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金属ナノ粒子担持配位高分子における担体効果

吉丸, 翔太郎 YOSHIMARU, Shotaro ヨシマル, ショウタロウ 九州大学

2020.03.23

概要

金属ナノ粒子担持触媒を用いた不均一触媒反応においては、金属ナノ粒子と担体との間の電子的相互作用や担体による反応基質の吸着、分子篩効果などの担体効果によって触媒活性が変化することが知られている。他方、近年では、高い設計性や多様性を併せ持つ細孔性物質である配位高分子を、新たな触媒担体として適用する研究が広く行われている。しかしこれまでに、配位高分子が触媒担体として分子篩効果を示すことは明らかにされているものの、その他の担体効果について系統的に研究された例はない。そこで本論文では、白金ナノ粒子を複数種類の配位高分子に同様に担持した金属ナノ粒子-配位高分子複合体を作製し、これらの電子状態や吸着特性、触媒活性などを系統的に評価することで、配位高分子の触媒担体効果について明らかにすることを目的とした。特に、電子的相互作用に由来する担体効果については CO 酸化反応を、反応基質の吸着に由来する担体効果については酢酸還元反応をモデル反応として選択し、実験を行った。

・白金担持配位高分子の作成 (Chapter 2)
本章では、同様な白金ナノ粒子をそれぞれ担持した配位高分子複合触媒の作製を目的とする。触媒担体として、複数種類の熱安定性配位高分子 (MIL-125-NH2、UiO-66-NH2、 HKUST-1、MIL-101、 Zn-MOF-74、 Mg-MOF-74、MIL-121 等)の合成を行った。得られた試料に対してアークプラズマ蒸着法を用いることで、白金ナノ粒子を担持した触媒 (Pt/MIL-125-NH2、Pt/UiO-66-NH2、Pt/HKUST-1、Pt/MIL-101、Pt/Zn-MOF-74、Pt/Mg-MOF-74、Pt/MIL-121) を作製した。

走査透過型電子顕微鏡 (STEM) 観察と誘導結合プラズマ発光分析 (ICP-AES) によって、担持された白金ナノ粒子の粒径と担持量を評価した。その結果、図 1 に示すようにいずれの試料においてもそれぞれ約 2.0 nm, 0.5 wt%の白金ナノ粒子が均一に分散して担持されていることが明らかとなった。以上のような結果から、複数種類の配位高分子に対して同様な白金ナノ粒子を担持した触媒の作製に成功したことがわかった。

・電子的相互作用に由来する担体効果 (Chapter 3)
本章では、電子的相互作用に由来する担体効果について系統的な評価を行うことを目的とする。図 1 Pt/MIL-125-NH2 の STEM 像と
粒径分散のヒストグラム前章で作製した触媒のうち、特に Pt/Zn-MOF-74、Pt/Mg-MOF-74、Pt/HKUST-1、Pt/UiO-66-NH2 を選択し、これらの試料の担体の電子物性を評価するため、紫外光電子分光 (UPS) 測定および密度汎関数法(DFT) を用いた第一原理計算を行い、担体の電子供与性を求めた。また、X 線光電子分光 (XPS) 測定により主に Pt4f 軌道の電子の結合エネルギーを測定することで、担持された白金ナノ粒子の電子状態を評価した。

UPS 測定及び DFT 計算の結果から、作製した配位高分子担体の電子供与性は Zn-MOF-74 ≒ Mg-MOF-74 > HKUST-1 > UiO-66-NH2 の順に高いことが分かった。また XPS 測定によって、担持した白金ナノ粒子の電子状態がその配位高分子担体の電子供与性に応じて変化していることが明らかとなった。以上のような結果から、両者の間で電子移動が起きていることが示唆された。そして、触媒金属の電子状態に敏感であることで知られる CO 酸化反応に対して、作製した白金ナノ粒子-配位高分子複合体を適用し、その触媒活性を評価した。その結果、CO 酸化触媒活性も Zn-MOF-74 > Mg-MOF-74 > HKUST-1 > UiO-66-NH2 の順に高いことが分かり、より還元されている白金粒子ほど高い CO 酸化触媒活性を示すことが明らかとなった (図2)。以上のような結果から、金属ナノ粒子と配位高分子担体との間での電子移動により触媒能を制御可能であることを見出すことに成功した 。

・反応気質の吸着に由来する担体効果 (Chapter 4)
本章では酢酸還元反応を通して反応基質の吸着に由来する担体効果を見出すことを目的とする。まず 12 種類の配位高分子 (DUT-5、HKUST-1、MIL-101、MIL-121、MIL-125、MIL-125-NH2、Mg-MOF-74、Zn-MOF-74、UiO66、UiO-66-NH2、ZIF-8、ZIF-67) を合成し、酢酸蒸気の導入を通して、これらの酢酸耐性を評価した。その結果、7 種の配位高分子(HKUST-1、MIL-101、MIL-125-NH2、Mg-MOF-74、Zn-MOF-74、UiO-66-NH2、MIL-121)が酢酸耐性を有することを見出した。これらの配位高分子の酢酸吸着特性を評価するため昇温脱離-質量分析 (TPD-MS) を行い、吸着された酢酸分子が配位高分子から脱離する温度を測定した。その結果、Zn-MOF-74、Mg-MOF-74、MIL-121 は酢酸の脱離に由来するピークを示さず、ほとんど酢酸の吸着能が無いことが示唆された一方で、MIL-125-NH2 と UiO-66-NH2 はそれぞれ 100 ℃–150 ℃、75–100℃の比較的高い温度領域に脱離ピークを示し、強く酢酸と相互作用していることが示された。更に、これらの配位高分子に同様な白金ナノ粒子をそれぞれ担持した触媒を酢酸還元反応に用いたところ、酢酸との強い相互作用が示唆された MIL-125-NH2 と UiO-66-NH2 を担体として用いた Pt/MIL-125-NH2 と Pt/UiO-66-NH2 は他の白金ナノ粒子担持配位高分子触媒と比較して顕著に高い触媒活性を示すことが分かった。特に Pt/MIL-125-NH2 はそのエタノール収率において、既知の最高活性触媒である Pt/TiO2 を凌駕する性能を示した(図 3)。以上のような結果から、配位高分子担体による酢酸吸着能によって担持白金ナノ粒子の触媒性能を大きく向上させられることが初めて明らかとなった。

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参考文献

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