フレームワーク型金属錯体分子結晶の創成
概要
令和4年度
京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書
フレームワーク型金属錯体分子結晶の創成
Fabrication of framework-type metal complex molecular crystals
京都大学 高等研究院物質―細胞統合システム拠点
古川 修平
研究成果概要
本研究では、ロジウム二核パドルウィール錯体、銅二核パドルウィール錯体を基本骨格に有
する金属錯体多面体(metal-organic polyhedra, MOP)の合成を行った。この MOP 分子を原料
とし、分子間に空隙が発現するように結晶化させることで、フレームワーク型分子結晶を合成し
た。
具体的には、京都大学化学研究所スーパーコンピュータシステムを利用し、フレームワーク
型分子結晶中における分子間相互作用を詳細に解析した。本研究で得られた MOP の単結
晶 X 線構造解析の結果に対し、密度汎関数法を用いた計算化学的な解析を施すことで、
MOP 分子間に働く相互作用を①交換反発、②静電相互作用、③誘起相互作用、④分散相
互作用の4成分に分けて定量化した。相互作用エネルギーの内訳から、MOP 分子が分子間
に空隙を発現しながら結晶化するメカニズムを議論した。なお、本研究で行った計算化学的
解析はすべて京都大学化学研究所スーパーコンピュータシステムに既に導入されている計算
パッケージ「Q-Chem」を用いて行った。
本研究における MOP 分子結晶の合成・解析は現在も進行中である。次年度以降は多様な
構造の MOP 分子をさらに合成し、これらの分子結晶について分子間相互作用の詳細な解析
を行うことで、フレームワーク型分子結晶を狙って合成するための一般的な分子設計手法を開
発する予定である。以上の研究成果を踏まえ、次年度中に原著論文を国際誌に投稿予定で
ある。 ...