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Myh9 R702C is associated with erythroid abnormality with splenomegaly in mice

兼松, 毅 名古屋大学

2022.07.05

概要

【緒言】
MYH9異常症は、MYH9遺伝子にコードされる非筋ミオシン重鎖IIA(ミオシンIIA)の異常により生じる常染色体顕性(優性)遺伝疾患である。血液学的特徴として巨大血小板減少やデーレ小体様の顆粒球封入体が知られているが、赤血球系細胞への影響については定まっていない。しかし近年、ミオシンIIAと赤血球系造血との関連を示唆する報告がいくつかのグループよりされている。そこで今回、MYH9異常症における赤血球および赤血球系造血の表現型について、MYH9異常症において最も高頻度に認められる遺伝子変異のひとつであるR702C変異を導入したマウスモデルを用いて検討した。

【方法】
当研究グループで過去に作成された、C57BL/6Jを背景にCreloxPシステムを用いて全身性にMyh9R702C変異を発現させたノックインマウスを用いた(R702Cマウス)。さらに、vav1-Creを発現するマウスとの交配によりR702C変異を血液系細胞特異的に発現させたノックインマウスを作出した(R702Cvav1マウス)。比較対照には野生型のC57BL/6Jマウスを用いた(WTマウス)。なお、各群ともに20週齢前後(±5週齢)の雄マウスのみを検討に用いた。

大動脈より全血を採血し、血算は全自動血算計により、血漿エリスロポエチンは市販のELISAキットによりそれぞれ測定した。骨髄細胞および脾臓細胞を採取し、既報の方法を用いてフローサイトメトリによる解析を行い、赤血球系細胞の分化状況を評価した。また、胎児肝細胞を培養し赤血球系へ分化させてフローサイトメトリによる解析を行ったほか、骨髄細胞を用いてコロニー形成試験も行った。

【結果】
血算では、R702Cマウス・R702Cvav1マウスはWTマウスと比較し、ともに血小板減少を認めた(MYH9異常症の形質に一致)ほか、ヘモグロビン低値をはじめとする赤血球系のパラメータの異常を認めた(Table1)。また、エリスロポエチンはR702Cマウス・R702Cvav1マウスともに高値を示したほか、R702Cvav1マウスで脾腫を認めた。

骨髄細胞から磁気ビーズを用いてCD45陽性細胞を除去し、フローサイトメトリを用いてTer119陽性細胞分画をFSCとCD44で展開したところ、R702Cマウスでは、FSC高値・CD44高値で表される幼若な赤芽球の分画(前赤芽球~正染性赤芽球まで)の割合がWTマウスに比し減少していた(Fig.1)。

骨髄細胞および脾臓細胞について、フローサイトメトリを用いてLineageマーカー陰性・c-kit陽性・Sca-1陰性・CD41陰性・Fcガンマ受容体II/III陰性の細胞分画をCD150とendoglinで展開したところ、R702Cvav1マウスの脾臓細胞では、CD150低値・endoglin高値で表される前赤芽球および赤芽球コロニー形成細胞(CFU-E)の分画の割合が、WTマウスに比し増加していた(Fig.2)。なお、脾臓細胞において、CD150高値・endoglin高値で示される赤芽球バースト形成細胞(BFU-E)の分画、およびCD150高値・endoglin低値で示される巨核球-赤血球前駆細胞(MEP)の分画には、R702Cvav1マウスとWTマウスの間で差を認めなかった。また、骨髄細胞においては上記すべての分画について、R702Cvav1マウスとWTマウスの間で差を認めなかった。

骨髄細胞を用いたコロニー形成試験でBFU-EおよびCFU-Eまでの分化を評価したが、R702Cvav1マウスとWTマウスの間で差を認めなかった。胎児肝細胞(E14.5)を用いた培養実験では、フローサイトメトリを用いて評価したBFU-Eから成熟赤血球までの分化について、R702CマウスとWTマウスの間で差を認めなかった。

【考察】
MYH9異常症は腎機能障害を呈するため、赤血球系への影響の評価においては腎性貧血の鑑別が必要である。今回、血液系細胞特異的にMYH9異常症を再現したR702Cvav1マウス、全身性に再現したR702Cマウスともに、WTマウスに比しヘモグロビン低値やエリスロポエチン高値を呈したことより、腎性貧血を除外した。

ミオシンII全てをbrebstatinによって抑制すると、赤血球系の分化が抑制されることが知られており、これはcytokinesisにおいてミオシンIIAが重要な役割を果たしているためと考えられている。他方、赤芽球の脱核においては、ミオシンIIAではなくミオシンIIBが主要な役割を果たしていることが知られている。以上より、cytokinesisに関連する分化段階に何らかの異常が存在することを想定して検討を行ったが、MEPから成熟赤血球までの分化において障害されている分化段階の特定には至らなかった。

近年、MYH9異常症の患者(ヒト)において赤血球の形態やMCHC、RDWに異常を認めることが報告されており、赤血球膜に異常をきたしていることも示唆されている。本研究においても低浸透圧刺激に対する赤血球膜脆弱性の評価を行ったが、R702CマウスとWTマウスの間で差を認めなかった。

造血幹細胞・前駆細胞の骨髄への生着を維持するためにミオシンIIAが必要であるとの報告があることより、残る可能性として、遺伝子変異により生じた異常なミオシンIIAが骨髄の造血微小環境に影響を与えたことが考えられた。本研究において、R702CマウスおよびR702Cvav1マウスではWTマウスに比し、エリスロポエチンが高値であるにもかかわらず骨髄中の赤芽球割合が減少していたこと、赤血球系分化における特定の分化段階の障害を同定できなかったことはこれに矛盾しないと考えられるものの、さらなる検討が必要である。

【結論】
MYH9異常症(R702C変異)モデルマウスは、脾腫を伴って赤血球系の異常を示した。既報の情報からcytokinesisへの影響を想定し検討を行ったが、赤血球系分化において異常を生じている段階を同定することはできなかった。

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参考文献

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