経頭蓋磁気刺激法を用いたてんかんの臨床評価に関する研究
概要
経頭蓋磁気刺激法(TMS, transcranial magnetic stimulation)を用いたてんかん患者における臨床評価の指標について,探索的な検討を行った.まず,てんかん患者に対して単発刺激・二発刺激を用いた運動閾値,cortical silent periods(CSP),短潜時皮質内抑制(SICI, short interval intracortical inhibition),皮質内促通(ICF, intra cortical facilitation),長潜時皮質内抑制(LICI, long interval intra cortical inhibition)といった指標について,てんかんの発作コントロール別に集計した.その結果,SICIに関してはてんかんの発作コントロールが不良である群にて,コントロールが良好な群および健常者群と比較して,その作用が有意に減弱していた.今後実用化を目指すにあたって解決すべき課題は多いものの,てんかん患者における薬剤治療反応性の評価に応用することが期待される.次に脳波同時記録経頭蓋磁気刺激試験(TMS-EEG, TMS-electroencephalogram)をてんかん患者において行った場合,症例数が少ないもののミオクローヌスてんかんの患者においては,TMSによって誘発される脳波変化(TEP, TMS evoked potentials)のN45,P60,N100の振幅が増大していた.同疾患では大脳神経細胞の興奮性増大が背景にあると考えられており,TEPの各成分の振幅がその興奮性の指標となる可能性が示唆された.
てんかん患者におけるTMSの各種指標の一部は,てんかんにおける臨床像や病態を反映している可能性があり,てんかんの新たな臨床評価手法として用いることが期待される.