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大学・研究所にある論文を検索できる 「Lewis score on capsule endoscopy can predict the prognosis in patients with small bowel lesions of Crohn’s disease」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Lewis score on capsule endoscopy can predict the prognosis in patients with small bowel lesions of Crohn’s disease

西川, 貴広 名古屋大学

2021.07.27

概要

【緒言】
クローン病(CD)患者の長期予後改善のためには、臨床的寛解のみならず粘膜治癒(MH)の達成が重要とされる。一方で、小腸を含む全消化管に病変を来たしうる CDにおいては、消化管粘膜の活動性評価を行うことが困難であり、MH の定義もいまだ明確なものは存在しない。従来、下部消化管内視鏡を用いた重症度評価が使用されているが、CD 患者の約 80%は小腸病変を有しており、1/3 の症例では小腸のみに炎症を有すること、空腸病変は予後不良との関連が報告されていることから、CD 患者の病状を十分に評価することは困難である。小腸カプセル内視鏡(CE)は低侵襲かつ簡便に全小腸の観察が可能であり、CD の消化管の活動性評価においても有効性が報告されている。また、ルイススコア(LS)は CE 所見に基づく小腸粘膜浮腫、潰瘍、狭窄からなるスコアリングシステムであり、LS >790 の CD 患者は高率にステロイド治療や入院を要することが報告されている。LS <135 が正常、135-790 は軽度、>790 は中等度から重度活動性と評価されるが、LS による MH の定義や治療強化の指標となるカットオフ値の報告はこれまでにない。我々は以前、LS>264 は CD 関連緊急入院を予測しうるカットオフ値であることを報告した。しかしながら、先の研究は CE 後に治療変更のなされなかった患者のみを対象とした後方視的な研究であり、カットオフ値の妥当性を前向きに検証する必要があると考えられた。本研究の目的は CD 関連緊急入院と LS を含む予後因子の関連を検討し、同定されたリスク因子の妥当性を検討することである。

【対象と方法】
2010 年から 2017 年に、当院にて CD に対して CE を実施した 102 例において性別、年齢、罹病期間、病型、腸管切除歴、生物学的製剤使用歴、BMI、CDAI、血清 CRP 値、 Prognostic nutritional index(PNI)、LS と CD 関連緊急入院の関連を後方視的に検討した。続いて 2017 年から 2019 年の期間で、当院にて CD に対して CE を施行した 66 例の予後を前向きに検討し、抽出された予測因子の妥当性を検討した(Figure 1)。CE 後の治療方針は主治医の裁量で決定された。CD 関連緊急入院は症状増悪により、何らかの治療変更、内視鏡治療あるいは手術を要した予期しない入院と定義した。CE 実施に際して、全例でパテンシーカプセルによる消化管の開通性を確認した。CE の読影は 2 名の消化器内科医が担当し、LS をそれぞれ算出した。読影者間で結果が一致しない場合は、第 2 読影者から第 1 読影者にフィードバックされ、最終的なスコアは両者の合意に基づき決定された。

【結果】
後方視的検討における対象の臨床的背景を Table 1A に示す。CD 関連緊急入院と関連する因子の検討では、単変量解析においては、CDAI >150、血清 CRP 値 >0.3g/dl、 PNI <45、LS ≥270 が有意な因子であり、多変量解析では PNI <45 (HR 3.01, P=0.027)と LS ≥270 (HR 9.48, P=0.001)が独立予測因子であった(Table 2)。LS 270 と PNI 45 をカットオフ値とした生存解析を行うと、LS ≥270 群では LS <270 群の比して有意に累積 非緊急入院率、累積非症状再燃率が低く、同様に PNI <45 群では LS ≥45 群に比して有 意に累積非緊急入院率、累積非症状再燃率が低かった(Figure 2A, 2B)。また、LS ≥270 かつ PNI <45 の群では 72.2%に CD 関連緊急入院あるいは症状再燃を来たし、最も予 後不良であった(Table 3、Figure 2C)。さらに LS ≥270 であっても、CE 後に何らかの 治療介入がされた場合に、緊急入院率は有意に低減することが確認された(Figure 2D)。前向き研究における対象の臨床的背景は Table 1B に示す。CE 後の経過の検討では、 LS ≥270 の患者の 55%で治療強化がなされ、治療強化された群では、25%で症状再燃 を来たし、8.3%で緊急入院を要した。一方で治療継続となった LS ≥270 の患者では、 90%で症状再燃を来たし、50%で緊急入院を要していた(Figure 3)。LS 270 と PNI 45 をカットオフ値とした生存解析では、後方視的検討と同様に LS ≥270、PNI <45 の群で は、LS <270、PNI ≥45 の群に比して、それぞれ累積非症状再燃率、累積非緊急入院率 が有意に低く、また LS ≥270 であっても、CE 後に治療介入を行うことで、再燃リスク は有意に低下し、入院リスクも低下する傾向を認めた(Figure 4)。

【考察】
我々は、LS ≥270 が CD 関連緊急入院および症状再燃を予測することを示した。また、LS ≥270 であっても、CE 後に治療強化を行うことで、予後を改善させることを示した。本研究は、CD の増悪を予測し、治療介入の必要性の指標となりうる LS カットオフ値の初めての報告である。CD は臨床的寛解にあっても、消化管に活動性病変を有している場合が多く、そのような病変は、腸管合併症への進展をもたらすと考えられている。腸管合併症はしばしば入院や外科手術を要し、患者の QOL を著しく障害させる可能性がある。とくに小腸病変は症状や血清 CRP 値といった炎症マーカーに反映されにくいとされ、CE による小腸の活動性評価を行うことが重要であり、LS ≥270 の活動性を有する場合は、治療強化が必要である可能性が示唆された。また、CD 患者の多くは栄養障害を有していることが報告されている。今回、PNI <45 の栄養障害は、 CD 関連緊急入院および症状再燃に有意な関連を認めた。PNI による栄養評価は疾患活動性を予測するうえで、有用な指標になりうると考えられた。本研究では、LS ≥270かつ PNI <45 の患者群でとくに予後が不良であることが示され、内視鏡的活動性評価と栄養評価を組み合わせることで、より正確に CD 患者の予後を予測することが可能であることが示唆された。

【結語】
本研究において、LS ≥270 と PNI <45 は CD 関連緊急入院および症状再燃の有用な予測因子であり、LS 270 が治療介入を検討するカットオフ値である可能性が示された。これらの結果により、LS による内視鏡評価と PNI による栄養評価は、CD 患者における予後改善を目的とした治療戦略を決定する一助になると考えられる。

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