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書き出し

チョクラルスキー法によって育成された低酸素濃度・窒素ドープシリコン単結晶の欠陥形成挙動に関する研究

梶原, 薫 KAJIWARA, Kaoru カジワラ, カオル 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

チョクラルスキー法によって育成された低酸素濃
度・窒素ドープシリコン単結晶の欠陥形成挙動に関
する研究
梶原, 薫

https://hdl.handle.net/2324/6787644
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(工学), 課程博士
バージョン:
権利関係:

(様式3)Form 3



名 :

梶 原



Name

論文名 :

チョクラルスキー法によって育成された低酸素濃度・窒素ドープ
シリコン単結晶の欠陥形成挙動に関する研究

Title



分 :



Category

論 文 内 容 の 要 旨
Thesis Summary
昨今の環境保護への意識の高まりに伴って,電力を半導体チップ上で制御するパワーデバイスへの注目が
集まっている. なかでも, 電気自動車の動力制御に使用される 600~1200 V クラスの絶縁ゲート型バイポー
ラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor: IGBT)の需要が高まってきている. IGBT はシリコン単
結晶ウェーハ上に形成される. これまで IGBT 用ウェーハはその特殊な要求品質から, フローティングゾー
ン法によって育成された直径 200 mm の単結晶から製造されてきた. 近年, IGBT デバイス製造コスト低減
やシリコンウェーハの安定供給のため, 直径 300 mm への大口径化が進行している. チョクラルスキー
(Czochralski: Cz)法は比較的容易に大口径の単結晶を育成できるため, IGBT 用ウェーハの要求品質を満たす
直径 300 mm のシリコン単結晶を Cz 法によって育成する技術の確立が急務である.
このような背景のもと, 大口径 IGBT 用ウェーハ材料として, Cz 法による単結晶育成時に窒素をドー
プした単結晶を提案する.シリコン単結晶育成中の窒素ドープは結晶育成時に導入される欠陥を抑制するため,
IGBT 用ウェーハ材料の要求品質を満たす結晶を得るのに有効な技術である. しかしながら, 窒素がドープ
された Cz 結晶を IGBT 用ウェーハ材料として使用するにあたり以下の課題がある.
課題1.窒素がドープされた Cz 結晶中の低酸素濃度における欠陥形成挙動(As-grown 欠陥ならびに酸素
析出)が不明である
課題2.ウェーハ中に窒素が存在する場合のウェーハ特性への影響が不明である.
本研究では, 上記の課題を解決することを目的として, 様々な窒素濃度, 酸素濃度の Cz 結晶を育成し
その欠陥挙動を調べることで, 窒素がドープされた低酸素濃度の Cz 結晶における欠陥形成挙動を調べ, そ
のモデルを提案した. さらに, 窒素がドープされた Cz 結晶からシリコンウェーハを作成し, その特性の評
価することで, 窒素ドープ Cz 結晶の IGBT 用ウェーハ材料の適用可能性を検証した.
以下に本稿の各章毎にその概要をまとめる.
第一章 序論
第一章では, まず現在のパワーデバイス業界を概観することで IGBT 用シリコンウェーハの重要性につ
いて触れ, さらに IGBT のデバイス構造から IGBT 用ウェーハに要求される結晶品質について整理した. 要
求される結晶品質に関するシリコン単結晶の製造技術を紹介し,IGBT 用ウェーハに適用する上での課題を示
した. 課題を本研究の目的とし, 本論文の構成を示した.
第二章 窒素がドープされた Cz シリコン単結晶の As-grown 欠陥形成挙動の酸素濃度依存性
第二章では,窒素をドープすることによる As-grown 欠陥抑制効果の酸素濃度依存性を明らかにすること
を目的として,様々な窒素ならびに酸素濃度の Cz 結晶を育成し,その欠陥形成挙動を調査した.その結果,

