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大学・研究所にある論文を検索できる 「好熱性クレンアーキアSulfolobus acidocaldariusのaLhr1ヘリカーゼの遺伝学的・生化学的解析および構造予測」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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好熱性クレンアーキアSulfolobus acidocaldariusのaLhr1ヘリカーゼの遺伝学的・生化学的解析および構造予測

鈴木, 匠爾 SUZUKI, Shoji スズキ, ショウジ 九州大学

2022.03.23

概要

本論文では、好熱性クレンアーキア Sulfolobus acidocaldarius をモデル生物として、相同組換え中間体として知られるホリディ分岐構造 DNA (Holliday junction) の分岐点移動ヘリカーゼの候補を解析し、遺伝学的および生化学的手法により、本酵素が相同組換え過程で働くことを示した。さらに、3次元構造予測によりこの新規ヘリカーゼの構造的な特徴およびヘリカーゼ機能の作用機序を考察した。

第一章の序論において、アーキア研究の意義、遺伝情報維持機能としてのアーキアの相同組換え機構を概説した。その過程において、Holliday junction の分岐点移動について詳細に述べ、これまでの生化学的解析結果をもとに 3 つの分岐点移動ヘリカーゼの候補として Hjm/Hel308、PINA、 archaeal long helicase related(aLhr)2 が報告されているが、いずれのヘリカーゼも実際に細胞内でどのように機能しているかは不明であることを指摘した。著者は、クレンアーキアの Saccharolobus solfataricus において、一本鎖 DNA 結合タンパク質(SSB)と相互作用する可能性のあるタンパク質候補の中に、機能未知のヘリカーゼ様タンパク質が含まれていることに注目した。 SSB は相同組換え過程に直接的に関与して効率的に相同組換え過程を進めることが予想されるので、本研究においてこのヘリカーゼ様タンパク質のホモログとして見つかった S. acidocaldarius の Saci_0814 にコードされるタンパク質の機能解明に取り組むことに至った経緯について記述した。

第二章では Saci_0814 の遺伝学的解析を行った結果について記載している。Saci_0814 がコードし得るタンパク質のアミノ酸配列を詳細に観察すると、スーパーファミリー2ヘリカーゼの中の aLhr に分類されるタンパク質に類似し、その中の4つのグループのうちで aLhr1 に特徴的なシステインリッチな配列を C 末端に有していた。したがって、このタンパク質を SacaLhr1(遺伝子名を alhr1)と名付けた。まず、Sulfolobus acidocaldarius を用いて alhr1 遺伝子欠失株の単離を行った。次に SacaLhr1 が相同組換えに関与しているのか調べるために、細胞外から遺伝子を導入して相同組換え頻度を調べ、その効率を野生株を用いた場合と比較した。その結果、alhr1 破壊株の相同組換え頻度は野生株に比べ約 5 倍低下していることを発見した。以上の結果から、SacaLhr1は細胞内において相同組換え過程に関与していると結論づけた。

第三章では SacaLhr1 の生化学的性質に関する解析結果について記載している。aLhr1 のグループに属するタンパク質の生化学的解析例はこれまでにどの種からも報告されていない。本論文において、まず alhr1 遺伝子を大腸菌における発現ベクター上にクローニングし、大腸菌細胞中で過剰発現させて SacaLhr1 を産生させた後、各種クロマトグラフィーを用いて高純度に精製することに成功した。この精製評品を用いて生化学的性質解析を行なった結果、SacaLhr1 は溶液中では単量体として存在し、ヘリカーゼにしばしば見られる環状6量体で機能する酵素とは異なること、一本鎖および二本鎖 DNA に依存的な ATP 加水分解活性を有すること、二本鎖 DNA を解くヘリカーゼ活性を有し、3′→5′へ方向性を示すこと、そのヘリカーゼ機能は ATP および Mg2+イオンに依存的であることを明らかにした。さらに、SacaLhr1 は人工オリゴヌクレオチドをアニールして作製した Holliday junction DNA に対して分岐点移動活性を示すことを発見した。しかしながら、分岐点特異的な DNA への結合能は確認されなかった。これらの性質から、SacaLhr1 は Holliday junction DNA の二本鎖 DNA 領域に結合し、二本鎖 DNA に依存的な ATP 加水分解活性によって駆動される二本鎖 DNA 上のトランスロケーションを介して分岐点移動活性を示すのではないかと考えた。遺伝学的・生化学的解析結果に基づいて、SacaLhr1 が細胞内において相同組換え過程に関与し、特に形成された Holliday junction の分岐点移動を担うヘリカーゼとして機能しているのではないかと予想した。

第四章では SacaLhr1 の3次元構造予測に関する結果について記載している。アミノ酸配列比較から、SacaLhr1 はバクテリア Long helicase related(Lhr)と共通に存在する 4 つのドメインに加えて、4つのシステインから予想されるフィンガー様モチーフ(Zn finger) とヘリックスターンヘリックスモチーフ(HTH)を含む配列を C 末端領域に有していることが予測されていた。この C 末端領域はアーキアの Lhr ファミリーの中でも、aLhr1 に特有である。著者はタンパク質立体構造予測プログラムである AlphaFold2 を用いて SacaLhr1 の構造予測を行った。得られた構造をバクテリア Lhr–ssDNA–AMPPNP–Mg2+複合体の結晶構造と重ね合わせ比較を行なった。SacaLhr1 には、バクテリア Lhr の構造で disorder していた領域に対応する位置に、アミノ酸配列からは予想できなかった Oligonucleotide Binding (OB)ホールドをとりうる領域を見出した。また、C 末端領域には予想された2つの HTH 構造が確認され、また aLhr1 に特徴的な4つのシステインは、他のヘリカーゼで報告されているものとは構造的に異なる Zn finger を形成している可能性が示唆された。 HTH および Zn finger は DNA 結合モチーフとして知られている。S. acidocaldarius において、CTDを持たない aLhr2 の遺伝子欠失株では相同組換え効率の低下は確認されていないため、aLhr1 の CTD は細胞内における相同組換え機能に特異性を示す可能性がある。また、類似した OB ドメインを有するバクテリアの MrfA で、一本鎖 DNA を捕捉するための構造変化に OB ドメインが関与していると報告されている。以上のことから、SacaLhr1 は CTD で Holliday junction の二本鎖 DNA領域に結合し、OB ドメインが二本鎖 DNA を捕捉するための構造変化に寄与することで、SacaLhr1が二本鎖 DNA 上でより安定となり、その後の二本鎖 DNA に依存的な ATP 加水分解活性によって駆動されるトランスロケーションを介して分岐点移動活性が表れるのではないかと予想した。

以上のアーキアにおける新規ヘリカーゼの機能と活性に関する研究成果を要約し、第五章において結論として述べている。

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