Cell-free DNA Derived from Neutrophils Triggers Type1 Interferon Signature in NMOSD
概要
〔目 的(Purpose)〕
視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)は、抗アクアポリン4抗体が関与する中枢神経系の自己免疫性炎症性疾患であるが、NMOSDにおける免疫異常正確なメカニズムはいまだ解明されていない。多発性硬化症(MS)の治療薬として知られるインターフェロン(IFN) -0がNMOSDの病態を悪化させることが報告されており、またいくつかの研究により、NMOSD患者における1型IFN (IFN-1)経路活性化と重症度の相関が示されている。これらのことは、NMOSDの病因においてIFN-Ιが重要な役割を果たしていることを示唆する。しかし、NMOSDの末梢免疫系でIFN -1経路を増強する上流因子の機構はまだ解明されていない。本研究ではNMOSDにおけるIFN-Ιの関与と、その上流因子を同定することを自的とした。
〔方法(Methods)]
事前に同意を得た抗アクアポリン4抗体陽性のNMOSD患者32名と健常者23名から臨床サンプルを入手した。NMOSD患者血消中のcell-free DNAの濃度を測定し、またNMOSD患者血清による健常者末梢血単核細胞(PBMC)におけるIFN-1誘導を in vitroにおいて評価した。NMOSD患者血清から抽出したcell-free DNAを健常者PBMC、または樹状細胞(DC>と共培養し、上清中のIFN-1を測定した。またcell-free DNA画分を抽出し、Bisulfite sequencingでDNAメチル化プロファイルを解析することで、cell-free DNAの細胞由来を明らかにした。さらに、NMOSD患者血清で健常者好中球を剌激し、好中球細胞外トラップに伴う細胞死(NETosis)の誘導を評価するとともに、NETos isに対する薬理学的介入の有効性を評価した。
〔成績(Results))
NMOSD患者の血清ではcell-free DNA濃度が上昇していた。NMOSD血清で健常者PBMCを刺激した際、有意なIFN-l mRNA発現上昇を認めたが、NMOSD血清のDNase処理、cGAS阻害剤やtoll-like receptor 9アンタゴニストとの共培養では健常 者PBMCに対するIFN-1誘導活性を有意に抑制した。抗菌ぺプチドであるLL37存在下においては、PBMCまたは形質細胞用樹状細胞(pDC)において、NMOSD由来のcell-free DNAによるIFN-1誘導の増強が観察された。NMOSD患者のセルフリーDNAのDMA メチル化パターンから、cell-free DNAの主な細胞源は好中球であることが示された。全血トランスクリプトーム解析により、NMOSD患者の全血では健常者と比べて好中球が活性化されていることが明らかになった。さらに、NMOSD由来の血清刺激で、好中球におけるNETosis誘導の増強が観察され、ホスホジエステラーゼ阻害剤であるジビリダモールによってNETosisが有意に薬理学的に阻害されることが観察された。
〔総括(Conclusion))
本研究により、これまで明らかにされていなかった好中球が放出するcell-free DNAによるNMOSDにおけるIFN-1経路活性化の誘導機構における役割が明らかとなり、NMOSDの新たな薬理学的標的として好中球の存在が示唆された。