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大学・研究所にある論文を検索できる 「Validity of “One-size-fits-all” Approaches for the National Health Screening and Education Program: A Large-scale Cohort Study of Corporate Insurance Beneficiaries」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Validity of “One-size-fits-all” Approaches for the National Health Screening and Education Program: A Large-scale Cohort Study of Corporate Insurance Beneficiaries

菊池, 京子 Kikuchi, Kyoko 名古屋大学

2022.03.23

概要

【緒言】
身体を動かさない生活と栄養過剰により、世界中で肥満者が増加し、その結果、心血管疾患による社会への負担が大きくなっている。したがって、リスクの高い個人を早期に発見し、効率的な介入を行うことが重要である。メタボリック症候群(MetS)とは腹部肥満を基盤として発症する動脈硬化性疾患が集積した病態のことであり、日本では中高年のMetSに着目して特定健診、特定保健指導が行われている。MetSの診断基準は性別でのみ分けられており、全ての年齢層において同一の診断基準となっている。しかし特に高齢者において正確にリスクを評価できる診断基準かどうかはわからず、この診断基準を高齢者に当てはめると栄養失調やサルコペニアなどの健康問題につながる可能性がある、と考えられる。この研究の目的は日本人中高年に向けた現在の特定健診と特定保健指導を検証するために、異なる性別と年齢層に対する固定化されたBMIと腹囲のカットオフ値の適用性を調べること、MetSについての特定保健指導をより効果的なものにするため、生活習慣の適切な改善点を特定することである。

【対象および方法】
対象は2004年1月から2014年12月まで毎年健康診断を受けた企業健康保険の加入者22953人、研究デザインは通常の健診で得られる健診結果を解析する後ろ向きコホート研究である。健診は問診、一晩絶食後の身体測定、採血を行った。腹囲は空腹時、立位、息を吐いた状態での臍レベルの胴囲を測定した。喫煙、飲酒、運動習慣といったその他の生活習慣情報については自記式アンケート調査を健康診断の際に実施し、収集した。日本のMetSの診断基準は、腹囲が基準を超え、さらに高脂血症、高血圧症、耐糖能異常のうち2つ以上のリスク要素を満たすものと定義される。アウトカムを「MetS診断の2つ以上のリスク要素がある状態」と定義し、解析1として腹囲およびBMIとアウトカムの横断的関連を調べた。また、解析2として生活習慣の経時的な変化が腹囲、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、空腹時血糖値、脂質(HDL・LDLコレステロール、中性脂肪)に及ぼす影響を縦断的に評価した。

【結果】
研究対象者の初回健診をベースラインと設定し、健診結果の要約をTable1に示す。様々な年齢および性別グループで2つ以上のリスク要素を持つための腹囲、BMIの最適なカットオフ値をTable2に示す。男性、女性とも年齢の上昇に伴って腹囲のカットオフ値も上昇する傾向を示した。MetSのリスク要素を2つ以上もつこととBMIまたは腹囲との関連をTable3に示す。腹囲(5cmの増加あたり)とBMI(1kg/m2の増加あたり)は年齢、性別、現在の喫煙、飲酒習慣、その他の生活習慣情報で調整したアウトカムと有意に関連しており、それぞれ腹囲のオッズ比1.17、BMIのオッズ比1.10であった。性別、年齢で層別化した、BMIまたは腹囲とアウトカムの関連をFigure1に示す。男女問わず、また、どの年齢層でも腹囲またはBMIが大きくなるとMetS要素を2つ以上保持する確率がほとんど線形に高くなっているが、それぞれのグラフを見ると、年齢と性別によってその関連の強さが変化しているのが示されている。(A)腹囲が大きくなるほどMetS要素数が増える、という関連は男性で顕著とわかり、Pinteraction=0.033、(D)BMIが大きくなるほどMetS要素数が増える、という関連は55歳未満で顕著であるとわかりPinteraction=0.049であった。生活習慣要因によるBMIと腹囲の予測される変化をFigure2に示す。現在の喫煙、飲酒習慣、不健康な食習慣(早食い、遅い夕食、夜食)、20歳時から10kg以上の体重増加は腹囲とBMIの増加に関連しており、定期的な身体活動(毎日30分以上・週2回以上の軽く汗をかく運動習慣、毎日歩行または同等の1時間を超える運動習慣、同年齢の同性と比較して歩行速度が速いか否か)は腹囲とBMIの減少に関連していた。

【考察】
解析1ではBMIまたは腹囲の値が高いことは、MetSのリスク要素が2つ以上に増えることと関連しており、これらの関連性は年齢と性別によって変化することを明確に示した。内臓肥満(腹囲)がMetSリスク要素に与える影響度合いが、性別においては男性が高いと判明した。これは、男女で腹壁の筋緊張が違うことなどで腹囲と内臓脂肪量の関係が異なるからかと考えられる。同様に肥満(BMI)の影響度合いは年齢においては中年期の方が高いと判明したが、これは年齢とともに体組成が変化することでBMIが脂肪量とずれてくるからかと考えられる。これらの結果より、現在の、性別でのみ分けられた腹囲のカットオフ値を用いた基準は最適なものではなく年齢と性別の両方を考慮した新しい健康増進戦略が必要と考えられる。解析2では生活習慣の情報とBMIおよび腹囲との長期的な関連性を示した。つまり、定期的な運動習慣や、早食いや深夜のおやつを避けるなど、適切な生活習慣、または生活習慣の改善点を特定した。これにより、腹囲またはBMIが低下し、個人のMetSリスク要素が増えるのを防ぐことができると思われる。腹囲またはBMIの影響は性別や年齢層によって異なるが、これらの生活習慣の改善はどの性別、年齢層でもおしなべてMetSリスク要素を減らすのに役立つ可能性がある。既報との比較では、この研究の企業健康保険は75歳までの高齢者を対象としており、中高年だけでなく、現在日本で定年を迎える65歳以上の方からもデータを得ることができた点、日本でのこれまでの多くの産業保健研究はジェンダーバランスが取れていなかったが、このコホートにはかなりの割合の女性が含まれていた点(男性54%、女性46%)、横断的解析だけでなく、縦断的解析も行い、継続的な生活習慣情報とMetS要素との関連を調べたことにより日本の健康政策に基づいた均一なカットオフ値とMetS要素の横断的な関連だけではなく、BMIまたは腹囲の変化に焦点を当てることができた点が特徴的であった。この研究のlimitationは、心血管疾患の発症、入院、死亡などのイベントの臨床情報がなく腹囲とBMIの臨床的関連性を完全に評価はできていない点、すでに疾患をもつ方は健診に参加せず比較的健康な方が登録された可能性がある点(選択バイアス)、ヘルスリテラシーは年齢層によって異なる可能性がある(現役時は従業員として健診を受けることが義務付けられているが、定年後はそれほど健診を受けなくなる可能性がある)点が挙げられる。

【結語】
腹囲またはBMIとメタボリックシンドロームとの関連は性別または年齢層によって変化することを示した。また、腹囲またはBMIを減らすための適切な生活習慣の改善点を特定した。年齢および性別に応じて特定健診および特定保健指導を実施するにはさらなる研究が必要である。

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