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大学・研究所にある論文を検索できる 「Asymmetric Total Synthesis of (-)-Euonyminol Octaacetate」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Asymmetric Total Synthesis of (-)-Euonyminol Octaacetate

王, 瀛華 東京大学 DOI:10.15083/0002007105

2023.03.24

概要

























王 瀛華は、「Asymmetric Total Synthesis of (-)-Euonyminol Octaacetate ( (-)-オイオニミノールオク
タアセテートの不斉全合成)」のタイトルで、研究を展開した。以下に、その詳細を述べる。
ジヒドロ-β-アガロフラン類は、ニシキギ科の植物から単離される天然物群であり、これまでに
500 種類以上が報告されている。本天然物群は、共通骨格であるアガロフラン骨格上 (Figure 1, 0)
の酸素官能基の置換様式の違いによって多種多様な生物活性を示す。例えば、アガロフラン類とし
て最も多くの酸素官能基を有するオイオニミノールオクタアセテート (1)は、P 糖タンパク質阻害
活性が報告されているが、1 とアシル化様式が異なるハイポニン B (2)、 ヒッポクラテイン I (3)お
よびエベニホリン E-II (4)は、それぞれ抗 HIV 活性、抗癌活性および免疫抑制活性を示す。1 は、ト
ランスデカリン (AB 環)とテトラヒドロフラン環 (C 環)が特異に縮環した三環性骨格上に 4 個の四
置換炭素を含む 11 の連続した不斉中心と 10 個の酸素官能基が密集している。そのため、有機合成
化学的に極めて挑戦的な化合物である。王は、高酸化度アガロフラン類の網羅的合成法の確立を目
指し、1 を標的化合物とした合成研究を遂行し、1 の不斉全合成を達成した。
Figure 1. Highly oxygenated dihydro-β-agarofurans.

Scheme 1. (a) Previous synthetic study of ent-1. (b) Revised synthetic plan for 1.

王は本学修士課程において、当研究室で大量合成法が確立されていた ent-5 から A 環を構築し、
ent-7 を導いた(Scheme 1a)。しかし本合成法は効率性において課題を抱えていたため、新たな合成
計画を立案した (Scheme 1b)。まず、天然物に対応する絶対立体配置を有する 5 を合成するために、
出発原料を D-マンニトールから L-アスコルビン酸に変更し、5 を合成する。続いて、5 から 6 まで
の合成経路の収率向上を図る。アガロフラン骨格構築では、C 環を先に形成する。その後、閉環メ
タセシスにより A 環を形成し、8 を得る。最後に、8 から残る AB 環の官能基化を行うことで 1 を
全合成する。
はじめに王は、6 の合成経路を改善した(Scheme 2)。まず、エノン 5 のヒドロキシ基をアセチル保
護して 9 とした後、エノンをジヒドロキシ化することでジオール 10 を得た。C6, C7 位のヒドロキ
シ基をそれぞれ MOM 基で保護して 11 とした後、C7 位酸素官能基の E1cB 脱離とアセチル基の除
去によりエノン 13 を合成した。次に、13 の C8 位ヒドロキシ基を足がかりとして C7 位への炭素鎖
導入を行った。まず、13 に N-ヨードスクシンイミド存在下でメトキシアレンを作用させることで
ビニルヨージド 14 を合成した。14 をラジカル条件に付すと、分子内 5-exo ラジカル環化が進行し
てアセタール位に関する 2 つのジアステレオマー15α および 15β を与えた。本反応では、14 より生
じたビニルラジカルが C8 位置換基と同じ α 面からエノンに付加した後、生じる 5/6-cis 縮環構造の
convex 面である β 面から水素化が進行したと解釈できる。続くイソプロペニル基の付加による連続
四置換炭素構築も、15α および 15β の 5/6-cis 縮環構造の convex 面から反応が進行し、6α および 6β
をそれぞれ立体選択的に与えた。なお本付加反応において、15α に対する求核反応は Grignard 試薬
のみで進行した一方、15β に対しては塩化ランタン・ビス塩化リチウム錯体を添加する必要がある
ことを見出した。以上により、5 から 6 への変換の大幅な収率の改善に成功した。
Scheme 2. Installation of all carbon units necessary for the agarofuran skeleton.

次に王は、アガロフラン骨格を構築した(Scheme 3)。まず、6α および 6β のアセタールをそれぞ
れ加水分解した後、生じるラクトールを還元することでトリオール 16 を合成した。16 の第一級ヒ
ドロキシ基のみを嵩高い TBDPS 基で選択的に保護した後、ヨウ素を作用させると所望の C11 位立
体化学を有する環化体 17 が単一のジアステレオマーとして得られた。17 のヨウ素をラジカル条件
で還元的に除去して 18 とした後、C3 位ヒドロキシ基を酸性樹脂により選択的に脱保護してジオー
ル 19 とした。続いて、閉環メタセシスの基質であるジエン 21 の合成を行った。まず、19 の 2 つの
ヒドロキシ基を同時に酸化してケトアルデヒド 20 とした。このアルデヒド部位は強塩基条件下、
エノール化と続く E1cB 脱離により損壊することが分かっており、直接オレフィンへと変換するこ
とが困難であった。そこで、大平・Bestmann 試薬により 20 のアルデヒドをアルキンに変換した後、
Lindlar 触媒を用いた部分水素化によりジエン 21 へ導いた。閉環メタセシスによる A 環構築は、ル
テニウム錯体 Umicore M2 を用いることで進行し、アガロフラン骨格を有する 8 の合成を完了した。

Scheme 3. Construction of the agarofuran skeleton.

炭 素 骨 格 の 構 築 が 完 了 し た た め 、 全 合 成 に 向 け て AB 環 の 立 体 選 択 的 な 官 能 基 化 を 行 っ た
(Scheme 4)。まず、8 から合成した TMS エノールエーテルを Rubottom 酸化すると、C12 位メチル基
と逆側から酸化が進行して 22 が得られた。22 のケトンは、セリウム試薬存在下で面選択的に還元
され、23 を与えた。続いて 23 の cis-ジオールのアセトニド保護と TBS 基の除去により 24 とした。
立体障害が低減された 24 のラクトンを水素化リチウムアルミニウムにより還元した後、生じたト
リオールを TBS 保護することで 25 を得た。25 のジヒドロキシ化は、嵩高い TBS 基と反対側の α
面から進行し、ジオール 26 を単一生成物として与えた。これにより、1 の全ての酸素官能基と不斉
中心の導入を完了した。最後に 26 の保護基を酢酸及び TBAF を順次作用させることで全て除去し
た後、第三級以外の全てのヒドロキシ基をアセチル化することで 1 の不斉全合成を達成した。
Scheme 4. Total synthesis of (-)-euonyminol octaacetate (1).

分子の三次元構造に着目した戦略により既存の合成経路を改良した上で、アガロフラン骨格の新
規不斉合成法を確立し、アガロフラン類として最も多くの酸素官能基を有する 1 の不斉全合成を達
成した。本成果は、薬学研究に寄与するところ大であり、博士(薬科学)の学位を授与するに値する
ものと認めた。

最終試験の結果の要旨

氏名

試験担当者全員は王



瀛華

瀛華に対し、論文の内容およびその関連事項に関し、

種々試問を行った結果、合格と判定した。

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