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大学・研究所にある論文を検索できる 「メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2aを介したB細胞活性化抑制機構と全身性エリテマトーデス治療への応用」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2aを介したB細胞活性化抑制機構と全身性エリテマトーデス治療への応用

石井 悠翔 東北大学

2020.03.25

概要

メチオニンの代謝経路は遺伝子発現制御に働くメチル化反応に深く関与している。メチル化に必要なメチル基の主な供給源は S-adenosylmethionine(SAM)であり、methionine adenosyltransferase 2a(Mat2a)はその合成酵素である。細胞分裂の際には、メチル化による遺伝子発現情報を維持する必要があり、新たに生まれる細胞のためのメチル基が必要となる。これに一致して、メチル基の合成に重要な Mat2a のプロモーター領域には NFκB や AP-1 といった B 細胞受容体の下流で、細胞増殖に関連する遺伝子発現も誘導する転写因子の結合配列が存在する。つまり、細胞分裂刺激が入るとメチル基を補うために Mat2a の発現が上昇して SAMが合成されることが示唆される。また、B 細胞分化や活性化において重要な遺伝子の発現もエピジェネティック修飾により制御されている。V(D)J 遺伝子組み換えやイムノグロブリンクラススイッチには、H3 lysine4(H3K4)のメチル化修飾が重要であることが報告されており、これらは B 細胞の分化や活性化に重要である。これらのことから、Mat2a はB 細胞分化、活性化で重要と考えられるが、その詳細は明らかでない。

B 細胞での遺伝子発現制御異常は免疫寛容の破綻につながる。B 細胞異常が病態の一つと考えられている全身性エリテマトーデス (SLE) は難治性の全身性自己免疫疾患である。腎炎は免疫複合体沈着や細胞浸潤により起きると考えられ、約 50%に合併し、予後不良因子の一つである。病態形成において、遺伝要因だけでなく、環境要因を反映するエピジェネティック修飾が関与していると考えられている。SLE 患者において、健常人と比較して、メチオニン代謝物やヒストンメチル化が変化していると報告されているが、未だ疾患発症の原因や疾患活動性との関連は明らかではない。

これらのことから、まず、B 細胞における Mat2a の役割を検討した。私は、マウスリンパ腫由来の細胞株 BAL17 に Mat 阻害剤である cycloleucine (CLEU)を添加して、細胞増殖への影響と B 細胞受容体刺激との相互作用を見た。B 細胞受容体刺激と拮抗して、Mat2a 阻害は細胞分裂を抑制し、アポトーシスを誘導した。さらに、生体内での変化を明らかにするために野生型 C57BL/6 マウスに CLEU を投与して、その影響を検討した。CLEU 投与で、二次リンパ組織において B 細胞は著減し、骨髄では、Mature B 細胞の増加を認め、B細胞の郵送にも影響を与える可能性を示した。次に、マウス脾臓 B 細胞にクラススイッチや形質細胞分化を誘導する活性化刺激を与えて、B 細胞の活性化に対する影響を検討した。その結果、Mat2a 阻害で、免疫グロブリンサブクラスの switch 領域における H3K4me3 修飾の減少に伴い、germline transcript の発現が著減し、免疫グロブリンのクラススイッチが阻害されることを示した。

これらの結果で Mat2a がB 細胞の恒常性維持に働いており、強く細胞増殖や活性化が抑制されたことから、 B 細胞の異常活性化と自己抗体の産生が病態の一因である SLE において、過剰に活性化した B 細胞を正常レベルにまで抑制することができれば、病態を制御することができると考えた。Mat2a 阻害の SLE に対する治療効果を見るために、SLE モデルマウスである MRL/lpr マウスに CLEU を投与したところ、腎炎、脾腫、リンパ節腫大、抗 ds DNA 抗体価の改善を認めた。
これらの結果から、Mat2a 標的は SLE 治療の新たな治療になりうると考えられた。

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