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大学・研究所にある論文を検索できる 「Examination of the body composition of patients with Werner syndrome using bioelectrical impedance analysis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Examination of the body composition of patients with Werner syndrome using bioelectrical impedance analysis

田中, 文彦 名古屋大学

2022.07.01

概要

【緒言】
早老症として知られる常染色体劣性疾患であるウェルナー症候群(WS)は、思春期後の様々な加齢関連症状と加齢性障害の早期発症を特徴とする。WSでは、老化の加速による骨格筋量などの体組成に特徴的な変化を生じる可能性が示唆されているが、複数WS患者への体組成分析は、今までに二重エネルギーX線吸収分析法(DXA)とコンピューター断層撮影法(CT)を使用した1論文が報告されているのみである。近年、生体電気インピーダンス法(BIA)を用いた体組成分析機器が普及しているが、複数WS患者におけるBIAによる体組成に関する研究は報告されていない。

本研究の目的は、9名のWS患者にBIAによる体組成分析を行い、日本人参照データとの比較ならびに四肢骨格筋量指数(SMI)のサルコペニア基準との比較を行うことである。

【方法】
対象者は、WSと診断された9名(男性4名、女性5名、49.6±9.3歳、SD)であり、使用データは、性別、年齢、手指変形と足底潰瘍の有無、糖尿病治療薬、血清アルブミン・HbA1c・HOMA-Rなどの血液検査データ、体格指数(BMI)、各種体組成(四肢骨格筋量[SM]、両側の上肢・下肢の筋量[USM/LSM]、脂肪量[FM]、除脂肪量[FFM])である。体組成はセグメントマルチ周波数アプローチを使用するBIA(InBody®S10、In Body Japan、東京)を用いて測定した。身長補正された体組成指数(SMI、USM指数:USMI、LSM指数:LSMI、FM指数:FMI、FFM指数:FFMIkg/m2)は、SM、USM、LSM、FM、およびFFMを身長(m)の2乗で除算することによって算出した。WS患者のSMI、USMI、LSMIと日本人の参照データ(40-79歳、男性:16,379名、女性:21,660名)を比較検討するため、WS患者のSMI、USMI、およびLSMIを、性別および5歳毎の年齢階級別に対応する平均参照データと比較し、%(%SMI、%USMI、%LSM)で表した。また、BMI、SMI、身長補正脂肪量指数(FMI)、および除脂肪量指数(FFMI)を、日本の地域在住自立高齢者(65〜94歳、男性:2,145名、女性:2,333名)の参照データと比較した。WS患者のSMIは、AsianWorkingGroupforSarcopenia2019(AWGS2019)のサルコペニアの診断基準と比較を行った。統計分析は、Mann-Whitney Utest (SPSS, version28, IBMCorp, Armonk, NY, USA)を使用した。

【結果】
9名のWS患者の特徴を表1に示す。BMIは全てのWS患者で22.0kg/m2未満であり、男性よりも女性の方が有意に低かった(p<0.05)。WS患者の血清アルブミン濃度は4.0g/dl以上と正常範囲内であり、WS患者全員が糖尿病またはHOMA-Rより判定されたインスリン抵抗性を示した。図1は各WS患者の性別と年齢がマッチした日本の5歳毎の年齢階級別参照データ(100%)とSMI、USMI、およびLSMIの比較(%SMI、%USMI、および%LSMI)を表す。全てのWSケースで%SMI、%USMI、および%LSMIは100%未満であった。さらに、%USMIは%LSMIよりも有意に低かった(P<0.001)が、男性と女性のWS患者間で%USMIと%LSMIに有意差はなかった。WS患者のBMI、SMI、FMI、FFMIを、日本人高齢者の5歳毎の参照データと比較すると(図2、3)、男女ともWS患者のBMI、SMIならびにFFMIは日本人高齢者の85歳以上を含め全ての年齢階級よりも低値を示したが、特に女性WS患者のBMIは参照データと比較し、より低値であった。FMIは男性WSの4名のうち3名で高齢者参照データより高かったが、女性WSでは全員同参照データより低かった。男性WS(No.4)は他の症例に比較し、%USMI、SMI、FFMIは高値で、FMIは低値であった。全てのWS患者のSMIは、AWGS2019によるサルコペニア診断における男性7.0kg/m2、女性5.7kg/m2のカットオフ値を下回った。

