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Development of dearomatizing Diels-Alder reactions and synthetic study of puberuline C

萩原, 浩一 東京大学 DOI:10.15083/0002004158

2022.06.22

概要

1. 脱芳香族型 Diels-Alder 反応の開発
【序】創薬研究上、重要な天然物群であるテルペン、ステロイド、糖やマクロライドなどは、その構造中に sp3 炭素を豊富に有する。この sp3 炭素によって分子の三次元構造が規定されることで、標的タンパク質に高選択的に選択的に作用する。従って、sp3 炭素を豊富に含む構造を構築する手法の開発は、有機化学および創薬研究上重要な課題である。芳香族化合物をジエンとして用いる Diels-Alder 反応は、複数の sp3 炭素を 1 工程で導入可能な有用な反応である。しかし、本反応では脱芳香族性を伴うため、その収率が低く、また、過酷な反応条件が必要になるという課題がある。

【計画】LUMO エネルギーの低い親ジエンを利用すれば、脱芳香族型の Diels-Alder 反応を収率良く進行させることができると予想した。すなわち、電子求引基であるフッ素原子を導入し、反応性を向上させたペンタフルオロフェニルマレイミド 1 を親ジエンとして用いて、収率を向上させる計画を立てた。

【方法・結果】検討の結果、o-ジクロロベンゼン中、200 °C でマイクロ波を照射することで、ナフトール誘導体2 と 1 の脱芳香族型Diels-Alder 反応が良好な収率で進行した。本反応においては、いずれの場合もエンド体 3 がエキソ体 4 に優先し、従来の無水マレイン酸を親ジエンとした手法 1 と比較して、良好な収率で生成物が得られた。本反応は様々なナフトール誘導体に利用可能であり、高い酸化段階を有したビシクロ[2.2.2]オクタン骨格が高収率にて構築できる 2。

2. プベルリン C の全合成研究
【序】プベルリン C (5) は、キンポウゲ科の植物 Aconitum barbatum var. puberulum から単離された C19 ジテルペンアルカロイドである3。5 は、高度に縮環した6 環性骨格上に、 3 個の第四級炭素を含む 12 個の連続する不斉中心を有する。そのため、その全合成は有機合成化学的に極めて挑戦的な課題である。私は、5 の効率的な 6 環性骨格構築法の確立および 5 の全合成を目的に研究を行った。

1. モデル化合物を用いたプベルリン C の骨格構築法の確立
【計画】5 の短工程での全合成へと適用可能である効率的な骨格構築法の確立を目的とし、モデル化合物として 6 を設定した。6 は、C1, 5, 6, 7 位の酸化段階のみ 5 と異なるものの、5 の合成に必要な 6 環性骨格の構築法の確立に適した構造を有する。私は、修士課程において鍵反応として、タンデムラジカル環化と向山アルドール型の環化反応を用いた 6 の合成を実現し、5の特異な 6 環性骨格の化学構築に初めて成功した。しかし、本合成経路は収率の低い変換が複数存在した。そこで、全合成へと応用可能な骨格構築法の確立に向け、各反応の最適化を行った。

【方法・結果】11 から 3 つの炭素ユニットの導入を含む 9 工程の変換により、ラジカル前駆体であるブロミド 12 を合成した(Scheme 1)。12 をトルエン中加熱還流下、水素化トリブチルスズと V-40 で処理したところ、タンデムラジカル環化が進行し、5 環性化合物 16 が 54%の収率で得られた。本反応により、2 つの環構造と、2 つの第四級炭素を含む 5 つの立体中心の同時構築に成功した。本反応の反応機構の妥当性を計算化学的手法により検証し、反応の全過程が十分進行することを明らかとした。続いて、16 からD 環の構築を経て、モデル化合物 10 を合成した。16 のケトンをシリルエノールエーテルに変換し、四塩化スズを作用させたところ、向山アルドール型の環化反応によるD 環構築が進行し、6 環性化合物 18 が単一の立体異性体として得られることを見出した。最後に、CD 環の立体選択的な官能基変換を経て、モデル化合物 10 の合成を総 18 工程で達成した 4。

2. プベルリンC の全合成に向けた高酸化度ラジカル前駆体の合成
【計画】前節のモデル研究で確立した骨格構築法を応用し、高酸化度の基質を用いたプベルリン C (5)の全合成を計画した(Scheme 2)。この際、ラジカル発生源となる官能基としてカルボン酸を有する基質 13 と、臭素原子を有する基質 14 の 2 つを設定した。13 および 14 は同じ 3 種類の炭素ユニットの導入を経て、それぞれ 11 および 12 から合成できると考えた。13 および 14 から橋頭位ラジカルを発生させ、タンデムラジカル環化が進行することで、5 環性化合物 15 を得る。15 から向山アルドール型の環化反応によるD 環の構築を経て、5 が全合成可能である。

