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大学・研究所にある論文を検索できる 「Feasibility of patency capsule and colon capsule endoscopy in patients with suspected gastrointestinal stenosis: a prospective study」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Feasibility of patency capsule and colon capsule endoscopy in patients with suspected gastrointestinal stenosis: a prospective study

大塚, 裕之 名古屋大学

2021.07.20

概要

【緒言】
 2000 年に小腸カプセル内視鏡検査(SBCE)が登場したことで、小腸疾患の診断は劇的な変化と進歩を遂げた。現在、日本では大腸カプセル内視鏡検査(CCE)が行われている。SBCE や CCE の合併症で最も多いのは、消化管の狭窄部の口側にカプセル内視鏡が 2 週間以上留まる滞留である。SBCE の滞留を回避するために、SBCE カプセル内視鏡と同じ大きさで 100~200 時間以内に消化管内で崩壊するパテンシーカプセル(PC)が 2012 年 7 月に日本で導入された。PC で消化管全体の開存が確認された場合に SBCE を安全に行うことができる。PC によりクローン病(CD)や腹部放射線治療を受けた患者など消化管狭窄を有する患者でも SBCE が可能となった。全大腸検査として大腸内視鏡検査は現在でもゴールドスタンダードであるが、CCE は最も重要なツールの一つである。CCE での大腸全体の観察率は 70~100%と報告されており、大腸内視鏡検査に匹敵する。また CCE は小腸を含む全消化管を観察することが可能であり、今後ますます普及し発展していくことが期待されている。しかし、CCE は消化管のどの部位にも滞留する可能性があり、他の装置では開存性を確認することができない。本前向き研究では、消化管狭窄が疑われる、または既知の患者における CCE の滞留の可能性を予測するための PC の有用性を検討した。

【対象および方法】
 対象は 2016 年 2 月から 2018 年 4 月までに募集された。選択基準は 18 歳以上で消化管狭窄が疑われるが CCE を受けることを希望した患者とし、除外基準は使用する薬剤に対する過敏症の病歴、嚥下障害、心臓ペースメーカーや電気医療機器の留置、急性腹症の疑い、重度の便秘の患者とした。
 PC plus CCE レジメンの詳細を Table 1 に示す。患者には検査 2 日前の就寝前にセンノシド 24mg と PC を内服した。前処置は検査前日の朝食から開始した。残渣の少ない食事を摂り、就寝前にクエン酸マグネシウム 50g、水 180ml、センノシド 24mgを服用した。CCE 検査当日の午前 8 時 30 分にポリエチレングリコール(PEG)溶液にアスコルビン酸を加えた MOVIPREP 500ml と水 250ml を飲んだ。1 時間後の午前 9時 30 分に CCE カプセルを飲んだ。ブーストは1回目にヒマシ油 30ml と水 100ml、 2 回目に MOVIPREP 1500ml と水 1500ml、3 回目にヒマシ油 30ml と水 100ml、4回目にクエン酸マグネシウム 50g と水 900ml とした。日本ではリン酸ナトリウムが利用できず、メインブースターとして MOVIPREP を使用しているため、このレジメンは現在日本では標準的なレジメンの一つとなっている。
 CCE である PillCam COLON 2 カプセルの大きさは 31.5×11.6mm で、両端にカメラが付いており、各カメラは 1 秒間に 2 つの画像を取得することができる。SBCEと同様に、PillCam COLON 2 カプセルは、撮影した画像を外部データレコーダに送信し、後で RAPID 8 ワークステーションにデータをダウンロードする。
 PC の PillCam パテンシーカプセルは、SBCE とまったく同じサイズで、CCE とほぼ同じサイズの自己溶解型ダミーカプセルであり、主に硫酸バリウムと無水乳糖で構成されている。PC は蠕動運動によって消化管を進み、重度の狭窄がない場合は自然に糞便中に排泄される。PC は内服してから 30 時間後、カプセルの表面に 2 つの小さな穴を開き消化液がカプセルに入ることで溶解が開始される。これは合併症なくカプセル内視鏡検査できる可能性を評価するのに役立つ。PC の最長径(26.0mm)は、CCEの最長径(31.5 mm)よりも短いが、PC の最短径(11.0mm)は CCE の最短径(11.6mm)とほぼ同じである。
 先行研究に従い、大腸洗浄レベルを「優れた/良い/普通/悪い」で分類した。「優れた/良い」レベルは適切であるとし、「普通/悪い」レベルは不十分であるとした。大腸洗浄レベルを右側結腸(盲腸、上行結腸)、横行結腸、左側結腸(下行結腸、S 状結腸)、および直腸の 4 つの部位で評価した。
 PC+CCE の検査結果を検討した。また、この研究と同じ期間に実施された臨床診療における通常の CCE を比較対象とし、通常の CCE と PC+CCE の検査結果を後ろ向きに比較した。主要評価項目は、消化管の開存性が確認された症例の検査時間内の全消化管観察率とした。副次的評価項目は検査における合併症と CCE 所見とした。

