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大学・研究所にある論文を検索できる 「⾃然資源の持続的な管理における地域住⺠の主体的な役割の発展過程に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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⾃然資源の持続的な管理における地域住⺠の主体的な役割の発展過程に関する研究

加藤, 麻理子 東京大学 DOI:10.15083/0002006077

2023.03.20

概要





















加藤

麻理子

自然資源の管理は,現代における能動的な保全の取組の増加,観光的な利用の変化な
どをも踏まえると,地域の多様な主体の協働やガバナンスのあり方が重要となってきた。
主体的に活動し,他の関係者と積極的な役割分担や連携を築ける活動主体を増やすこと,
特に,地域住民が一定の役割を担うことが重要であり,その位置づけや参画を促す方策,
人材育成の進め方などの方法論を構築することが求められている。
本研究は,地域住民の参画と主体的な役割の推進に向けた示唆を得るため,具体的な地
域事例における取組の実施展開や参加者の意識実態の分析を通じ,地域住民の役割の発展
過程の捉え方を明らかにした研究である。対象地としては,独自の自然とともに継承され
てきた地域の生活,歴史,文化のつながりも含めた資質が重視され,地域住民の関与が重
要とされる沖縄島北部の「やんばる地域」をとりあげている。
そこで,本研究の目的としては,やんばる地域を事例として,①地域住民が参画する資
源管理の取組について,実施展開,内容タイプ,時系列変遷を明らかにすること,②取組
における地域住民の役割の発展過程を把握するための枠組みの検討に必要な要素を抽出す
ること,③抽出した要素から構成される枠組みを設定し,取組事例を検証するとともに,
その有効性を考察すること,④これらを通じて,自然資源の持続的な管理に期待される地
域住民の主体的な役割の推進方策を検討すること,と設定している。
2 章の地域における事業分析では,地域において自然環境行政の取組が本格化した 1995
年以降で,地域住民が参画する資源管理(保全・管理,利用を含む)に関する 21 事業を抽
出し,実施内容,関与対象者,対価等について時系列に分析・把握している。そして事業
種を,希少種保全,外来種対策,来訪者対応,フィールド管理の4つに区分し変遷を時系
列に把握・整理している。その結果,野生生物行政が先行してきたが,2010 年頃から総合
的な資源管理施策の体系的展開が進む中で,地域住民が参画する活動内容が多様化すると
ともに増加していること,2015 年からは地元の団体・NPO 法人がフィールド管理を担う取
組が増加し,協力金や林道通行管理試行の事例もみられるようになった点を指摘している。
そして次に 3 章では,上記の事業のうち地元 3 村で共通して展開された,やんばるマン

グースバスターズ,民泊,林道パトロール,森林ツーリズムガイドの4事業を取り上げ,
経済的関わり,参加者の知識・スキルの習得,交流・連携の要素,に着目して詳細分析を
行うとともに,参加者の詳細な意識実態について,林道パトロール参加者の意識変化の分
析と,森林ツーリズムの地元ガイド意識実態に関するアンケート調査を合わせて行ってい
る。これらを踏まえ,地域住民の役割とその発展過程を把握するための要素を検討,整理
した結果,
「経済的関わり」
「資源管理に対する意識」そして「内部連携の強化」「外部との
交流」の4要素を抽出している。
そして4章では,これら4要素に関する段階的な捉え方を検討するとともに 2 グループ
に区分し,各要素(軸)それぞれ3段階の枠組みを設定して上記4事業の展開を当てはめ
て有効性を検討している。グループ1は「経済的関わり」と「資源管理に対する意識」の
両軸により資源管理の活動の自立化を示す枠組みであり,グループ2は「内部連携の強化」
と「外部との交流」の両軸による人的交流の発展を示す枠組みと位置づけている。そして
詳細分析を行った4事業の変遷をこの枠組みに当てはめ,地域住民関与の発展動向の分析
を行なっている。さらに現地の活動組織と意見交換を行い,設定した枠組みの有効性につ
いて検討するとともに,軸の相互関係について考察している。そしてこうした地域住民の
参画に関わる発展動向は,先行研究で論じられている地域内外のアクターがゆるやかに連
携し活動を生み出す地域プラットフォームの形成を目指す動きとして捉えることができる
こと,また,この過程において地域の自然資源管理に関する個人の知識・技能に関する個
人知から地域全体で共有できる組織知を蓄積することが重要であると考察している。
以上を踏まえ,第5章で自然資源の持続的な管理に期待される地域住民の主体的な役割
の推進方策について総合的な考察を行っている。
以上,本研究は,経済的関わりと資源管理に対する意識,内部連携の強化と外部との交
流の要素から,資源管理の活動の自立化と人的交流の発展を経て,積極的な役割分担・協
働ができる主体的な役割を担う地域住民参加の発展過程を表す枠組みを設定,検証した研
究である。本研究で得られた枠組みと,事業分析を地域の自然環境特性や社会状況を踏ま
えて考究する方法論は,今後の自然資源管理に関する地域住民の参画を促すための政策と
計画論の研究および実践に大きな影響を与えるものと考えられ,学問上応用上寄与すると
ころが少なくない。よって審査員一同は,本論文が博士(農学)の学位論文として価値あ
るものと認めた。

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