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大学・研究所にある論文を検索できる 「大腸菌における複製開始促進因子DARS2 に依存したDnaA活性化の細胞周期制御および分子機構の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

大腸菌における複製開始促進因子DARS2 に依存したDnaA活性化の細胞周期制御および分子機構の解析

三善, 賢弥 MIYOSHI, Kenya ミヨシ, ケンヤ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

Cell cycle regulation and molecular mechanism
of DARS2-dependent DnaA activation system in
Escherichia coli
三善, 賢弥

https://hdl.handle.net/2324/6787548
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(創薬科学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(様式5)






論文題名



三善 賢弥

Cell cycle regulation and molecular mechanism of DARS2-dependent
DnaA activation system in Escherichia coli

(大腸菌における複製開始促進因子 DARS2 に依存した DnaA 活性化の
細胞周期制御および分子機構の解析)





:甲















細胞性生物において、染色体複製は細胞周期の特異的な時期に1度のみ開始するように厳密に制
御される。複製開始制御の破綻は、染色体コピー数の異常をもたらし、遺伝子発現の異常を誘起す
るのみならず、細胞のがん化や細胞死に至ることもある。そのため、染色体複製開始を制御する分
子機構の解明は、生物学的および薬学的に極めて高い意義を持つ。
私は大腸菌をモデル生物として、生化学および遺伝学的手法を用いて複製開始制御機構の解明を
目指した。大腸菌染色体の複製開始は、ATP 結合型 DnaA 蛋白質(ATP-DnaA)が複製起点で形成
する高次複合体によって進められる。また、細胞内の ATP-DnaA レベルが複製開始時をピークとし
て変動することが、適時的な複製開始を保証している。すなわち、複製開始が遂行されると、
ATP-DnaA が DNA 複 製 装 置 と 共 役 し た 系 に よ り 、 複 製 開 始 に 不 活 性 な ADP 結 合 型 DnaA
(ADP-DnaA)に変換される。その後、次の細胞周期の複製開始のため、ADP-DnaA は染色体上に
存在する DNA 因子 DARS2 においてヌクレオチド交換反応が促進され、ATP-DnaA に変換される。

DARS2 には 3 つの DnaA 結合配列(DnaA box)を含むコア領域と、核様体蛋白質 Fis の結合配列
(FBS2-3、FBS4-5)および核様体蛋白質 IHF の結合配列が存在する(図)。コア領域では、
ADP-DnaA が結合し、特異的な相互作用を促す。さらに、DnaA からの ADP 解離には、IHF の特
異的結合および Fis の FBS2-3 への結合が必須である。過去の解析から、IHF が複製開始直前期に
特異的に DARS2 に結合し、 DARS2 の機能を制御しうることが報告されていた。一方で、Fis の
FBS2-3 への結合が細胞周期に応じて制御されるかは不明であった。さらに、細胞周期に応じてこ
れらの核様体蛋白質と DARS2 の結合を制御する分子機構も不明であった。また各蛋白質が DARS2
に依存した ADP の解離とヌクレオチド交換を促進する分子機構についても不明である。
本論文では、初めに Fis と DARS2 の結合が細胞周期に応じて制御されるかを知るために、
Fis-ChIP および qPCR 解析を行った。その結果、Fis は複製開始直前に特異的に FBS2-5 の領域に
結合し、複製開始に伴って解離することを見出した。さらに、FBS2-3 の直下に存在する高親和性
DnaA box(DnaA box V)を DnaA 非結合配列に置換した変異株では、Fis が細胞周期を通じて常
に FBS2-5 に結合した状態になることを明らかにした。加えて、この変異株では、野生株と比較し
て染色体複製の開始頻度が上昇することも見出した。以上の結果から、DARS2 の機能が DnaA box
V に依存した Fis の結合制御を介して、細胞周期に応じてコントロールされることが示唆された。

次に、DARS2 の配列解析から、DnaA box V に隣接し FBS2-5 とオーバーラップする領域に新規

な低親和性 DnaA box クラスターを見出し(図;DnaA box V-a, b, c)、この領域に3〜4分子の
ATP-DnaA が DnaA box V に依存して複合体形成することをゲルシフト解析により明らかにした。
さらに、この ATP-DnaA 複合体の形成が Fis の結合を競合的に阻害することを DNA プルダウン法
を利用した新規な実験系で明らかにした。さらに、この実験系を応用し、ADP-DnaA 濃度の上昇に
伴 っ て DnaA 複 合 体 の 形 成 が 阻 害 さ れ 、 Fis が 再 び 結 合 で き る よ う に な る こ と も 見 出 し た 。
ATP-DnaA は低親和性 DnaA box クラスター上で共同結合する一方、ADP-DnaA は共同結合しに
くい性質をもつため、このようなメカニズムが成り立つと考えられる。
次に、DARS2 でのヌクレオチド交換における Fis の機能の解明を目指した。Fis が複数の蛋白質
と相互作用し、機能を促進する性質に着目し、Fis と DnaA が相互作用する可能性を想定した。複
数の変異 Fis 蛋白質を用いて DARS2 再構成アッセイを行った結果、Fis の Gln68 残基が DARS2
の機能促進に重要であることを見出した。また、DnaA のヌクレオチド結合部位の近くに存在する
Phe239 残基が、 DARS2 に依存した ADP 解離に重要である可能性が示された。
本研究により、複製開始時に細胞内でピークに達した ATP-DnaA が Fis 結合領域でホモオリゴマ
ーを形成することにより、Fis の結合を阻害し、DARS2 の機能を抑制するという新規な制御機構が

示された。この DARS2 に対する負のフィードバック制御は、適時的な複製開始を保証するために

極めて重要なシステムであると考えられる。また、Fis は DARS2 の機能促進以外に、転写制御や

核様体構造の形成などにも寄与する。そのため、ATP-DnaA を介した Fis の DNA 結合制御機構は、
種々のイベントを細胞周期依存的に制御する機構として広く利用されているかもしれない。さらに、
本研究では、Fis が DnaA と相互作用することで、DARS2 の機能を促進しうることを示唆する結果
も得られた。Fis はこの直接相互作用によって、DnaA のヌクレオチド結合部位周辺を構造変化さ
せ、ADP の解離を促進するのかもしれない。真核生物の複製開始蛋白質も ATP/ADP の結合を介し
て活性制御される。そのため、本研究をさらに深めることで、広い生物種に普遍的な複製開始蛋白
質の活性制御機構の解明にも貢献する可能性がある。

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