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大学・研究所にある論文を検索できる 「モーリタニアにおけるコメ需要に関する実証的研究 : 表明選好法によるアプローチ」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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モーリタニアにおけるコメ需要に関する実証的研究 : 表明選好法によるアプローチ

丸山, 優樹 筑波大学

2021.07.27

概要

西アフリカ地域では、コメ食文化が急速に伝播している一方で、コメの輸入依存が顕著である。そのため、持続的な経済発展の観点から、国際市況の左右されない頑健な食料需給体制の構築が求められている。近年ではコメの生産基盤が強化され、国産米の生産量は増加傾向にある。しかし、生産されたコメは品質面で輸入米に劣っているなど、消費者のコメニーズを反映していないために、依然として国産米の消費は低迷し、輸入に依存した状況が続いている。

本研究では、国産米の自律的な消費拡大に資する知見を得るために、西アフリカのモーリタニアを事例対象地に設定し、表明選好法として選択実験及びベスト・ワースト・スケーリング(BWS)を用いてコメに対する消費者選好の明確化を試みた。そして、得られた知見をもとに、西アフリカ地域のコメの安定的な需給体制の実現に向けた課題や可能性について考察することを目的とした。

まず、モーリタニアの食文化として、昼食におけるコメ食の定着が本研究より明らかとなった。このことは、経済発展に伴うミレットやソルガムなどの伝統的な雑穀食から調理が容易なコメ食への遷移を示すものであり、西アフリカ一帯におけるコメ食の拡大を裏付ける結果である。

このようなコメ消費が輸入米によって賄われている実情がある一方で、消費者選好調査からは、消費者が国産米を強く好む国産志向が評価された。原産国表示以外では小石やもみ殻などの夾雑物が混在しないきれいなコメ、料理に合った粒径に統一された(破砕状態が均一な)コメ、肥満や糖尿病リスクを低減させる観点から低 GI 値のコメなどが消費者に好まれていた。本結果から、西アフリカ地域でみられる輸入米嗜好は、原産国表示に起因するものではなく、清潔さや破砕状態、GI 値などの品質に係る属性が輸入米に比べ劣っていることが要因であると評価された。そのため、輸入米と同程度の品質を保持した国産米が市場に出回った場合には、国産志向によって消費が拡大される可能性がある。品質向上には、収穫された後の乾燥、精米、選別、輸送などのポストハーベスト技術の向上が必要不可欠であり、関連産業の連携強化をはかり、生産から出荷までの品質管理を徹底したブランド米の構築などが消費拡大を助長させる可能性がある。

しかしながら留意すべき点として、ランダムパラメータロジットモデルや潜在クラスモデルによる分析結果から把握された選好の異質性が挙げられる。多くの消費者がきれいなコメを好む一方で、子供の多い世帯では軽視する傾向が把握された。また、低所得者層や大規模世帯においては、家計的な観点から価格を注視し、安価なコメを評価していることも分かった。手頃な価格と品質はトレードオフ関係にあり、消費者の食料確保の観点から世帯属性に配慮した安価な従来米の供給も必要であると考える。

さらに、西アフリカ地域で近年問題視される肥満率や糖尿病リスクの増加も消費者選好に大きく影響している。そのため、同リスクを低減させる低 GI 値のコメ商品に対する評価が高く、夾雑物や破砕状態などの探索属性に起因する品質に加え、近年では信頼属性に含まれるような健康意識に関わる品質にも配慮したコメ商品の開発も消費拡大に寄与する可能性がある。

他方、選択実験と BWS タイプ 2 の両手法から評価された消費者選好は、整合的な結果であった。一方で、選択実験では過大に評価されていた国産米に対する支払意思額(WTP)が BWS においては極端な評価が見られず、解釈しやすい結果となった。そのため、ベストとワーストに評価する属性水準を1つずつ選択するだけの BWS の容易性は、回答者の負担を軽減させ、実際の購買行動に近い状況での選好評価を促せる可能性がある。

本研究では、アフリカ地域での適用事例が少ない選択実験や BWS を活用した。そのため、仮想的な市場を想定した選好評価手法の適用性を検討したことに加え、両手法の分析結果の類似性を比較することで、有用性についても考察した点では、方法論的な貢献は大きい。

また、消費者選好評価から消費者の国産志向に加え、品質に関わる属性が消費者に重要視されていることを定量的に評価した。本結果は、生産から販売に至るフードシステムの開発に寄与する政策導入によって品質を向上させることの重要性を提起するものである。そして品質が担保された状況下では、国産志向も相まって、国産米の消費がより一層促されることが考えられる。

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