【結果】
 PC+CCE の結果
 研究デザインのフローチャートを Figure1に示す。本試験には全 23 例が登録され(Table 2、3)、PC による消化管の開存性の確認率は 96%(22/23)であった。CD 患者のうち 1 例は上行結腸の狭窄が原因で摂取から 33 時間以内に PC を排泄しなかった(Figure 2)。CCE による完全検査率は 86%(19/22)であった。電池寿命内にカプセルを排出しなかった患者は 3 例であった。CCE 所見では、潰瘍、びらん、憩室がそれぞれ 5 例、9 例、4 例で認められた(Figure 3、4)。
 通常の CCE と PC+CCE との結果の比較同期間に 52 名の患者に通常の CCE を実施した。通常の CCE 群と PC+CCE 群の結果を比較したところ、カプセル排出率と排出までの期間に有意差は認められなかった(Table 4)。大腸通過時間の中央値は、通常の CCE 群で 87 分、PC+CCE 群で 160分であったが、その差は統計的に有意ではなかった(Table 5)。小腸通過時間中央値は、通常の CCE 群と PC+CCE 群で有意差が認められた(58 分 vs. 99 分、P=0.004)。腸管洗浄は PC 群+CCE 群では 82%の患者で適切(優れた/良い)であったが、両群ともに左側結腸と直腸で減少が認められた(Figure 5)。

【考察】
 現在 CCE と同じ大きさの PC は存在しない。CCE は SBCE と同様に小腸全体を通過するが、狭窄病変によって滞留することもある。本研究の目的は、CCE に先行して PC を用いて消化管の開存性を評価することで、進行大腸癌やクローン病などの腸管狭窄の原因となる病変の存在を確認する可能性を明確にすることであった。SBCE と CCE は形状や直径が似ており、横方向の長さもほぼ同じである。これは開存性を評価する上で重要な要素であり、CCE は PC と同じ過程で通過できると仮定した。その結果、PC+CCE は安全であることが確認された。
 通常の CCE と PC+CCE の結果を比較するために、CCE の通過時間を評価した。小腸通過時間は PC+CCE 群で有意に長く、CCE の通過障害は小腸病変に依存している可能性がある。CCE は腸の準備が十分であれば、すべての所見を検出できることがわかった。Figure 4 に示すように、複数の憩室による消化管狭窄症の患者では大腸内視鏡検査で病変を指摘できなかったが、CCE では憩室病変が検出された。大腸狭窄の症例では、逆行性アプローチよりも順行性アプローチの方が良い場合もある。
 CD は小腸だけでなく大腸や直腸の潰瘍を伴う。CD に対する CCE の有用性は先行研究で報告されているが、PC は使用していない。CD 患者は予期せぬ CCE 滞留の危険性があるため、特に閉塞性症状のある患者、腸閉塞や手術の既往歴のある患者、または治療医の要望に応じて事前の PC を推奨すべきである。
 CCE 検査前に問診を含めた任意の方法で消化管の開存性を評価することで、 NSAIDs による狭窄、腸結核、吻合部位の狭窄などにより起こりうる CCE の滞留を防ぐことができる。本研究では CCE 前のもう一つの評価手段として PC の有用性が示された。今後、消化管狭窄が疑われる患者の増加に伴い、CCE では消化管の開存性の評価がより重要になることが示唆された。開存性を正確に評価するためには、CCEに対応した大きさの PC の開発が待たれるところである。

【結論】
 本研究は消化管狭窄が疑われる患者に PC を用いることで CCE によって大腸病変を評価し得ることを示している。このことは、CD の患者に大きな利益をもたらすであろう。

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