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大学・研究所にある論文を検索できる 「FOXO3a阻害活性を有する天然物JBIR-141の全合成および構造決定」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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FOXO3a阻害活性を有する天然物JBIR-141の全合成および構造決定

八十島 浩太郎 東北大学

2022.03.25

概要

筆者は強力なFOXO3a阻害活性を示すJBIR-141ref)(1)に注目し、作用様式解明を目的に分子プローブの創製を指向した1の全合成を検討した結果を論じている。

第1章「序論」では、生物活性化合物のファルマコフォアおよび作用機序の解明が創薬研究において重要であることを示し、新たな作用機序を有する抗白血病薬のシード化合物となりうる1の可能性について言及するとともに、1を基盤とした分子プローブの創製に向けた合成研究の重要性について述べることで本論文の目的と意義を明らかにした。

第2章「JBIR-141の第一世代合成」では1をオキサゾリン2、ニトロソヒドロキシルアミン前駆体3、テトラミン酸4に分割し、これらを合成終盤にて縮合する収束的全合成の計画を立て、はじめに各部分構造の合成を検討した(Scheme1)。
L-バリンから誘導した5の加水素分解により生じるカルボン酸に対し、直ちにアラニン誘導体を縮合することでβ-ケトアミド6に導き、塩基性条件下Dieckmann環化を行うことで望むテトラミン酸4の合成を完了した。また、ジペプチド7のメタンスルホン酸塩に対して、DASTを低温で作用させることによりオキサゾリン8を構築した後、加水素分解条件によりベンジル基を除去することで所望のオキサゾリンカルボン酸2を得た(Scheme2)。
また、L-ピログルタミン酸から誘導したβ-ケトエステル10に対してLiAlH(OtBu)3を用いた還元により生じるジアステレオマー混合物を低温でTBSエーテル化することでR体のアルコール12aを、K-selectride🄬を用いて立体選択的に還元することでS体のアルコール12bをそれぞれ良好な高額純度で合成し、12aから2工程を経てカルボン酸13aへと誘導した。調製した4と13をエステル化し、N末端にオキサゾリンカルボン酸2を縮合した後、遊離水酸基をアセチル化することでベンジルオキシアミン14とした。最後に、14の段階的な脱保護およびニトロソ化を行うことでJBIR-141の提唱構造(1)を得た(Scheme3)。しかし得られた化合物は4種類のジアステレオマー混合物であり、天然物は最もマイナーであった。

第3章「第一世代合成の問題点の考察およびJBIR-141の構造推定」では、1の第一世代合成法における二つの問題点(①7か所の立体化学のうち2か所の立体制御が不十分、②それら少なくとも一つが天然物と合成した1の間で異なること)について検討した結果、13,14,17位の立体化学は1の提唱構造と相違ないことに加えて25位が強酸性条件下顕著にエピメリ化を起こすことが確認された。そこで、立体制御が不十分な残る1か所の不斉中心を確定するため、3位と4位に由来する残る3つのジアステレオマーの合成について第2章の合成方法をもとに検討した。合成を完了した3,4-epi-JBIR-141および4-epi-JBIR-141のいずれにおいても天然物は含まれていなかった。一方、残るジアステレオマーである3-epi-JBIR-141(15)の合成を検討したところ、アセチル化の際にオキサゾリンが完全に開裂することが分かったため、25位のエピメリ化を回避することで不斉全合成に適用可能な第二世代合成法について検討を行うこととした。

第4章「3-epi-JBIR-141の合成」では、15をオキサゾリン、ニトロソヒドロキシルアミン、テトラミン酸それぞれの前駆体である16,13b,17に分割し、これらを縮合後①アセチル②オキサゾリン③テトラミン酸④ニトロソヒドロキシルアミンの順に構築する計画を立てた(Scheme4)。第一世代合成から大きく変更があった部分構造17の合成について検討した。βケトエステル20に対して、TMADを用いた光延反応条件下O-アルキル化を行い位置および立体選択的にベンジルビニルエーテルを合成し、アリル基の除去により生じるカルボン酸21をN-メチルアラニン誘導体と縮合させた後にTBS基の除去を行うことで17の合成に成功した(Scheme5)。
カルボン酸13bとアルコール17をTCFHおよびDMAPにより酸塩化物経由で縮合させることでエステル22を得た。22に対してTMSOTfを用いたBoc基の除去を行うことで生じるアセトンイミンおよびTMSエーテルを有する中間体に対して、メトキシアミンを用いたイミンの交換反応を行うことによりN末端の脱保護を行いアミンとした後、ジペプチド16とHATUを用いて直ちに縮合することでアミド18に変換した。得られた18のアルコールをアセチル化した後TBAFを用いたTBS基の除去を行い、生じるアルコールに対して1等量のメタンスルホン酸存在下DASTを作用させることでオキサゾリン23へと変換することに成功した(Scheme6)。得られた23に対してリチウムブロミド存在下接触水素化を行いCbz基およびベンジル基を除去し、得られたベンジルオキシアミンをN-ニトロソ化に続くカリウムtert-ブトキシドを用いたDieckmann環化によりベンジル基が脱離した3-epi-JBIR141(15)の合成を達成した(Scheme7)。15は天然物を含まない2種類のジアステレオマー混合物であったことから、3位と4位の立体配置は提唱構造と相違ないことが確認された。

第5章「JBIR-141の第二世代合成による全合成」では、原料として13aを用いて第二世代合成法の最適化を行うことによりJBIR-141(1)の全合成を検討した。13a,16,および17から導かれるβ-ケトアミド24に対して亜硝酸ブチルを作用させたところ、亜硝酸エステルを経由したDieckmann環化が中性条件下進行し、単一の立体異性体としてテトラミン酸25が得られた。25に対してエタノール溶媒中10%パラジウム-炭素を用いて加水素分解を行ったところJBIR-141(1)とブロモ体26の混合物が得られた。得られた1は天然物と各種データの良い一致を示したことから1の全合成を達成した。今後は合成終盤における、加水素分解の際に用いるリチウム塩の影響についての検討を行い、得られた1の生物活性について調査する予定である。

第6章「結論」では、本論文を総括した。

参考文献

Ref) Kawahara, T.; Kagaya, N.; Masuda, Y.; Doi, T.; Izumikawa, M.; Ohta, K.; Hirao, A.; Shin-ya,

K. Org. Lett. 2015, 17, 5476–5479.

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