのみ共発現していたことが確認され、また、実際に PVN-TRHKOでは、PVNで蛋白・mRNAともTRHが欠失していた。PVN-TRHKOでは下垂体前葉組織におけるTSHβ分泌細胞数、TSHβ遺伝子発現量がともに減少し、一方で血清中のTSH濃度は上昇し、末梢のFT4濃度は低下していた。これら表現型は、私達が報告してきた Conventional TRHKOの表現型と同一であったことから、甲状腺機能調節機構のHPT軸における視床下部の責任領域は、PVNのTRHニューロンであるということが、生理学的にも解剖学的にも初めて証明された。一方で、PVN-TRHKOとConventional TRHKOでは耐糖能で差異を認めた。conventional TRHKOでは空腹時血糖値が高値であり、IPGTTでは糖負荷後の高血糖遷延を呈していたが、PVN-TRHKOではCtと比較しIPGTTの結果に有意差はなく、TRH欠失による耐糖能異常は、末梢の甲状腺ホルモン濃度の低下やPVNのTRHニューロンの欠失によらないことが判明した。conventional TRHKOから単離した膵島細胞はグルコース刺激に対するインスリン分泌能が障害されており、TRH受容体が膵島細胞に発現していたことや、TRH受容体ノックアウトマウスで耐糖能異常を認めたことなどから、膵β細胞におけるTRH-TRH受容体シグナルの欠失が膵β細胞の機能不全に寄与しており、HPT軸を介した甲状腺機能とは独立した事象であることが解明された。またPVN- TRHKOの下垂体では、PRL遺伝子 mRNA発現量が低下し、免疫染色でもPRL陽性細胞数の減少が確認された。PRLの制御については、TRH、末梢の甲状腺ホルモン共に制御因子であることか報告されている。今回樹立したPVN-TRHKOでは、HPT軸の障害で末梢のT4は低下しているため、甲状腺ホルモンを補充した状態で下垂体前葉のPRL発現量を解析することで、PRL調節機構の主要因子がTRHそのものか、末梢の甲状腺ホルモン依存的なのかが判明すると考えられ、今後解析予定である。

【結語】1) PVN特異的TRHKOマウスの樹立に成功した。このマウスの解析を通して生体の甲状腺機能調節機構であるHPT軸での視床下部の責任領域がPVNのTRHニューロンであると解明された。

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