窒素をドープすることによる As-grown 欠陥抑制効果は低酸素濃度になるほど増大することが見いだされた.
熱力学的観点から本現象を考察し,この酸素濃度依存性がボイド形成温度帯における窒素の形態によるもので
あると推定した. すなわち, 酸素濃度が高い状態では窒素は酸素と複合体を形成するのに対して, 酸素濃度
が低い状態では窒素はボイドの元となる空孔と複合体を形成するため,ボイドを形成できるフリーな空孔の濃
度が低下し, As-grown 欠陥抑制効果が増大すると結論付けた.
第三章 窒素がドープされた低酸素濃度 Cz シリコン単結晶における酸素析出挙動
第三章では, 窒素がドープされた Cz 結晶において熱処理後に酸素析出物が検出されなくなる酸素濃度閾
値を明らかにすることを目的として, 様々な酸素濃度の Cz 結晶を育成し, 酸素析出挙動を調査した. その
結果, 結晶中の酸素濃度を 3×1017 atoms cm−3 以下とすることで熱処理後においても酸素析出物が検出され
なくなることを見出した. 熱力学観点から本現象を考察し, このような低酸素の結晶においては単結晶育成
中に潜在核が成長を開始する温度が低下することで As-grown 状態の結晶中に含まれる酸素析出核のサイズが
極めて小さくなり, 熱処理における臨界半径に達しなかったためと結論付けた.
第四章 窒素がドープされた Cz シリコン単結晶への熱処理によって発生する窒素関連欠陥の影響
第四章では, 結晶中に取り込まれた窒素の影響を検証することを目的として, 窒素に関連する欠陥と考
えられている 500 ℃の熱処理を施したときに生じるシリコンバンドギャップ内の深い準位の生成挙動につい
て DLTS 法により調査した. その結果, Cz 結晶における熱処理後に検出される準位密度は文献で報告され
ている FZ 結晶のそれよりも極めて低密度であることを見出した. 過去の文献と突き合わせ, Cz 結晶におい
ては酸素が空孔と優先的に複合体を形成するため,深い準位の起源とされる窒素と空孔の複合体が形成されな
かったためと結論付けた.
第五章 疑似 IGBT 製造プロセス熱処理後のウェーハ特性
第五章では,窒素がドープされた Cz 結晶から製造されたウェーハが IGBT デバイスプロセスを経た後の
ウェーハ特性を評価することを目的として, 現行ならびにスケーリング IGBT のデバイスプロセスを想定し
た熱処理条件を提案し, その熱処理後のウェーハ特性を評価した. その結果, 酸素析出, 少数キャリアラ
イフタイム, ゲート酸化膜耐圧に関して, 酸素濃度が 3.3×1017 atoms cm−3 以下であれば従来構造ならびに
スケーリング構造のIGBT プロセス後においてもIGBT 用ウェーハに要求されるウェーハ品質を維持すること
を見出した.
第六章 総括
第六章では, 本研究の総括を述べた. 冒頭で触れた 2 つの課題に対する結論は以下となる.
課題1に対して,これまで定性的な説明に留まっていた窒素ドープによる As-grown 欠陥抑制効果の酸素濃度
依存性を実証し,さらに窒素がドープされたCz結晶の酸素析出物フリーとなる酸素濃度閾値を明らかにした.
その結果,Cz結晶の窒素濃度1~2×1014 atoms cm−3,酸素濃度3×1017 atoms cm−3 以下とすることで,IGBT
用ウェーハに要求される結晶品質を満たすことを示した.
課題 2 に対して, ウェーハ中の窒素濃度を 3.7×1014 atoms cm−3 以下とすることで, 窒素が電気的特性に与
える影響は無視できることを示した. さらに, IGBT デバイスプロセスを想定した熱処理後において, 酸素
析出, 少数キャリアライフタイム, ゲート酸化膜耐圧について, 酸素濃度が 3.3×1017 atoms cm3 以下で
あれば従来の IGBT 用ウェーハと同等のウェーハ品質を維持できることを示した.
以上, 本研究により次世代大口径 IGBT 用ウェーハ材料として窒素ドープ Cz 結晶の優位性が示された. こ
の成果は, 人類が直面する電力供給問題ひいては環境問題に対する解決手段として応えうるものであり, 人
類の進歩への寄与が期待される.

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