【方法・結果】まず、カルボン酸の合成を試みた(Scheme 3)。16 から 11 工程で変換できる、既知の 175,6 の末端オレフィンを異性化させ、11 を得た。その後、C1 位の官能基変換を行い、メチルエーテル 18 とした。続いて、3 種類の炭素ユニットの導入を行った。オゾンを用いて 18 のオレフィンを酸化的に開裂し、TMEDA 存在下、生じたアルデヒドにTMS アセチリドを作用させたところ、付加反応が円滑に進行し、ラクトン 20 を主生成物として得た。TMS 基を除去した後、得られたアルキン 21 に対し、薗頭反応により C 環を連結し、3 環性化合物 22 を合成した。22 の内部アルキンを、位置選択的、立体特異的にヒドロスタニル化した。導入したスタニル基を Stilleカップリングによりアリル基へと変換し、23 へと導き、5 の骨格構築に必要な全炭素の導入を実現した。四酸化オスミウムを用いて、末端二重結合を化学選択的にジヒドロキシ化することで、ジオール 24 を得た。続いて、アセタールの合成に向け、ジオール 24 の酸化的開裂を試みた。しかし、過ヨウ素酸または四酢酸鉛のいずれを用いた場合も、所望のアルデヒド 25 は得られなかった。種々検討したが、天然物に含まれる C6 位酸素官能基を有するカルボン酸の合成は困難だった。

上記の結果から、モデル研究と同様に、ラジカル発生源として臭素原子を用いる必要がある。臭素原子を有する AE 環を効率的に合成するため、合成序盤に臭素原子を導入することとした。

鍵中間体 12 の合成を Scheme 3 に示す。まず、16 に対してメチルエステルの導入を行い、26 とした。シリル基の 1,4-付加を TMSCl 存在下行い、得られたシリルエノールエーテルに対し、NBSを作用させることで所望のブロモケトン 27 をエノール 28 との混合物として良好な収率で得ることができた。27 および 28 を Mannich 反応させたところ、AE 環 29 が単一の立体異性体として得られた。29 の C1 位のシリル基をヒドロキシ基に変換したが、生成物は所望でない立体化学を有する 30 であった。そこで、塩基として DBU を用い、トルエン溶媒中 50°C に加熱することでエピ化を進行させた。得られたジアステレオ混合物は、2,6-ルチジンと TBSOTf を作用させることで、所望の立体化学を有するアルコールのみをシリル化し、31 へ導いた。立体的に混雑した 31 のケトンに対して、嵩が小さいトリメチルホスフィノ基を有する Wittig 試薬 7 を中性条件下作用させて 2 炭素ユニットを導入し、E 体および Z 体の不飽和ニトリル 32 を得た。32 の不飽和ニトリルとメチルエステルを同時に還元し、33 を合成した。最後に、1 級ヒドロキシ基をメチル化することで、シクロヘキセノンから総 11 工程で鍵中間体 12 の合成を達成した。共同研究者は、12 をラジカル前駆体へ誘導し、ラジカル条件に付すことで、鍵反応であるタンデムラジカル環化を実現し、 34 へと導き、5 に含まれる 5 環性骨格の構築に成功した 8。

【結語】私は、第一に、マレイミド 1 を用いた脱芳香族型 Diels-Alder 反応を開発した。第二に、プベルリンC(5)の合成研究を行い、モデル化合物 6 の合成を達成し、5 の骨格構築法を確立した。さらに、タンデムラジカル環化を鍵とした 5 の全合成に向け、臭素原子をラジカル発生源としたラジカル環化基質を効率的に合成した。合成序盤でケトン α 位へ臭素原子を導入し、中間体 12 を 16 から 11 工程で合成した。12 は 12 工程の変換により、5 に含まれる 5 環性骨格を有する 34 に誘導可能である。本研究により、ビシクロアミンの橋頭位部位への臭素原子導入法を確立し、C19ジテルペンアルカロイドの全合成に向けた中間体の効率的合成が可能になった。

参考文献

1) a)Takeda, K.; Kitahonoki, K.; Sugiura, M.; Takano, Y. Chem. Ber. 1962, 95, 2344. b)Takeda, K.; Hagishita, S.; Sugiura, M.; Kitahonoki, K.; Ban, I.; Miyazaki, S.; Kuriyama, K. Tetrahedron 1970, 26, 1435.

2) Hagiwara, K.; Iwatsu, M.; Urabe, D.; Inoue, M. Heterocyles 2015, 90, 659. 2) Ameri, A. Prog. Neurobiol. 1998, 56, 211.

3) Sun, L.-M.; Huang, H.-L.; Li, W.-H.; Nan, Z.-D.; Zhao, G.-X.; Yuan, C.-S. Helv. Chim. Acta 2009, 92, 1126.

4) Hagiwara, K.; Tabuchi, T.; Urabe, D.; Inoue, M. Chem. Sci. 2016, 7, 4372.

5) 鎌倉大貴, 東京大学修士論文, 2016.

6) 轟木秀憲, 東京大学博士論文, 2015.

7) Tsunoda, T.; Nagino, C.; Oguri, M.; Ito, S. Tetrahedron Lett. 1996, 37, 2459.

8) 島川典, 東京大学修士論文, 2019.

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