【考察】
本研究では、BIAを用いて日本人WS患者の体組成を分析した。WS患者のSMIは、同じ年齢階級の日本人参照データ、および高齢者の参照データよりも低値で、AWGS2019の診断基準のサルコペニアレベルに低下していた。本研究で参考データとして用いたBIAを用いた日本人の体組成分析では、SMIの年齢依存的な減少を報告している。WS患者の老化に伴う症状の平均発症年齢は20歳代前後であるため、WS患者の骨格筋量も比較的若い年齢から減少し始める可能性がある。先行研究では、DXAを使用して9名の日本人WS患者の体組成分析を実施し、8名の参加者のSMIはAWGSによるサルコペニア診断のDXAのカットオフ未満であり、これは本研究でBIAによる体組成分析の結果と一致する。

今回参照データとして用いた先行研究では、健常日本人のUSMIとLSMIは年齢依存的に減少し、その減少は上肢よりも下肢で顕著と報告されている。本研究では、WS患者の%USMIまたは%LSMIに性差は認めず、%USMIは%LSMIよりも有意に低値であった。通常の自立高齢者とは異なり、WS患者の身体的特徴として、原因は不明であるが、LSMIよりもUSMIが低い可能性がある。

本研究で、WS患者は85歳以上の高齢者よりもBMI、SMI、およびFFMIが低かったが、WS患者の血清アルブミン濃度は全て正常範囲内であったことから、これらの体組成指数の低下は、低栄養によるものではない。一般に加齢が進むと、SMIとFFMIは減少し、FMIは増加するとされ、同様の変化は老化が進行したWS患者でも起こると考えられた。確かに男性WS患者は一名を除き高齢者のFMIより高値であったが、女性WS患者は全例高齢者参照データよりも低値であった。女性WS患者のBMIは男性WS患者よりも低く、地域在住高齢者のBMIよりも低いことが示された。他の体組成測定指標には性差はなく、女性のBMI低下の主な原因は、FMIの低下であると考えられる。BIAによる老化に伴う体組成変化の報告では、FMは成人よりも男女ともに後期高齢者では低いとの報告がある。WSの女性は男性よりもより老化が進行している可能性がある。

腹部CTを使用した先行研究では50歳以上の女性WS患者(本研究の女性WS患者と同様の平均BMI)で内臓脂肪蓄積が観察されている。本研究の限界の1つは、脂肪蓄積の分布を測定できなかったことであり、本研究におけるWS患者の内臓脂肪蓄積の有無については不明である。HOMA-Rを測定できた8名の被験者の研究では、SMIならびにFMIはHOMA-Rとの有意な相関を示さなかったため、インスリン抵抗性がWS患者のSMIおよびFMIに影響を与える主要な要因ではないことを示唆している。いずれにせよ、WS患者のFMIにおける性差の原因を明らかにするためにさらなる研究が必要である。

本研究参加者のNo.4の男性は、他のWS患者に比較し、SMI、FFMI、%USMIが高く、FMIが低値であった。本症例は長年上肢を含むレジスタンス運動を定期的に行っており、WS患者においてもレジスタンス運動は骨格筋喪失の予防に関連している可能性がある。

【結論】
日本人WS患者のBIAによる体組成分析でのSMIは、同じ年齢階級の参照SMIや、地域在住高齢者の参照SMIよりも低く、サルコペニアレベルに低下していた。さらに、WS患者は下肢よりも上肢でより著しいSMIの低下を示し、女性WS患者は、地域在住高齢者の参照データよりもFMIが低かった。また、1名の患者の経験に基づくが、継続したレジスタンス運動はWS患者のSMの減少とFMの増加を防ぐ可能性があることを示した。

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